風林火山(talk)

2007・1-12放送(NHK
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。


夢:大河ドラマ全50回、ほぼ全部観直したんだって?
翔:はい。(笑)
夢:大変だったでしょう?長時間 観続ける気力を維持して行くのが。(笑)
翔:それが、全然 苦にならなかったんだよね。 最初は、全部観るのは大変だから、田辺さんが演じている小山田信有の出ているところだけピックアップして観ようと思ってたんだけど、あまりにも面白くて、小山田だけじゃなくて、結局、全部通して、しかも最終回まで観てしまった。
夢:小山田は36回で死んじゃうので、そこで止(や)めたのかな、と思ったら、最終回まで観たと聞いて、びっくりした。(笑)
翔:何だか、登場人物を演じてる俳優さんにも、スタッフにも、申し訳ないような気持ちになってしまって。(笑) これだけのドラマを中途半端で観終わらすのが、ものすごく もったいない気がしたし。 
夢:初見の時の翔の感想も、1回ごとに すごく長くて、丁寧だったよね。 
翔:毎回密度が濃くて、書きたいことがヤマほどあったから。(笑)
夢:今回、全部通して観て、その時と比べて何か印象が変わった、っていうことはある?
翔:そうだなぁ・・・物語の中で、小山田を、必要以上に大きな役として捉えることは なくなったかな。
夢:・・・というと?
翔:私は田辺さんのファンだから、初見では、どうしても、小山田中心にこのドラマを観ていたんだけど、今回は、いい意味で、ちょっと小山田と距離を置いて観ることが出来た気がするので。
夢:ああ、なるほど。(笑)
翔:それから、一気に通して観たことで、全体の流れとか、動きとか、ひとりひとりの感情とかが、途切れずに、スムーズに、自然に受け取れたような気がした。 そのおかげで、初見の時の感想を復習しつつ、さらにじっくり深めながら観ることが出来た気がするけどね。
夢:うんうん。 ―――で、改めて、翔が思う 『風林火山』の魅力、とは?
翔:う~ん、ちょっと簡単には まとめられない・・・思いつくままに いろんな話 していい?
夢:いいよ、あたしも改めて聞きたいから。
翔:まず、主要3人のキャスティングが絶妙だった。 山本勘助文学座内野聖陽さん、武田信玄に歌舞伎の市川亀治郎さん、上杉謙信にミュージシャンのGacktさん。 メインキャラからして、こんなにバラバラな分野の人たちで大丈夫なのかな、と、最初は思ったんだけど、でも、だからこそ こじんまりとまとまらない、いい意味での複雑さ・猥雑さのあるキャスティングで、それぞれに見事に嵌(は)まっていたように思う。
夢:大河ドラマGackt!?って、最初はびっくりしたけど。(笑)
翔:亀治郎さんも、TVドラマ初出演だったし、かなりの冒険だったよね。
夢:そうだね。
翔:でも、そういう慣れないふたりを、内野さんが がっちりと下支えして、トータルできっちりと「風林火山世界」に収まらせていた。 もちろん、亀治郎さんとGacktさんの役への踏み込み方も素晴らしかったけれど、こういう異種格闘技みたいな配役が組めたのは、若泉久朗プロデューサーが、彼らの力・・とりわけ、内野さんの力を信じてたから、ってことも大きかった気がする。
夢:翔が絶賛していた大森寿美男さんの脚本については?
