らせん(talk)

1999・7-9月放送(フジテレビ系)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
 

  夢:うわ~、面白かった!
  翔:田辺さん凄かったね。 第11話のラストは怖かったけど、第12話は、永久保存版にしたいくらいだった。
  夢:ところで、翔は、最初の事件、「グリーンタワービル」での殺人事件って、田辺さんが犯人だって言ってたよね。
  翔:「織田恭助」でなく、「田辺さん」ね。 犯人のシルエットが 一瞬 映されるシーンがあるんだけど、それが、田辺さんにしか見えなかったから。
  夢:あたしは、全然 気がつかなかったけど・・・
  翔:でも、田辺ファンサイドから観るから、彼が怪しいと思えるけれど、何の偏見も持たずに観た人は、織田が犯人だったなんて 最後まで解(わ)からなかっただろうし、「犯人捜し」という点では、よく出来たストーリーだったと思う。 第9話のラストでの、織田の振り返りショットが もっと短かったら、織田への疑いが掛からないまま、第10話のラストまで 行ってしまっていたと思うし。
  夢:あの振り返りショットはインパクトあったなぁ。 第9話って、それまでとちょっと違った作りで、水道から血(?)が溢れたり、突然 井戸の中に引きずり込まれそうになったり、窓が赤く染まっちゃったり・・・なんて、むか~しの恐怖映画見せられてるみたいで、なんだよ これは!と思ったけど。
  翔:突然 オドロオドロしてしまって、私も、いったいどうしちゃったの、と思ったけど、考えると、あそこで「山村貞子の因縁話」が、一応終わったわけだからね。 そしてそれから、というのが、あの、陸田(内藤剛志)と織田のやりとりになるわけで・・・
  夢:そりゃ、あたしだって、翔ほどじゃないけど、織田が怪しいとは思ってたよ。 第一、名前だって、岸谷五朗さん・吉本多香美さんの後、3番目に出てきてたし、田辺さんが「こころやさしくて、親身になって相談に乗ってくれる友人」のままでいるはずがないと思ってたもの・・・って、全然「推理」になってないね。(笑)
  翔:(笑)  実は、『らせんBBS』(公式サイト)に何度か顔を出していたのだけど、みんな いろいろな推理をしていて、面白かった。 私、囚人4人の名前を合わせると「織/田/恭/助」になるって知った時、ものすごい発見をした、と思って、さっそくBBSに行ったら、すでに解(と)いている人がいて、さすが!と思った。
  ただ、第11話の段階で「恐怖の大王」の正体が解かってしまうとは 思っていなかったので、何か もっと裏があるんじゃないかと、みんな すごく深読みしていた。 考えてみれば、ミステリーじゃないんだから、犯人が解かっておしまい、ということには ならないんだけどね。 犯人がこれから何をするのか、という事が重要なわけだから。
  夢:で、その第11・12話あたり、『MONSTER』(浦沢直樹 作)に似ている、と評判だったそうだけど・・・
  翔:『らせんBBS』でも、それを指摘している人が多かった。
  実は、うちで「ビッグコミックオリジナル」を 毎回買っているので、『MONSTER』は、リアルタイムで読んでいるんだけど、だいぶ前に、さっき話した「織田の振り返りショット」と、まったく同じと言っていいカットがあったんだよね。 主人公「天馬」が追いかけている「ヨハン」という青年が、振り返りざまにフッと見せた微笑みが、背筋がゾワーッとなるくらいきれいで、不気味だった。 ものすごく印象的なカットだったから、「織田の振り返りショット」に重ね合わせて思い出した人は、多かったかもしれない。 内容的にも、人体実験から生まれ出た「MONSTER」(ヨハンや織田)を、主人公が追い詰める、という話だし・・・
  夢:以前、翔が、『MONSTER』の「天馬賢三」(優秀な 脳神経外科医。無実の罪で追われながら、ヨハンを捜し続ける)を田辺さんにやって欲しい、と言っていたことがあって、「天馬」ってどんな人?って思っていたんだけど・・・
  翔:まさか、「ヨハン」の方を、こんな形で演(や)るなんて、思ってもみなかった。
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  夢:第12話の話をしたいんだけど。
  翔:・・・切(せつ)なかったね、織田さん・・・
  夢:前半、地下室で、陸田や安藤(岸谷五朗)を、警棒で殴りつけるじゃない。 で、夏美(吉本多香美)にも警棒を振り上げるんだけど、どうしても振り下ろせない、ってところ・・・
  翔:甘いと言えば甘いんだろうけれど、その躊躇(ちゅうちょ)って、夏美が好きだったから、とかいう単純なものじゃなかった、という気がする。
  夢:と言うと?
  翔:「恐怖の大王」なんていうMONSTERじゃない、「普通の織田恭助」が、夏美の中には、まだ間違いなく生きている。 「あなたは、そんな事をする人じゃない!」という、夏美が 織田に寄せている かすかな信頼を、織田は、振り切る事が出来なかったんじゃないか、と。
  夢:それは、「好き」という事とは違うの?
  翔:何て言えばいいか・・・ 結局、織田は、「見つけて欲しかった」んじゃない? 自分の事を見つけて、そして、「実験は、もう終わりだ」と、言って欲しかったんじゃないのかな。
  法医学者になったのも、4人の囚人の名前の一字ずつを取って「織田恭助」という名前にしたのも、「俺は、あんたのこんな近くにいるよ。見つけられるもんなら、見つけてごらん」 という、陸田への、大胆な挑戦状だったわけだけど、逆に考えれば、「早く見つけてくれ!」というメッセージを、必死になって送っていたようにも思える。 だけど、陸田は、ちっとも気づいてくれない・・・
