『SP〜野望篇』(映画)感想

『SP〜野望篇』(映画)感想
エンディングに「Episode5」とあるように、
3年前にフジテレビの深夜ドラマとしてOAされた
SP 警視庁警備部警護課第四係』の「続編」です。
したがって、これを1本の映画として、単体で観てしまうと、
面白さが十分に伝わらないかもしれないので要注意。
出来れば、TVドラマ版を観ておくか、
せめて、映画公式サイトで、
いろいろと予習してから観ることをお勧めします。


要するに、映画ファン向けに作っていないんですよね。
最初から、TVドラマ『SP』ファンに向けて作っている。
だから、映画を映画独特の世界観を大切にしながら観たい、
と思っている人には、ちょっとそのあたりは引っかかるかもしれないし、
あるいは、もっと端的に、
「またTV局が安直に映画化しやがって」という視線で
苦々しく感じる人もいるかもしれない。


また、ドラマファンの多くは、
あの衝撃のラストの続きは!?という期待を持っていたと思うんですが、
そのあたりの謎は、今回ほとんど晴らされなくて、
最後まで、物語自体にはそれほど進展がなく、肩透かしの状態なので、
残念に思った人も多かったかもしれません。


だけど、たとえそういう局側の思惑があったとしても・・
物語に期待したほどの進展がなかったとしても・・
だからこの映画が面白くない、とは言い切れないわけで。


ドラマに嵌(はま)った私としては、
まず何より、ドラマの時と同じように、
ほとんど遊びも派手さもない、シャープでタイトな展開が、
この映画版でも、きっちりと生かされていたことが嬉しかったです。


とにかく、井上(岡田准一)らSPたちの仕事ぶりがしっかりしていて、
「要人警護」の現場に居合わせたみたいな緊迫感が
最初から最後まで緩むことなく続くので、
ついつい画面を食い入るように見つめてしまいました。


大々的にVFXを使ったり、ワイヤーアクションをしたりすれば、
見た目に もっと派手な画面も作れたんだろうけれど、
むしろ、人間が自分の肉体を使ってアクションする、
シンプルな格闘技として人対人のぶつかり合いに終始するところが、
決して表舞台に出ないSPという仕事の、地味な、
しかし肉体を酷使する厳しい現場をうまく表現していて、
ドラマを観ていても思ったことだけれど、
これはかなり面白い「SPのお仕事ムービー」だな、と思いました。


ストーリーとしては、制作側の意図として、はっきりと、
この「野望篇」はアクション中心、「最終章・革命篇」で真相究明、
という色分けが出来ているようなので、
今回は、ドラマ版から大きく進展したところはないに等しいのですが、
それでも、尾形(堤真一)を含む「大義」のために動く人間たちの輪郭が、
少しずつ見えて来て、
今後、それがどう動き出すのか、が、楽しみになってきました。


キャストは、映画だから、と、
特に気負って豪華メンバーにした、というわけではなくw、
ドラマ同様、地味で、しかし実力のある俳優陣が揃いました。


話題作には香川照之、という方程式があるわけではないんでしょうが、
伊達幹事長役の彼は、この映画でも、確実にいい味を出しています。


今後の展開にどこかで絡んで来るのでは・・と思われるのが、
田辺官房長官蛍雪次朗)と伊達の秘書・横溝(堀部圭亮)。
まぁこれは、私の好みが入っているかもしれませんw。


尾形がリクルートした、四係の新人たちも気になるところ。
(短髪の入山法子さんにびっくり)


ドラマから引き続き登場の人たちも、さらに魅力的に。
何と言っても、井上(岡田准一)・笹本(真木よう子)・石田(神尾佑
山本(松尾諭)という第四係の、それぞれの個性が、
終始控えめに画面に滲み出ていて、
物語の流れを邪魔していないところが、良かったように思います。


特に、岡田准一くんは、本当に、
この役・この映画に賭ける真摯で一途な姿勢が伝わって来て、
胸を衝かれました。
もうね、彼がどれだけ真剣にこの役に向き合って演じているか、
を観るだけでも、十分に価値がある、って気がしてしまった。


対する堤真一さんは、
まだ本格始動していないので、何とも言えないのが残念。
こちらは「革命篇」待ち、というところでしょうか。


この内容で映画化というのはどうか、という疑問は、
私も確かに持ったのですが、
最後に大きな花火を打ち上げて、すっきりきっちり完結させたい、
と思った『SP』関係者の気持ちも分らないではないし、
『SP』の空気感・世界観が映画の大画面で味わえた、という喜びも
小さいものではなかったので、
私にとっては、面白い映画でありました。


でもまぁ・・
「革命篇」を観てからじゃないと、ちゃんとした感想にならない、
ってのも確かですけどね。
もともと、ファンタジー的な、フォーカスを絞っていない物語なので、
(私はそこが面白いと思ってるんだけど)
あまりリアルな結末にはならない気がするけど・・・