『神の雫』(第3話)感想

神の雫』(第3話)感想
いや〜、もうこのドラマは、原作(漫画)へのこだわりをきっぱり捨てて、
新しい気持ちで観た方がいいかもしれません。
こんなこと言ったら、熱心な原作ファンの怒りを買うかもしれませんが、
私個人としては、こっちの『神の雫』の方が断然好きに
なってしまいました。(笑)


何だろう、私が連続ドラマでここしばらく味わえなかった、
この「軸がぶれない」感じ、まっすぐにどこかに向かっている感じ・・・

確かに、ご都合主義で軽く流されてしまうエピソードもあるし、
あまりにチャチで、がっかり、ってことも多々(!笑)あるんだけど、
そこにあまりこだわってしまうと、
本筋の面白さを見落としてしまいそうで・・・


何より、このドラマには、ちゃんと「伝えたいこと」があるように思える。
一番肝心な部分は、原作をきちんと踏襲しているように思える。
(今後どうなるか分からないので、
いくらかあいまいな言い方になってるのはご容赦)
ならば、アプローチの仕方は原作とまったく違っても、
このドラマもまた、紛れもなく『神の雫』である、と言っていいわけだ。


神咲雫と遠峰一青の「使徒探し」は、二人の「自分探し」に重なり、
さらにこのドラマでは、
亀梨和也の「雫探し」と、田辺誠一の「一青探し」に重なる。
どちらが早く役に辿り着けるか、その勝負、にも見える。
亀梨・田辺の二人が今後、
未だほとんど何も埋まっていないそれぞれの役の‘心’の中に、
どんな感情を注入して来るか、も楽しみで。

ああ! もう、視聴率が何%だろうが、
そんなのは知ったこっちゃない!(おいおい。笑)
このままの空気感を、どうか壊さないで、大切にして、さらに盛り上げて、
最後まで突っ走って欲しいです。


今回のワインのテーマは「団欒(だんらん)」。
この言葉から伝わるイメージ=「温かさ」「ぬくもり」が、
いくつかのエピソードの中に、何層にも重ねられて表現されていました。

特に、雫(亀梨)とみやび(仲里依紗)の関係が、
ワインを通じての友人、というだけじゃなく、
もう一歩踏み込んだ関係(隣にいて欲しい人)になったのが、
テーマに添って描かれていたあたり、うまいなぁ、と思いました。


一方、一青(田辺誠一)側では、
傍らにいるマキ(内田有紀)の存在感がだんだんと大きくなって来て、
俄然 魅力的に見えて来た、というのが大きい。
グラスを一気に叩き壊した一青の前にワインを差し出した時、
本当に、ほんのかすかに、ではあるけれど、
マキに何か温かなものを感じて・・
で、二人の関係が、まるで母と子のように見えてしまって・・・(笑)
それもまた、ぬくもり、と呼べるものなのかもしれない、と。


今回の対決は、一青の勝ち。
二度続けて負ける、なんて展開も、それはそれで面白い、と思ったけれど、
さすがにそれは、一青のプライドが許さないだろうし、
あれだけハンニバルに頑張った(笑)んだから、当然といえば当然か。


第3の使徒は「モナリザ」。
この、原作と違う使徒の順番が、逆に私としては非常に納得の行くものに
なってるんですが・・
さて、こっちの思惑通りに展開して行くでしょうか。(笑)


★出演者について―――――


☆神咲雫(亀梨和也
何だろう、亀梨くんの「前に出て行かない感じ」というのが、
私には、何だか すごく好もしい。(笑)
バーンと自分を弾けさせずに、すべて自分で抱え込んで、
自分の内に向かって収束させようとしている、と言ったらいいか。

決して「いいとこのおぼっちゃん」には見えないんだけど(笑)
かと言って「庶民的なお兄ちゃん」って感じは さらになくて、
どこか、ふわっと浮いてる感じ、というか、
中性的な、人間臭くない感じが、私には、すごく興味深いです。


