『少年メリケンサック』感想

少年メリケンサック』感想
う〜ん・・クドカン、あいかわらず心の中で拳(こぶし)を握ってるなぁ!
真夜中の弥次さん喜多さん』(第1回監督作品)もそうだったけど、
本当に自分の好き勝手に撮ってる、という印象。
本来、万人向けではないし、たとえば、お芝居だとしたら、
本多劇場」とか「パブリックシアター」とか、
500人キャパぐらいのところで見せるべきものなんじゃないか・・
こんなに話題になっちゃいけない映画なんじゃないか・・
とも思うんだけど。(笑)
(ちなみに私が観た時は、どのシーンも、クスクス笑い止まり。
爆笑してる人は誰もいなかった、私も含め。笑)


内容の良し悪しに関わらず、
宮藤官九郎作品」ってだけで人が呼べる現在の状況というのは、
この人にとって、あまり気持ちのいいコトではないなのかもしれない。
自分の作品を多くの人が観てくれる、
そのことに対する嬉しさはあったとしても、
一方で、そんな状況に素直に酔えない、とんがったところが彼にはあり、
(反対に、素直に酔って頑張っちゃうのが三谷幸喜
それが、この作品に流れるパンクの精神みたいなものに繋がっていて、
より過激に!刺激的に!と、彼を突き動かしているような気がする。


今回、彼のその「衝動」は、キャスティングにも色濃く現われた。
ぶっ飛んだヒロインに『篤姫』で一躍 時の人となった宮崎あおいを、
むさ苦しい50(歳)のおっさんに佐藤浩市を起用。
まぁ、宮藤官九郎という名前を最大限に利用して、出てもらった(笑)
ということなのかもしれないけれど、
実は、クドカンの大好きな「真面目俳優ぶっ壊し大作戦」の
罠に掛かった、と言うか・・
いやいや、宮崎さんなどは、そんな罠に掛かりたくて
彼の作品に出たがったのかもしれないけれど。(笑)


これでもか!これでもか!とぶつけられるクドカンの悪球を、
さらなるクセ球にして返す、
そんな歯ごたえのある俳優との激しくて容赦ないやりとりこそ、
宮藤監督にとってのパンク、と言えるのかも知れない。

そんな応酬の中で、とんがった部分を引き出されて ぶっ飛んだ二人が、
ものすごく魅力的に見えたし、
(そういう意味では、木村祐一にもうちょっと壊れて欲しかったかな、
田口トモロヲ並みに、とは行かないにしても)
すでに宮藤作品に参加し、その洗礼を受けていた勝地涼田辺誠一が、
今回、非常にいい仕事をしていたのも印象的。

あと、若き日のメリケンサックのメンバー
峯田和伸佐藤智仁波岡一喜石田法嗣)が、
へたすると、おっさん達以上、って言ってもいいくらい(笑)
こっちの心に突き刺さった。佐藤くんのシャープさとか、
峯田さんのアイドル時代の妙なかわいらしさとか。(笑)


ただ、もちろん、そういう俳優とのぶつかり合いがメインだと、
ストーリーそのものは破綻してしまう、というか、
彼の監督作品は、基本、小ネタの寄せ集め、という感じで、
肝心なこと(根っこにあるもの)を
懇切丁寧に伝えようとはしてなかったりするんだけど、
何だかわかんないけどモヤモヤしてる、
きっちりとした起承転結をつけないで曖昧なままにしてる、
けど、とにかく必死で爆走してる(中年だからヨタヨタしてるけど。笑)
その「結論なんて出ないけど夢中で突っ走ってる」という、
とっ散らかし気味で、不親切で、わがままで、
勢いのある子供っぽさもまた、
パンク、と言えるのかもしれない・・なんて。(笑)


何だかよく分からないけど、このどんよりとした世の中に、
大人にも、子供にも、年寄りにも、
「覇気」を鼓舞しているようにも見えた、
人と人なんて、こうやってマジでぶつかり合わなけりゃ、
分かり合えねぇじゃねぇか・・と。
で、それもまたパンクなのかな、と思ったり。

・・・・そうか、パンクって、
何にでもガムシャラにぶち当たれ!ってことなのね。(ホントか!?爆)



さて、TELYAさま。
いや〜視線さらってましたね〜!(笑)
最初だけなら、普通のカメオ出演で済んだんだろうけど、
ラスト近くのダメ出し(テレビ局のシーン)が大きかった。(笑)
最後にサングラスを掛けたのは、
中年メリケンサックが見るに耐えなかったからか、
自らの現在の在り様(ありよう)を恥じたからか。


それにしても、この人気!(笑)
いずれMステに出たり、スピンオフが作られたり、
なんてことはないよね、ね!(でもちょっと期待してる。笑)
クドカン演出の『R2C2』にゲストで出ちゃったり、とか。(爆)


・・・で、真面目な話、
この映画でTELYAの魅力に嵌まった人たちに、
ぜひとも『神の雫』の遠峰一青を観て欲しい!と思いました。
二つを同時に味わうことで、
最高にパンクってる田辺誠一の魅力の深遠(!)が見えて来る!
と、ファンとしてマジにそう思うので。(笑)