今さら『父、ノブナガ』感想

今さら『父、ノブナガ』感想 

昨年10月にTBS系で放送されたドラマ。今さらながらの感想です。

現代の岐阜市織田信長がよみがえる、という
荒唐無稽なファンタジーではあるのですが、
天下布武の朱印に絡んだ信長の突然の登場も、
そのことによって引き起こされるさまざまな出来事も、
無理矢理感があまりなく、
1時間半という短い時間の中に、
介護・進学・町の衰退等々、様々な問題をうまく絡ませて、
小田一家にも、信長自身にも、岐阜という市自体にも
何某(なにがし)かの前向きな決着が着く、という、
なかなかまとまりのあるドラマになっていたように思います。

信長に憑依される主人公の小田一夫(田辺誠一)だけでなく、
おばあちゃん(草村礼子)にも信長が見える、という設定が良かった。
このおばあちゃん(草村さんがとてもかわいい)の存在が、
過去と現代、信長と一夫をふんわりと接近させ、
「信長が現代に!?」というありえない話に、
ファンタジーとしての説得力を持たせていたように感じられました。
介護ロボなどの小道具の使い方もうまかった。

また、おばあちゃんを介護する一夫の妻・美紀(森口瑤子)は
面倒を看るのが大変そうではあってもギスギス感がないし、
一人娘・七海(染野有来)も素直で、
基本、小田一家っていい家族なんだな、というのが伝わって来ました。

現代に忽然と現れた信長(竹中直人)。
コメディタッチのドラマに突然登場する「織田信長」というあの超有名人が、
ほぼこちらのイメージ通りのキャラだったにもかかわらず
うまくその空気に溶け込んでいて、あまり違和感ないように思えた、
それは、竹中さんの持ち味によるところが大きかった気がします。

信長(竹中)とちょっと頼りない現代の人間(田辺)、という設定は、
実は『最後のレストラン』(BSプレミアム)以来二度目なのですが、
今回の方が、お互い こなれていたように思ったし、
観ていて安心感がありました。

田辺さんは、こういう役は もう お手のものという感じ。
その上に、信長に乗り移られた時のキリッとした雰囲気がうまく加味されて、
ユーモラスな空気が上滑りしていないのが良かったです。

脚本が、短い時間の中に明確なメッセージを込めていて、
出演者が、コメディという色味を過度に強めずに、
自然に笑いを溶け込ませつつ
何とかしてそのメッセージを丁寧に伝えようとしている、
その真面目さがちゃんと伝わって来たドラマだったと思いました。


『父、ノブナガ』     
放送日時:2017年10月7日(土)の14:00-15:24(TBS系)
脚本:土橋章宏 演出:堀場正仁 製作著作:CBCテレビ
プロデューサー:堀場正仁 中川陽介 青山貴洋(ドリマックス
キャスト:田辺誠一 森口瑤子 染野有来 草村礼子
宮澤美保 加藤諒 ぼくもとさきこ 小松利昌 伊沢勉 高原靖典 
棚橋真典 深山義夫 緋田康人 赤木悠真 多田木亮佑 温水洋一
竹中直人 他 
公式サイト