今さら『37歳で医者になった僕』(第4話)感想

2012年4月〜6月に放送された連続ドラマです。

今さら『37歳で医者になった僕』(第4話)感想

今回の患者は、引退した大女優・羽山早苗(江波杏子)と、
自殺未遂で入院した吉野香織(岡野真也)。
キーワードは「役割」。


紺野(草彅剛/草なぎ剛)の婚約者・葛城すず(ミムラ)から
自分の患者が亡くなった時の気持ちを訊かれ、
「医者は神様じゃない。
どんなに適切な処置をしても、治るのは患者さん自身の力です。
逆に、明らかな医療ミスでもない限り
医者が患者の死に関わることはありません。
医者の出来ることはその程度だというのが私の考え方です」
と森下(田辺誠一)が答えるのですが、
この言葉、患者にとっては非常にドライに感じられるものではあるけれど、
でも、的確に「医師の役割」というものを示しているように思いました。

以前『ラストホープ』というドラマを観た時に、
医師たちが何度か「自分にまかせろ」的な発言をしていて、
それはそれで頼もしいと思ったのだけれど、
それは、医師の‘技術’ が治療の成否を大きく左右する外科と、
外科ほど‘技術’に頼れない内科の違いから来るものなのかな、
という気もしましたし、
いずれにせよ、私たち患者や家族の側は、
医師に多くを望み過ぎているのかもしれない、とも思いました。


さて、森下から、
「紺野先生がどう判断するかは別。どこに線を引くかは人それぞれ」
と言われた その紺野は、どう ‘医師としての線引き’ をするのか・・


今回の患者のひとり、
羽山早苗(江波杏子)は手の施しようがない末期がんで、
ホスピスに移るまでの少しの間だけの入院なのだけれど、
疑似家族をレンタルし、「幸せな引退女優」を演じ続けることで、
最期まで「女優」という役割を全(まっと)うしようとします。

刹那に出会う人々(観客)の前で女優として生きる、
そのプライドが自分自身の支柱になる、
それもまた潔(いさぎよ)い生き方だけど、どこか寂しげなのも確かで。


一方、リストカットした自殺願望者・吉野香織(岡野真也)は、
下田(八乙女光)の杓子定規な言葉に傷つき、
「誰にも迷惑かけない自殺の方法を考えなさい!」という
沢村(水川あさみ)の言葉を振り切るように退院。

彼女の後を追った紺野は、
「医者として患者とちゃんと線引きしろ」と森下に言われた言葉を思い出し、
病院のドアを出て行くことを一瞬 躊躇(ちゅうちょ)しますが、
その脇を下田が一気に駆け抜け、紺野もドアから一歩踏み出して外へ。
バス停まで追って来た下田や紺野に説得され、病院に戻る吉野。

「何にだって正しい役割はあるんです。
世の中には手首を切るために作られた剃刀なんてないですし、
首を吊るために編まれたロープなんてないんですよ」
この紺野の言葉も、なかなか印象的でした。


羽山が退院してホスピスに向かう日、
紺野は、吉野と一緒に見舞いに行く、と言って羽山を驚かせます。
自己満足だけど、「吉野さんも僕も羽山さんに関わったから」と。

しんどくても怖くても、人は人と繋がって生きている。
誰も一人では生きられない。

人と深く関わろうとしない孤高の大女優にしたって、
女優として多くの人たちの心を掴んで影響を与えて来たんですよね、
彼女の演技によって自分の未来を決めた人間(=森下)も いるほどに。
それもまた関わったことには違いない。


羽山の見舞いに行く・・、亡くなった木島(甲本雅裕)の墓参りに行く・・
それが、紺野が決めた「患者との線引き」であり、
悩みながら探り当てた「医師としての自分の役割」。

前回、木島の死に引きずられそうになっていた紺野に
「線を引け」とストップをかけた森下も、今回は彼の選択を認めてくれた。
まぁ、森下の‘大人’っぷりは、あいかわらず半端ないですね。

でも、羽山早苗の『ミラクルドクター治子』観て医者を志したなんて、
なかなかキュートな一面を披露してくれて
彼女のサイン貰って嬉しそうにはにかんだりして、
出番少なくとも 印象的な存在であることには違いなく。
さらってくれるなぁ、と、森下贔屓(びいき)が加速する私なのでした。


37歳で医者になった僕     
放送日時:2012年4月-毎週火曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:古家和尚 演出:白木啓一郎 プロデュース:木村淳
原作:川渕圭一「研修医純情物語〜先生と呼ばないで」
「ふり返るなドクター〜研修医純情物語」
音楽:菅野祐悟 主題歌:「僕と花」サカナクション 制作著作:関西テレビ放送
キャスト:草彅剛 水川あさみ ミムラ 八乙女光 桐山漣
鈴木浩介 でんでん 斎藤工 真飛聖 田辺誠一 松平健  
ゲスト:江波杏子 岡野真也 阿部力甲本雅裕(回想)  『37歳で医者になった僕』紹介サイト