翔:とにかく、登場人物が 皆 本当に魅力的に描かれていた。 誰が正しくて誰が間違っているか、というのは、未来から見ている私たちには、ある程度判断が出来ることかもしれないけれど、その時代に生きている彼らにとっては、自分が抱く「正しい道=正義」を探して信じて行くしかないわけで。 で、その道筋には、間違ったり失敗したり、ってことも、たくさんあるわけで。
夢:うん。
翔:たとえ主人公だろうが、主人公が仕えてる上司だろうが、敵の武将だろうが、男だろうが、女だろうが、武士だろうが、農民だろうが、みんなそれぞれに、いいところと悪いところを持っていて、悩みつつ苦しみつつ必死に生きている、誰も彼もが、生まれついた場所で、必死に泥臭くあがいている、その真剣な生き様を、大森さんは、公平に描いている。
夢:うん。
翔:そういった人物描写はもちろん、人の動向とか、時代の情勢とか、あちこちで複雑に絡まっていて、単純じゃないんだよね。 
・・最近の大河は、割とソフト路線で、分かりやすくて、歴史に詳しくない人でも観やすくなってるんだけど、この『風林火山』は、そういう配慮があまりされてなくて、すごく歯ごたえがあって、しっかり「観るぞ」と思って観ないと、全体の流れや人の気持ちを、きっちり掴めないようになっている。 
 まぁ、そのあたりが、分かりやすい大河に馴染んだ人には、ちょっと取っ付きにくい印象になってしまったかもしれないけれど。
夢:うん。
翔:でも、逆に、ひとりひとりの心の動きを、これほど丁寧に描いてくれた作品もめずらしいと思うし、ちょっとぐらい分かりにくかったり、追っかけるのがしんどかったりしても、それを味わうのが大河ドラマの醍醐味じゃないか、とも思うので。
夢:確か大森さん自身も言ってたよね、視聴者に分かりやすく書こうとは思わない、って。
翔:そうだね。 登場人物が話す台詞だけでは簡単に分からないからこそ、脚本の行間から大森さんが何を伝えようとしているのか、それを自分なりに読み解くのが本当に面白かった。 
 なぜ戦うのか、正義とは何か、愛とは何か・・・もちろん、すべての答えを見つけられたわけじゃないし、だからこそ、全部観直しても、どこかにこのドラマを掌握しきれないもどかしさみたいなものも残ってるんだけど、そういう、全部を掴みきれない感じ、脚本に屈服しなきゃならない感じ、も、大河ドラマファンとしては嬉しくもあるので。
夢:なるほどね~。
翔:清水一彦さんらの演出に関しても、すごく間近で ひとりひとりの息づかいを聞いているような、切迫した臨場感があって、大森脚本に見合ったものになっていたように思う。 あと、これはプロデューサーも含めてだけど、この俳優さんでこういうシーンが観たい、という期待感やワクワク感をちゃんと持っていて、それを実際に演じてもらえて嬉しい、という気持ちが、画面にうまく焼き付けられていた気がする。
夢:う~ん、そうかぁ・・・
翔:そういう、視聴者におもねっていない、自分の感覚を大切にしている感じとか、また、プロフェッショナルに徹している感じ、というのは、他のスタッフにも感じられた。 
 特に好きだったのは、照明やカメラのこだわり。 この大河は、室内の夜のシーンがとても多かったんだけど、その時のろうそくの明かりが、すごく自然で、特に最初の頃は、ほのおが揺れてる感じまでちゃんと表現してくれていて、それを観ているだけでも極上の気分にさせてもらえた。
夢:・・・・・・・・
翔:日中のシーンも、ただ平板に明るいだけ、じゃなくて、きっちりと陰影がついていて、それが、その場面に出ている登場人物たちの、深みや重みに繋がってるようにさえ思えたし。
夢:うーん・・・あたしは正直そこまで観てなかったなぁ。(笑)
翔:いや、そんなところまで細々(こまごま)と気にして観ちゃうのは、私のいつもの妄想癖(笑)と、高校時代に演劇をかじって、照明の面白さを体験してる、ってのが大きいのかもしれないけど。(笑)
夢:面白いよ、そういう観方もあるのか、と。 でも確かに、そう言われてみれば、全体的に、画面が軽い感じはしなかったよね。