  夢:陸田さん、鈍感だから。(笑)
  翔:でなければ、気づいていたのに、利用してやろうと思って、知らないふりをしていたか・・・
  で、安藤の方が、先に、織田の本当の姿を暴(あば)いてしまうんだけど、「なんだよ、やっと俺が誰か解かったのかよ。じゃあ、俺がこれから‘何’をしようとしているのか、当ててみろ」 という新たな挑戦状を、送りつける。
  常に、自分が主導権を握っていて、圧倒的に有利な立場にいるのに、挑戦的な態度とは裏腹に「早く見つけて欲しい」という、彼の、弱々しい本音が見え隠れしている、と思えてしかたなかった。
  夢:そういえば、織田は、「恐怖の大王」の正体を暴く為のヒントを、随分、安藤や夏美に与えていたよね。 あれも・・・?
  翔:織田がヒントを与えなければ、おそらく、安藤たちが「恐怖の大王」に辿り着くのは、もっとずっと先だったか、あるいは、永遠に 辿り着けなかったかもしれない。 なのに、なぜ織田は、そんな 自分の首を締めるような事をしたのか。 ・・・当たり前だよね、だって「見つかりたかった」んだもの。
  夢:「見つかりたかった」かぁ・・・
  翔:ラスト、織田がパソコンでウィルスを送っている時、ちょうど安藤がやって来る。 あれも、安藤を「待っていた」という気がする。
  夢:待っていた?
  翔:そう・・・ああ、本当は「陸田」を待っていた、と思うけど。
  織田には、山村貞子から授かった「予知能力」があったから、あの時、安藤が来る事は、知っていたはず。 だったら、もっと早くウィルスを送ってしまえばいいのに、と思わない?
  夢:あ、そうか・・・
  翔:織田は安藤を待っていた、看守として、どれだけすごい仕事が出来るか、を見てもらう為に。
彼は言って欲しかったんだと思う、「もういいんだよ。本当にきみはよくやった、GAME OVERだ」と・・・
  夢:うーん・・・
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  夢:「予知能力」と言えば、織田は、自分が、いつ、どういう状態で死ぬか、解かっていたんだよね。
  翔:そう。だから、第11話で、携帯を屋上に置いて行ったんだと思う。
  夢:あ・の・織田恭助が、簡単に、「死」の時を迎えるとは、どうしても思えないんだけど。
  翔:そうだね、「予知能力」があって、自分が 確実に死ぬと分かって、それで、自分の手の中には、「人間を再生する事が出来る‘鍵’」があって・・・だとしたら、普通なら、「新しい自分」を作ろうと考えると思うのだけど・・・
  夢:そうそう、あたしもそう思う。
  翔:そこで、私の「大胆仮説」。 ―――織田が指名手配になった後、研究室の助手のところに会いに行くじゃない?
  夢:あー、はいはい。足しか映ってなかったけど、あれは、織田だよね。
  翔:なぜ、織田は彼女に会いに行ったんだろう、って、ずっと考えていたのだけど、「山村貞子の呪いのディスク」を見せ、彼女に「山村貞子」を産ませて、その「貞子」に、織田を産んでもらう、という事だったんじゃないかな。
  夢:えーっと、ちょっと ちょっと 待って! という事は・・・・?
  翔:「呪いのディスク」を見た者は、男は死亡し、女は妊娠するんだよね、「山村貞子」を。
  夢:うん。
  翔:だから、ディスクを見た助手は、「貞子」を妊娠し、出産する。そこまでは、納得出来る?
  夢:うん。
  翔:次に、助手から産まれた「貞子」は、織田の肉体の一部・・髪の毛でも何でもいいんだけど、それを使って、織田を妊娠し、出産する。
  夢:ああ! 安藤や、安藤の息子のように・・・って事?
  翔:そう。 もちろん、生まれ出た織田は、急速に成長し、放っておいたら死んでしまうけれど、彼は、成長を止めるワクチンを持っているから、もう一度、「今の自分」に留まることが出来る。
  夢:そうか!すごい!
  翔:でもね、これは私の希望的観測なんだけど、そういうふうにも出来たのに、織田は、やらなかったんじゃないか、って気もするんだよね。
  夢:どうして?
  翔:もう「かくれんぼ」するのが嫌になっていたんじゃないかと・・・
  夢:そうかなぁ、あたしは、クローンでも何でも、生きてて欲しいと思うけど・・・って、これは、あたしの「希望的観測」です。(笑)
  翔:・・・確かに、そういう展開になると、新しく生まれた織田が、『ループ』(続編)の「馨」に繋がらない事もないので、「続編」を作るには、好都合かもしれないけれど。(笑)
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  夢:さて、「私のイチ押し」ですが・・・
  翔:今回の田辺さんは本当によかったと思う、内藤剛志さんや岸谷五朗さん等、芸達者な人達とサシで渡り合って、自信をつけたみたいで・・・
  第12話の最初で、3人(安藤・陸田・夏美)に、少年時代の話をする時、今の映像と、昔の映像が、シンクロするところ、面白い、と思って見たのだけど・・・うーん、やはり、第12話ラスト、安藤とギリギリのやり取りをしたシーンという事にします。
  夢:あたしは、「振り返りショット」! でも、今回は、選ぶのが難しかったね。

on twitter 2012年08月31日(金)
『らせん』第1話(チャンネルNECO)/13年前のドラマ。細かいところを忘れていたせいか、新鮮な気持ちで楽しめた。謎の部分とそれを解くためのキーが、全体にうまい具合にちりばめられていて、観る者をぐいぐい引き込んでいく力がある。結果を知っていても、続きを早く観たい、と思わせられた。