『ネオ・ウルトラQ』(第10話)感想

ネオ・ウルトラQ(第10話/ファルマガンとミチル)感想

ここ(10話)まで来ると、各監督の持ち味がくっきりと浮き立って、
なかなか興味深いです。
『言葉のない街』もそうだったけれど、
中井監督の作品は、ファンタジー的色合いが強いですね。


今回のお話は、甘くてすっぱくて、まさにはちみつレモン。
優しさと、残酷さと、切なさと・・
子供の頃、「人魚姫」を読むたびに切なさに胸痛ませた者としては、
そのテイストが混じった今回のような作品には、
どうしても惹かれてしまいます。


これは、人間対人間だったら成立しないお話かもしれない。
ある人間の足を治すために、別の健康な人間の命を奪う、というのは、
あまりに理不尽で、「物語」にはなりにくい気がします。
その点、ゴミの塊で、誰にも相手にされないファルマガンなら、
バラバラに空中分解しても、観ているこちらの心はそれほど痛まない・・
きれいな物語として観やすくなる・・


でも、私は、そこにも人間の残酷さが潜んでいるような気がして・・


この話の中の、「傍観者」としての南風原田辺誠一)が、
私にはすごく魅力的に感じられました。
ミチルに寄せるのと同等の・・いや、むしろそれ以上と言ってもいい、
ファルマガンに寄り添った「痛みの共有」・・
怪獣が消え去った後の南風原の表情からは、
なんとも言いようのない切ない哀しみが伝わって来て・・


もう本当に、こんな時、私は、
田辺誠一という俳優の底力を思い知らされるわけで。
そうなんだよなぁ、
ガラスの仮面』や『月下の棋士』の時から変わっていない、
こういう空気感を作り出せる人だからファンになったんだ、私は。
・・・なんて、はるか昔のことを思い返したりして。w


残る2話。
南風原仁(@田辺誠一)の醸す この空気感が、また味わえるか否か、
というあたりも楽しみにしたいと思います。



監督:中井庸友 脚本:いながききよたか 加藤綾子
出演:田辺誠一南風原仁) 
大野いと(矢代ミチル) ヨコタシンゴ(ファルマガン)  他

『ネオウルトラQ』公式サイト