翔:そのあたりは、ひょっとしたら夢みたいに、観ている人に「そういえばそんな感じも・・」ぐらいにしか気づかれない些細な部分なのかもしれない。 だけど、スタッフすべてが、そんな些細なところにまでこだわりを持って自分の仕事をやったら、クオリティは間違いなく上がるし、そういうのって、確実に画面から伝わると思う。
夢:うーん、そうかぁ。
翔:そういうこところが随所にあったからね。 モブシーンへのCGの取り入れ方、とかも、最初から全部CGじゃなくて、手前は実際の人間が演じて、後ろの方で奥行きを出すために使う、とかね。
夢:うん。
翔:スタッフ全体に、そういう意識の高さを感じられたことも、嬉しいことだった。
★    ★    ★
夢:さて、改めてキャストの話をしたいと思うけど。
翔:うん。 まず、何と言っても、勘助役の内野聖陽さんの存在は大きかった。 本当に凄い俳優さんだ、ということを、このドラマで再認識したような気がする。 
夢:うんうん。
翔:もちろん、才能もあり、努力もしているんだろうけど、それ以前の、役へのまっすぐな対峙が本当に気持ちよくて、勘助という人間がどんなに苦しもうが堕ちようが、内野さんが演じているなら安心、というか、内野さん自身に しっかりした芯があるので、役を演じるという部分で、観ている人間に疑問を抱かせたり不安にさせたり、ってことがまったくないんだよね。 役の上でどんなに汚れてても醜くても、悩んでても苦しんでても、どこかに、「黙って俺について来い!」みたいな爽快感がある、と言ったらいいか。(笑) 
夢:なるほどなるほど。(笑)
翔:うまく言えないけど、「役」と自分はけっして=(イコール)にはなれない、と知っていて、その距離を保った上で、その役を演じることで伝えなければならないことを、何ひとつ取りこぼさずに全部伝えようとしている、というか・・・うーん・・贅肉とか脂肪とか余計なものがまったくついてない演技、というか・・そういうところも、心地良かった。
夢:その辺の感覚的なことになると、正直、ちょっとよく分からないけど、内野さんがすごい俳優さんだってことは、勘助を観ていて、あたしにも伝わって来たよ。
翔:亀治郎さんは、「役を作る」という点で、ものすごく惹かれた人。 誰かに向かって演技する、というよりも、常に、自分が演じている武田信玄と対峙していた、という感じ。 だからこそ、信玄が、いつも自分と闘ってる、葛藤してる、という深みが出たのかな、と。
夢:翔は、途中から亀治郎さんに嵌(は)まってたよね。(笑)
翔:いや、本当に観ていて楽しかったんだよ。 武田信玄という人間のほぼ一生を演じる上で、確実に年齢を重ねて行く感じとか、知らずに父・信虎の姿に酷似して行くところとか、勘助の言いなりになっているようで、ちゃんとしたたかに計算しているところとか、毎回、どう演じてくれるんだろうと、わくわくしていたから。(笑)
夢:そうかぁ・・
翔:あと、やっぱり 歌舞伎の様式美 は魅力だよね。 所作が身についているので、観ていて本当に気持ちが良かった。
夢:Gacktさんは、思ったより違和感なかったよね。
翔:いや、違和感どころか、最終回観終わった時には、なんて面白い(興味深い)配役だったんだろう、とさえ思ったから。(笑) けっして上手い芝居とは言えないんだけど、それを十二分に補って余りある、あの独特の雰囲気から醸し出される空気は、非常に魅力的だった。 特に終盤、彼の持つ色合いがドラマに与えた影響・・というか、効果は大きかったように思う。
夢:他の出演者も、魅力的な人が多かった。 
翔:そうだね。 中でも、千葉真一さんの存在は大きかった。 信玄を思いやる板垣の、純な心情がすごく伝わって来たし、殺陣をアクションとして演じているので、エンタティンメントとして面白かったし。
夢:うんうん。
翔:あと、何と言っても、物語の前半をものすごい力で牽引してくれた、信虎役の仲代達矢さん。 この人が出ている時の緊迫感は半端じゃなかった。 だからこそ、嫡子の信玄はもちろんのこと、弟の信繁や、板垣ら家臣の、反信虎派の結束力が堅固になったし、信虎追放が、非常にドラマチックに、かつ切なくなったんじゃないか、と。 
