『ネオ・ウルトラQ』(第12話=最終回)感想

ネオ・ウルトラQ(第12話=最終回/ホミニス・ディグニターティ)感想
30年前に日本最古の地層から発見されたソーマは、
宿主の老化を防ぐ力を持つ。
ソーマを人間に寄生させると、限界寿命(144歳)まで生きられるが、
貴重なソーマをすべての人間に寄生させることは出来ないので、
IQ150以上の優秀な人間のみを厳選して寄生させ、
国のために働くよう教育するシステムを作った・・
というのが、このお話の前提。


彼らがいる場所があまりにも無機質で、
人間の感情を押さえつけるような重苦しさがあるのは何故でしょう。
ソーマを背中に寄生させ続けるには、
そういうストイックな生活を送らなければならない、ということなのでしょうか。


そんな生活から抜け出して、自由になりたい、という願いから、
自分に寄生するソーマを切除してしまった少女・ヒカル(杉咲花)。
彼女のカウンセリングをまかされた南風原田辺誠一)は、
「ちっぽけな人間の想いなんて、広い世界の前では踏みにじられる。
ただ、誰かに命を操られるなんて、絶対に間違ってる。
僕は決めた、きみにそんな想いはさせない」
と、実は自分の背中にもソーマが宿っていることを伝えて、
彼女の望みを叶えてやろうと脱走を企てます。


そして、ヒカルの望むまま、絵本を読んでやり、メリーゴーランドに乗り、
まるで父と娘のような時間を持って、心を通わせ・・
・・さて、その後二人はどうなったのか・・
この物語の続きはいったい・・?


・・いや、正直に言うと、私がもっとも気になったのは、
二人・・ではなく、南風原仁の過去と未来。

おそらく最も初期にソーマを寄生させられたであろう彼が、
この20数年間、どんなふうに生きて来たのか・・
なぜ「猶予期間」を与えられたのか・・
それが終わるのはいつか・・
終わった後、彼はどうするのか、どうなるのか・・等々、
ヒカルよりも、つい南風原に想いを巡らせてしまったのは、
私が田辺さんのファンだから、なんだろうけれど・・w


いつも思うことですが、
田辺誠一という俳優は、相手役と対峙した時に、
滅多に、真正面から鋭く切り込んで行かない気がします。
優しい役を演じることが多いから、とも言えるかもしれないけれど、
田辺さんの中に、相手(俳優に対しても役に対しても)への
一種の畏れや敬意があって、
自分が前に出ようとせず、一定の距離を保ち、
相手の持ち味を踏みにじらないようにしようとするから、
そういう役が多く回って来る、とも言えるのかもしれません。


その、どこか臆病でプラトニックな空気感は、
役によっては物足りなさを感じることもあるけれど、
それによってもたらされる「清潔感・清涼感・安心感」のようなものが、
時に、役の上に、男性性を超えた「純愛」を加味するから、
いくつになっても、そういう役を不自然でなく演じることが出来るし、
観ていて違和感もないのかな、
なんて、ちょっとそんなことも思いました。


それが、今回のような、父と娘、のような距離感でも変わりなかった、
というのが、なかなか興味深かったです。



監督:中井庸友 脚本:いながききよたか 
出演:田辺誠一南風原仁) 高梨臨(渡良瀬絵美子) 尾上寛之(白山正平)
杉咲花(橘ヒカル) 田辺桃子(山野ユリ)  他

『ネオウルトラQ』公式サイト