シネマ歌舞伎『ワンピース』感想

シネマ歌舞伎スーパー歌舞伎 ワンピース』感想

一部ネタバレしています。
これから映画をご覧になる方はご注意下さい。

わははは〜楽しかった!
すごいなぁ、歌舞伎って半端ない跳躍が出来てしまうんだなぁ!
ONE PIECE』という国民的大人気マンガを歌舞伎で、と聞いた時、
奇想天外なストーリーといい、奇抜なキャラ群といい、
なんて無謀なことを!生半可な出来じゃお客は満足してくれないぞ!
と内心思ったけれど、
でも 市川猿之助さんだからなぁ、きっと何とかなっちゃうのかもなぁ‥
なんて 信じたい気持ちがどこかにあったのも事実で。

で、フタを開けてみたら、まぁ思い切りよく 小気味よく
舞台上に見事に違和感なく「ONE PIECE世界」を作ってくれて、
そこに、大量の水滝での立ち廻りやら、紙吹雪の中での空中戦やら、
天井まで届くほどの宙乗りやら、早替わりやら、
歌舞伎だからこそ出来るケレン味たっぷりの見せ場をふんだん加える
という、エンターテインメントとしての魅力満載の舞台になっていて、
楽しく笑って、ほろっと泣けて、また笑って、
心地良く楽しめたことに、本当にびっくりしてしまった。

長年歌舞伎を愛して来た方々が、
これを邪道だと思わないでくれるといいなぁ、なんて、
余計な心配までしたりして。
だって、歌舞伎の舞台とは到底思えない
大勢のおかまさんたちのダンスまであるんだもん!(爆)

多分これは歌舞伎じゃなくても出来る脚本、
だけど、歌舞伎だから一層面白くなった、とも言える。
衣装も、メイクも、歌舞伎の風味をうまく加えつつ違和感を持たせない、
ゆずの北川さん提供の耳馴染みよい主題歌とか
プロジェクションマッピング等々新しい手法も取り入れながら、
ちゃんと「歌舞伎」という世界観の中の『ワンピース』になっている‥
歌舞伎が持つ「突き抜けた自由さ」に、改めて驚く。

異種格闘技みたいなこの舞台を、
強引に馴染ませ、細やかに消化させ、見事に結実させたのは、
横内謙介さん(劇団扉座)の脚本・演出、猿之助さんの演出をはじめ、
製作陣の力が非常に大きかっただろうし、
白ひげの市川右近さんやサンジの中村隼人さん、
ボン・クレーの坂東巳之助さん等
それぞれの役に見事にはまった演者たちの
MAXまで振り切った役つくりもすごく大きかったように思います。

ゲストの人たちも とっても良かったなぁ。
浅野和之さんのイワンコフは最高だったし、
(最初誰がやってるか全然分からなくて、後で浅野さんと知って驚いた!)
現代版メイクで出演の福士誠治さん(エース役)は
めちゃくちゃかっこよかったし、
井之上チャルさんのウソップ観て一気にワンピース世界に入って行けたし、
嘉島典俊さんはすっかり馴染んでて歌舞伎の人だと思って観てたしw
そしてそして、私のお気に入りのチョッパー、
ぬいぐるみと変身後だけかと思ったら‥
く〜あんな可愛い姿で出て来るなんて、ずるいよ、
思わずウルウルしちゃったじゃないか。

 

今回も、他のシネマ歌舞伎同様、
映画ならではの面白さがあちこちにちりばめられていました。
CGやらスローモーションやら、
舞台の面白さを増幅させてくれる仕掛けも豊富で、
それぞれのキャラの表情もはっきり分かって、
特にボン・クレーの顔芸(って言っちゃっていいのか?w)は
もうほんとにマンガやアニメそのもので、
あの表情をアップで観れただけでも映画観に行って良かったな、と思えた。

3時間半の舞台を2時間にぎゅ〜っと絞って映画にした
それには賛否があるだろうけれど、
ストーリ―を知っている原作ファン(歌舞伎に馴染みのない人)にも
かなり観やすくなっていたと思うし、
歌舞伎ファンに対しては、本物(生の舞台)を観たいと思わせる魅力が
詰まっていた、ということで、私はすごく楽しみました。
(個人的には猿之助さんの早変わりをもっとじっくり観たかったけど)

舞台とはまた違った魅力満載で、本当に面白かったです。
チケットの手配までしておきながら舞台を観に行けなかった無念を
かなり晴らしてもらった映画でした。

 

で‥来年秋のワンピース再演、すでに行く気満々になってる
私なのであった。w

 

                          10月28日 福島フォーラム

シネマ歌舞伎スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース 』     
原作:尾田栄一郎 脚本・演出:横内謙介 演出:市川猿之助 スーパーバイザー:市川猿翁
主題歌『TETOTE』楽曲提供:北川悠仁(ゆず)
出演:市川猿之助 市川右近 坂東巳之助 中村隼人
市川春猿 市川弘太郎 市川寿猿 坂東竹三郎 市川笑三郎 市川猿弥 市川笑也 
市川男女蔵 市川門之助 市川段四郎
福士誠治 井之上チャル 嘉島典俊 浅野和之  他
公式サイト