夢:うん。
翔:武田軍は、皆、本当に魅力的だったよね。 若手(高橋一生田中幸太朗 他)・中堅(嘉島典俊佐々木蔵之介近藤芳正高橋和也 他)・ベテラン(竜雷太金田明夫加藤武)のバランスがすごく良くて、ひとりひとりにドラマがあって。 
夢:仲代さんとか、亀治郎さん、内野さん、の下にその人たちがいるわけだものね。 
翔:もちろん、その中には田辺さんも入ってるわけですが。(笑)
夢:はいはい。(笑)
翔:中でも、嘉島さんには泣かされた。信繁の兄想いの部分、というのが、すごくいい場面で出て来るので、そのたびに、もうダーッと涙が・・
夢:うん。
翔:武田と敵対する今川のメンバーも好きだった。谷原章介さん、伊武雅刀さん、藤村志穂さんがろうそくの灯りの下で何やら相談事をしてるシーンは、いつもすごく惹かれた。(笑)
夢:谷原さんは、こういう役が似合うよね。
翔:義元って、どこか欠落してるところがある。 勘助を見た目で判断してしまうとか、嫌なことは雪斎や母親に丸投げしてしまうとか、いいとこのおぼっちゃんの横柄さ、みたいな 嫌なところもあるんだけど、そういう義元を演じてる谷原さんは、好きだった。 田辺さんとは違った意味で、何かが欠けた人間を 魅力的に演じられる人だと思う。
夢:伊武さんの雪斎も存在感があった。
翔:地味な役なんだけどね。 敵対する側に、このぐらい個性のしっかりした俳優さんが入ると、すごくドラマ全体が締まるよね。
夢:北条氏康には松井誠さん。 
翔:大衆演劇畑の人だけど、武田(市川)とも今川(谷原)とも色が違っていて、質実剛健といった風情があって、気持ちが良かった。 
  武田・今川・北条に上杉(Gackt)が加わった四国の長がそれぞれ個性的で、うまい具合に色分けされていて、たとえ、一旦、話が主筋(しゅすじ)の武田から離れても、興味が薄れることはなかった。
夢:うん。
翔:上杉側には、宇佐美定満役で緒方拳さんも出ていて、視聴者が違和感を抱きかねないGackt(謙信)の側近として傍にいることで、うまく中和剤の役割を果たしていたように思うし。
夢:そうだね~。 ―――女性陣は?
翔:何と言っても由布姫の柴本幸さん。 まったくの新人である彼女を抜擢したのは、大正解だったと思う。
夢:放送中は、賛否両論あったみたいだけど?
翔:演じている柴本さんの問題というより、由布姫をああいう強い女性に描いた脚本への違和感もあったのかもしれない。ワガママばかり言っているように捉えられがちだったようにも思うから。
 だけど私は、由布姫をあんなふうに描いた脚本も、あんなふうに演じた柴本さんも、すごく好きだった。 姫の芯にある硬さ、脆(もろ)さ、徐々に透明度を増して行く美しさ・・・ただきれいなだけの女優さんじゃ演じきれない深みを、彼女はしっかり表現していたように思う。
夢:うん。
翔:信玄の妹・禰々を演じた桜井幸子さんも印象深かった。 由布姫とは対照的に、すごくはかなげで、たおやかで、夫・諏訪頼重と深い愛情で結ばれていて。
夢:本当にきれいだったよね~。亡くなるシーンは 泣けた。
翔:そうだね。 ・・・あと、全50回という長い大河の導入部で、貫地谷しほりさんの果たした役割も大きかった。
夢:うんうん、彼女が演じたミツも印象深かったなぁ。
翔:実はね、初見では、勘助とミツの関係というのが、私の中で、どうもしっくり来なくて。ものすごく評判が良かったのに、何だか私は完全には乗り切れなかったんだよね。
夢:え!?そうなの?
翔:あの時期の勘助が、すんなりミツを受け入れたことが、どこかで引っ掛かっていた。あれだけ人に裏切られて痛い思いをした勘助に、簡単に人を愛することが出来るんだろうか、と。
夢:うーん・・・
翔:でも、今回観直して、何となくすんなり納得出来たので。 何だろう、勘助の心情の自然な流れが、ようやく私にも読めるようになった、ということかもしれないけど。
夢:・・・他の女性陣は?
