『鋼鉄番長』(大阪千秋楽)感想【ネタバレあり】

『鋼鉄番長』(大阪千秋楽)感想 【ネタバレあり】
前回 私が観たのは、10月14日の東京公演、
1号(橋本じゅん池田成志)バージョンだったのですが、
今回は2号(三宅弘城河野まさと)バージョン。

内容としては、ほとんど変わっていないのですが、
1号の二人が、ワクを思いっきりはみ出した
良い意味での自由感があったのに対し、
2号の二人は、きっちりと確実に作って来た、という感じなので、
全体の印象としては、だいぶ違っているように思われました。


「きっちりと確実に」とは言っても、しょせんおポンチなのでw、
下らないには違いないんだけど、
2号の方が はみ出したり暴走したりしていないので、安心して観ていられ、
全体の流れが1号より自然で、伝わりやすかった気がします。
まぁ、その分、
もともと このお芝居の魅力的な個性でもあった、
はっちゃかめっちゃかの勢いの中にある訳わかんない面白さ、
混沌として掴みどころのない自虐的な下らなさ、
みたいなものが薄れてしまったのは残念ではありましたが・・


兜剛鉄/三宅弘城さん
橋本じゅんさんにアテ書きされた役なので、
この役の「いやらしさ」みたいなものは、
やっぱり、じゅんさんのものwという気がしました。
でも、三宅さんは三宅さんで、
しっかりと自分なりの「剛鉄」を作り上げていたと思います。
まさに「2号」。(そして1号より かなり健全w)
特に、鋼鉄の身体に作り替えられた、という部分に、説得力がありました。
効果音がうまく決まっていた、ということもあるんだけど、
ガツンガツンと、いかにも鋼鉄、って感じがしました。
三宅さんの動きにすごくキレがあるので、そういう味が出たんだろうし、
踊りや立ち回りなども、観ていて本当に気持ち良かったです。
あと、この人は本当にチャーミングです。
じゅんさんもチャーミングですが、どこか ねばっこいw。
でも、三宅さんは、さらっとチャーミング。


井尻亀吉/河野まさとさん
池田成志さん演じる井尻が放つ「レッツ ドッカーン!」は、
物語の流れ全体を破壊するようなテンションだったような気がするんだけど、
河野さんは、それに比べると、やっぱりちょっと弱かった気がします。
井尻って本当に意味不明のキャラなんですよね〜w
だから、すごく演じにくいところもあったんじゃないかと思うんだけど、
終盤、ムッチと一緒に「どっちつかずキャラ」になってからは、
居場所が定まったこともあって、
すっきりと伝わって来るものがありました。


河野さんの代役で、ちから太郎を演じた西川瑞さん。
本当におとぎ話に出て来るような感じwで、
しっかりキャラ立ちしていて、観ていて楽しかったです。


古田新太さんは、セリフがさら〜っと流れてしまうことが多くて、
東京よりインパクトがいくらか弱くなったような印象を受けたんですが、
気のせいでしょうか。
東京では、古田さんの牽引力ってすごい、と思ったのですが、
こちらでは、全体のトーンに溶け込んでいて、
一人だけ突出しているような感じではなかったので・・
いや、そのあたり、あえて狙ってやっていたのかもしれませんが。
(しかし、あいかわらずダンスや立ち回りのキレは抜群でした)


逆に、前回観た時にもっと使われて欲しかった、と思った、
粟根まことさん、高田聖子さんは、
存在感を増していたように感じられました。


明らかにグレードアップしていたのが坂井真紀さんで、
右肩をクッと上げた独特の仕草やら、たどたどしい話し方やら、
ますます大袈裟になっていてw、
次に何をやるのか分っていても、ついつい笑ってしまいました。


