『神の雫』(第2話)感想

神の雫』(第2話)感想
早くも「第1の使徒登場!」ということですが、
物語の流れとしては、今回も悪くなかったと思います。
第1使徒としての存在意味(天地人)も、
霧や桟橋のたとえを使って、うまく伝えているように思えました。

また、ワインの魅力が、知識として1話ごとに無理なく深まるのも、
観ていて嬉しいことでした。

みやび(仲里依紗)は、はっちゃけ全開でしたね〜。(笑)
全体的に重い空気を、彼女がうまく引き上げてくれている気がします。


雫(亀梨和也)が生まれた年(1985年)のワインに秘められた謎は、
いったいどんなものなのでしょうか。
雫が言った、父(古谷一行)の裏切り、とは何か、
それが、果たして一青(田辺誠一)にも繋がるものなのか、
残り5本の使徒が、雫と一青の過去を、どのように解放するのか、
今後の展開も興味深いです。


前回同様、今回も、全体的に時間的な余裕がなかったですが、
だからと言って、
カオリ(加藤あい)のエピソードは、削れなかったでしょうね。
雫が第1使徒にたどり着くための鍵となる絵を書いた人だし、
カオリの背負ったもの(過去)というのは、
後々の伏線になる部分でもあるような気がします。
ただ、伝えなければならないことがあまりにも多過ぎて、
カオリ夫婦(夫・三宅弘城)の情感が十分に育つ前に場面転換されて
しまうのが、すごくもったいなかった。
せめて、最後に抱き合う前に、あと一呼吸、余韻が欲しかったなぁ。

すごく唐突に感じられた、部長(升毅)の不倫、というのも、
たぶん、カオリの過去と同じように、雫と一青に繋がるものになる、
という気がしますが、はたしてどうでしょうか。


さて、田辺誠一さんですが。
 (以下、あくまで翔の個人的な見方です。厳しい書き方になっています。
  特に田辺ファンの方、寛大な気持ちでお読みいただければ幸いです)


うーん、1話の時に一青の内に間違いなくあったはずの
「人間らしさのカケラ」のようなものが、
今回、ほとんど感じられなかったのが、ちょっと辛かったです。

原作(漫画)の一青というのは、こんなに無感情・無表情ではなく、
実はすごく人間的なところを持っている人なのですが、
私には、1話の時の田辺さんは、あえて、
一青のそういうところを封印している、と感じられたのですよね、
彼の過去を考えれば、むしろそうなってしまう方が、正しいんじゃないか、
と、私にはそう思えたこともあって。


だから、1話の一青を観ているのは、すごく面白かった。
冷たいだけの人間のようでいて、実は・・という部分も一瞬垣間見えて。
雫とフェアに闘おうとするところもそうだし、
たとえば綿貫(益岡徹)の店で、料理とワインを堪能した時の表情とか、
それまでの一青とは違って、ちょっと柔らかくて、
でも、言ってることは「酷評した甲斐があった」なんてタカピーで(笑)
そのギャップがまた面白いと思えた。
硬い鎧をまとってはいても、
ワインを通じてなら、この人は心を開く用意があるのだ、
まぁ、かなり性格に問題はあるにせよ(笑)、と。


だけど、2話の一青には、
彼の人間としての魅力が、何も感じられなかった、少なくとも私には。
土を食べる、という行為にしても、それ自体は、
一青の変態的な一面が表現されていて面白いかもしれないけれど、
たとえば、その奥にあるはずの、
ワインへの飽くなき探究心や、ワインに対する変質的でストイックな愛情、
といった(1話には種火としてあったはずの)熱い感情が、
ほとんど伝わって来ない・・・


神咲豊多香氏にしてみれば、
心を通じ合わすことが出来なかった息子・雫に、
ワインを通して多くのことを伝えようとした、と同時に、
一青に対しても、ワインを通じて人のぬくもりを感じるようになることで、
彼の内なる何かを揺り起こしたい、という想いがあったのではないか、
と、私は考えています。
6つの使徒を通じて、雫は、ワインの本当の魅力に辿り着く、
一方、一青は、人間として大切なものを得る、
そういうドラマの流れになって行くんじゃないか、と。
(今回、一青が桟橋を見つけられなかった、というのは、象徴的)


ならば、今現在の一青の中身は からっぽで、
それを埋めて行く作業が、すなわち
使徒神の雫」を見つけることなのだ、と考えられないこともない。
それならそれでいい、まるで機械のような、感情を持たない人間が、
やがて人のぬくもりを知り、人らしくなって行く、
それがこのドラマの一青なのだというのなら、それでもかまわない。
(いや、むしろ、その方が面白いかもしれない)


だけど、だとしても、唯一、ワインに対してだけは、
血が通った本物の、誰にも負けない熱くて激しい一途な感情があるはず。
それが、遠峰一青という人間じゃないのか、
ワインに対してさえも、ただクールに接してしまうのであれば、
それはもう、一青じゃないんじゃないか・・・


ワインにだけ心を許す一青だからなおのこと、
ワインを表現する「言葉」は、彼にとって、大きな意味を持つ。
感性によってワインを捉えようとしている雫と違って。


言葉の中に、一青が築いて来たワインに対する豊富な知識が
散りばめられる。
それは、彼の心の奥に潜む、人より何倍も熱くて激しい人間的な感情と、
現在の彼の存在価値そのものを
映しているものでもあるはず・・なのに・・・


2話の一青は、セリフの練り込み方がすごく弱い、というか、浅い、というか、
特に、雫との対決の場での一青には、覇気もプライドも若さも感じられなくて
(やはり口角が気になってしまった)
ワインを例える言葉にも、自分の言葉として消化されていない、
上滑りしている感がありあり。
うーん・・その後にワインのイメージを言葉にした雫や、
さすが!と思わせた豊多香氏の表現の豊かさ・深みが、
すんなり心に響いたのに比べて、
ワインを異常なほど愛しているはずの一青の言葉から
何も伝わって来ないのが、観ていてすごく辛かったです。


今回は、一青の負け、ということなので、
そういう・・血の通わない表現を最後まで通すことを、
ひょっとしたら田辺さんは、あえて狙ってやったのかもしれない。
今後の流れの中で、一青の人間的な感情を徐々に解放して行く、
そういうプランをしっかりと持っている・・
だから、今回はあれで正解なのだ、と、そう思いたい・・そう信じたい。


対決の場を覗いてはビジュアルに問題なし。ただ見ている分には楽しい。
一瞬一瞬の表情に、さすが田辺!と思わせる魅力的なものも、
たくさんちりばめられていました。
・・しかし、ただ見た目だけじゃない、変なヤツってだけじゃない、
このドラマの中で、一青が果たす役割は、もっともっと深くて重いはず。


ワインに魅入られた人間の孤独、狂気、喜び、悲哀、至福・・・
もっとワインを愛して、
一青に近づいて、寄り添って、信じて、好きになって、
田辺誠一だから出来る、田辺誠一にしか出来ない遠峰一青を、
さらにさらに深めて欲しい、と願っています。


―――10年来の田辺ファンとして、あえて、苦言。