そういう亀梨くんが演じる雫を観ていると、
心の中に解きほぐせないものを抱えた人間としての、生々しい痛さ、
みたいなものがなくて、
雫自身が、雫であることに戸惑っているような、
そんな感じがしてしまうのだけど。
リアリティがない、といえばそうなんだろうけど、
こういうドラマでは、むしろ、そのリアリティのなさが、
神咲雫に、漫画とは違った独特の魅力を
備えさせているようにも思えます。

亀梨和也という人は、今後もそういうところをうまく使ってあげたら、
この人らしい新しい魅力を発揮出来そうな気がするんだけどな。


☆紫野原みやび(仲里依紗
かわいらしい温かさを持った人なんだけど、
今回のちょっと切ない展開では、
すごい美人さんに見えたシーンがあった。
ひょっとしたら、この女優さんは、
実は、こちらが思っている以上に力があるのかもしれない。

みやびと雫は、恋人みたいな関係に発展して行くんでしょうかね。
わたしの好みとしては、軽々しくそんなふうになってしまうのはイヤだな。
いや、恋人同士になってもいいから、
ベタベタな甘い関係にはならないで欲しい。
今回みたいな感じで、亀梨・雫が自分の居場所にちゃんと着地出来るように
手を差し延べてくれる相手であって欲しいものです。


☆遠峰一青(田辺誠一
先週、彼に対してかなり毒を吐いた人間(苦笑)としては、
今週観るのが怖いような楽しみなような、複雑な気分でした・・が!!

うはは〜!こうまで「力技」で来られるとは思ってもみなかったよ!
あいかわらず一青の心の中はからっぽで、
それを埋める(田辺さんが得意なはずの)繊細な感情、というのは、
ほとんど何も表現されていないんだけど、
今回は、あえてそこのところは封印したまま、
力づくで一青の輪郭を作り込んだ、外堀から強引に埋めて来た、
という感じ。

うーん、こういうことが出来るのか、田辺誠一


まぁ、そういう強引な力技が 浮くことなく出来るのも、
マキとの関係が、徐々にしっかりとしたものになって来たことが
大きい気がする。
今回 何が一番嬉しかったか、って、
マキが、一青の中で、ただのパトロンというだけじゃない、
もっと大事な存在として描かれようとしている、それが解かったことでした。


それにしても・・
月下の棋士』の時にも、
自分の腕を噛むだの、棋盤にこぼれたワインを舐めるだの、
とんでもない奇行の数々を演じた田辺さんですが、
あの時は、周りもみんなヘンな奴ばかりだったので(笑)
あんまり違和感がなかったんですが、
今回は、自分だけがヘン、という、難しい立場(爆)だったにも関わらず、
月下の時とは比べ物にならないくらい強引に
観る側を引きずり込んでしまう、その迷いのない表現の力強さに、
面白さを通り越して怖さを感じてしまいましたよ。
(でも、正直、観る側としてはこれがギリギリ限界ですぜ、田辺さん。笑)


いや〜、しかし、こんなふうに
演技だけで「俺を信じろ!」って思わされることがあるなんて、
その相手が田辺さんだなんて・・・
クドカンが、田辺さんを評して「頼もしい」と言っていた意味が、
何となく解かった気がします。(笑)

亀梨・雫と田辺・一青、二人の、
両極端なリアリティのなさ(笑)を観られるだけで、
このドラマを観る価値がある、というもんですよ、
私みたいに、ドラマの出来云々も勿論だけど、それよりもむしろ、
「俳優がどう役に近づき、その役をどう演じるのか」を
観るのが大好きな人間としては。(笑)

今のところ、魔物(田辺・一青)に食われそうになってる小動物(亀梨・雫)
って感じなので(爆)
亀梨和也 負けずにがんばれ!とエールを送っておこう。(笑)


―――さて、使徒探しは早くも中盤。
第3の使徒との出会いが、雫と一青の中の何を目覚めさせ、
彼らをどう変えて行くのか・・・
私の考えでは、ここで初めて一青の心がかすかに揺れる・・んじゃないか
と思うのですが、果たしてどうでしょうか。



それにしても・・・一青と平行して、
社会派ドラマ(WOWOW空飛ぶタイヤ)も撮ってるんだよなぁ、田辺さん。
どんな顔して國村準さんを追い詰めてるんだか。(笑)