今さら『ザ・タイガース 2013 LIVE in 東京ドーム』感想

今さら『ザ・タイガース 2013 LIVE in 東京ドーム』感想

年末に行われたライブの様子が
NHKBSプレミアムで1月24日に1時間半にわたって放送された。
1月24日というのは、
1971年に彼らが武道館で解散コンサートをしたメモリアルデーでもあり、
NHKも粋なことをしてくれるものだ、と、ちょっと感激。

当時 ザ・タイガースに代表されるGS(グループサウンズ)のほとんどが
風紀を乱す、としてNHKから締め出しをくっていたことを考えると、
何だか隔世の感があるけれど、
変わったのは なにもNHKばかりじゃない、
メンバーも歳を取ったし、当時ファンだった私も歳を取ったわけで。w


40数年ぶりのオリジナルメンバーによる再結成。
他のメンバーは、音楽に関わっている以上
どこかで再会ということもあるだろうと思っていたけれど、
音楽からスッパリ足を洗って高校の先生になってしまった
ピー(瞳みのる)だけは無理だろうな、と思っていた。

武道館での「ビューティフルコンサート」(1971)。
本当に解散してしまうのか、いずれ再結成もありうるのか、
まだ一縷の望みを捨てていなかったファンに、
彼が「これが最後です」と引導を渡し、
タイガースは事実上の解散をした。
さらに、『月刊明星』に載った彼の手記が、追い打ちをかけた。
もうタイガースが元に戻ることはないのだと思い知らされた。
ピーのファンだった私は、すごくショックを受けた。


あれから40数年、
60過ぎのおっさんたちが東京ドームを満杯にしてコンサートをしている、
そこにピーの姿もあったことに、感無量の想いがした。
彼はまったく変わっていないように思われた。
ステージを走り回る彼に、時間があの頃に戻ったような錯覚を覚えた。
みんなに愛された、私の好きだったPEEがそこにいた。

そうやって動き回るのはジュリーの役目のはずでしょ、
なんて、ちょっとツッコミを入れてみる。
当のジュリーこと沢田研二は、すっかり貫禄がついて、
とてもピーみたいには動けそうもないことが、
何だかちょっと寂しかったけれど・・

でも、よく考えてみると、
ジュリーが40年以上一人で背負って来た「ザ・タイガース」という名前と
それに付随する有形無形の財産や人々の愛情が、
(はた)で見ているよりずっと
彼の上に重くのしかかっていたのではなかったか、という気もする。
  (重荷だったその一方で、
   彼にとってタイガースは大きな支えにもなっていたのだろうが)
そんなことを想像してみると、
彼の変貌にも一種の感慨を覚えずにはいられなかったりもするのだ。


曲目は、タイガースファンにとっては どれも馴染のものばかり。
謡曲全盛の日本にエレキギターを持ち込み、ロックの芽を植え、
わずか数年で衰退してしまったグループサウンズ
ビートルズも、ローリングストーンズも、
私は、彼らから・・タイガースから・・教えてもらったから、
ずっと昔に聴き慣れたそれらのナンバーには、懐かしさを禁じ得ない。

後半のオリジナルナンバーも、ファンには嬉しいチョイス。
ノリの良い「シーサイドバウンド」や「タイガースのテーマ」、
「花の首飾り」や「君だけに愛を」の大ヒット曲も楽しかったけれど、
「忘れかけた子守唄」や「ラヴ・ラヴ・ラヴ」などメッセージ性の強い曲には、
当時子どもだった自分が考えていたいろんなこと、
タイガースに影響を受けたさまざまな出来事や体験、等々を
あれこれ想起させられて、胸が熱くなった。


ただ「懐かしい」というだけではない。
彼らの再結成が、昔の自分と今の自分を繋げてくれた、
彼らの姿が、じんわりと ちょっとヒリリと 私の心を温めてくれた、
そのことが 何だか少し面はゆくもあり嬉しくもあり。

絶対に無理だと思っていたことが、長い年月を経て実現する。
彼らはもう私が若い頃に求めていた美しい姿ではなかったけれど、
だからこそ、ちょっと距離を置いて、落ち着いて、冷静に、
40数年という時間も含めて楽しむことが出来たのかもしれない、
歳を取るのも あながち悪いもんじゃない、
なんてことを考えながら。


放送:NHKBSプレミアム2014年1月24日(金)後9:00〜10:29
(3月16日(日)後4:00〜5:29 再放送)