さて、田辺誠一さんですが。
土方(ムッチ)って、言うことやることがコロコロ変わるので、
不自然でなくテンションの上げ下げをするにはどうしたらいいのか、
初見では、まだ迷いが感じられ、
キャスト欄で古田さんの前に単独で名前が出る、というほどの役には
なってないんじゃないか、と正直思ったのですが、
今回は、そんな物足りなさなど微塵もなく、
それどころか、キャラクターとしての立ち位置がしっかりとして、
役自体に存在感が増して魅力的にもなっていて、
(残念なキャラには違いないんだけどw)
驚かされました。
鋼鉄や井尻が少しおとなしめになった分、
ムッチが、より前面に出て来たようにも思います。


たぶん、田辺さんの中で、
土方夢知彦をきちんと消化出来るようになったんでしょうね。
東京では、何となくギスギスしたところがあって、
ずるいとか卑怯者という印象がもっと強かったように思うのですが、
(それはそれで面白かったんですが)
大阪では、憎めないキャラの範囲にうまく収まっていて、
どんなにドスの利いたセリフを吐いても、何だか可愛らしく感じました。
田辺さん自身はどう考えているか分りませんが、
私が観た印象では、ムッチの初期設定に、
30%ぐらい三代目明智(田辺さん主演の深夜ドラマ)の天然キャラを
混ぜ込んで来た、という感じw。
痛いキャラを痛いまま見せることで、
観客に落ち着かない感じを味わわせる、実はそれも計算づくのことで、
そのあたりのキャラ作りも巧みになっていたように思います。


以前、ムッチを「中ボス」と書きましたが、
考えてみたら、ムッチって、鋼鉄番長と戦うキャラじゃないんですよね。
主人公や敵の周りを、ただグルグル回ってる、
言うなれば どーでもいいキャラなんだけど(暴言多謝!)
彼が絡むことで話がややこしくなる、
言わば、あんまり役に立たない狂言回し(再び暴言多謝!)
みたいなものなんじゃないか、と。


もう一人の狂言回しが井尻で、
東京では、終盤、ムッチ(田辺)と井尻(池田)のキャラが
被ってしまってもったいない、と思ったのですが、
大阪では、河野さんと田辺さんの間に、
トミーとマツ」みたいな お調子者コンビw、というような、
二人でひとつのキャラ、といった空気感が出来上がっていて、
(しかも なかなか端正)とても興味深かったです。


千秋楽といっても、新感線では、特に内容が大きく変わることはなく、
ちょっと長いアンコールがあっただけなのですが、
恒例のお煎餅まきでは、劇団員の方が実際に配ってくれるので、
一気にフレンドリーな空気になりましたし、
新感線とファンが作る、その時の劇場全体の雰囲気(一体感)が、
すごく良い、と思いました。
古田さんの最後のご挨拶は、面白いこと言ってたらしいんですが、
何言ってるのかほとんど聞き取れなかったのが残念。


2階の後ろから2列目の席で、舞台からは遠かったのですが、
その分、舞台と客席全体をひっくるめた空気感とか、
計算された照明の美しさ、等々が味わえて、良かったです。


代役公演、というだけでなく、
やはりお芝居全体が東京とは変わっているところがいろいろあって、
特に、田辺さんの(頼もしい)変化を観られたことはすごく嬉しかったです。
最初は、ネタモノで初大阪遠征か〜と、ちょっと躊躇もあったんですがw
思い切って大阪まで行ってよかった、と思いました。



ちなみに、今回気が付いたネタは以下。(勘違いだったらごめんなさい)
矢沢永吉 ヨンさま(前回なんでこのふたつを忘れちゃったのかw) 
ロードオブザリングのゴラム シザーハンズ ヘアスプレー
野球賭博 紅の豚 ラピュタ ガンダム
小島よしお、エドはるみ テツandトモ ヒロシ 花畑牧場
神田正輝 かっぱ寿司の宇宙人 灰皿でテ○ーラ 新青森開業
となりの人間国宝さん ちちんぷいぷい



(2010/12/5 12:30〜 大阪シアターBRAVA! 2階9列10番台)


★『鋼鉄番長』(東京公演)感想