翔:清水美砂さん、池端千鶴さん、風吹ジュンさん、水川あさみさん、井川遥さん、占部房子さん等々、印象に残った役は多い。
夢:ワキの人たちもすごく魅力的だったよね。 ワキ役好きの翔としては、目移りして大変だったんじゃないか、と。(笑)
翔:そうだね~。ワキの枠に入れちゃいけないのかもしれないけど、佐藤隆太くんとか、小日向文世さん・・・それから、市川左團次さん、光石研さん、上杉祥三さん、小市慢太郎さん、西岡德馬さん、橋本じゅんさん・・・結局最初から最後まで出ずっぱりだった有薗芳紀さんもますます好きになったし、今までまったく知らなかった有馬自由さん、岡森諦さんも、私のワキ役カタログにしっかり名前を刻んだし。(笑)
夢:うんうん。(笑)
★    ★    ★

夢:で、そういう濃いメンバーの中に、われらが田辺さんも加わっていたわけですが・・・ここ何年か、田辺さんが演じた役で、こんなにネットで話題になった役はなかったんじゃない?(笑)
翔:そうだね。 だいたい、こんなに多くの人の共通の話題になって遊んでもらえる役って、今までほとんどなかった気がするから。 メジャーなところで興味を持たれるような役って やってなかったんだ、と、改めて痛感した。(笑)
夢:メジャーじゃないところでは、いろいろやってたんだけどね。(笑)
翔:・・・・(笑)
夢:でも、それだけ話題になったにしては、翔の小山田評は、毎回辛口だったよね。 手放しで絶賛したの、最期の回(第36回)だけだったような気がするけど。
翔:うーん、どうしても時代劇の田辺誠一には辛くなってしまう。 もう一押し足りない、と感じてしまうことが多いし、この小山田信有という人間に対しても、全体を通して見た時に、感情や行動に一貫性がないように思えてしまったので。 まぁ、それは、演じている田辺さんだけじゃなく、演出に対する違和感でもあったんだけど。
夢:今回再見して、ちょっと違った捉え方をしたようだけど?
翔:いや、さっきも言ったけど、要するに小山田ってワキだったんだな、と思って。(笑) 大河の彩り・・というか、スパイスとしては、非常に魅力的な役ではあったし、前半は辛味が効いていて、後半は純愛一直線、というのも、ドラマ全体の中で観てみると、かなり面白い使われ方だったと思うし、田辺さんに対しても、演じ方としては、その時々で心惹かれるものは確かにあったので。 
夢:うん。
翔:これだけキラ星のごとく魅力的な俳優さんが出ているドラマに、妙味を引き出す味付け役として出演して、かなりのインパクトを残せただけでも凄いことだったんじゃないか、と思うし。
夢:そうだね。
翔:小山田の最期に関しては、初見の時は、正直、もうちょっと時間を掛けて欲しかった、という気がしたけれど、今回、全体をもう一度観直してみて、真田夫妻(佐々木蔵之介清水美砂)の夫婦愛と、小山田夫妻(田辺・真木よう子)の死に様が、最終回に近づくにつれ、生涯独身を通した勘助の、由布姫への純愛を貫いた姿に重なって透(す)けて見えるように仕組まれていたんだ、と、改めて気づかされて。
夢:うんうん。
翔:そのあたりの、物語の大きなテーマの流れ、みたいなものを改めて感じられたことも、今回観直して良かったことのひとつだったように思う。
夢:うん。
翔:逆に、こんなふうに距離を置いて冷静になった上で 初見時の感想を読むと、最期の回なんかは、あまりにも気合が入り過ぎ、って気もするけどね。(笑)  それまでの欲求不満を晴らそうとしていたみたいで、読み返して、あそこまで熱くなってた自分が、ちょっと恥ずかしかった。(笑)
夢:そう?(笑)
翔:もちろん、田辺さんは本当に素晴らしかったとは思うけど、あんなに感情過多にならなくてもよかったんじゃないか、と。(苦笑) そういう冷静な・・というか、正しい距離感が持てたことも、観返して良かったと思ったところだった。
夢:なるほどね。
翔:まぁ、時代劇における田辺さんの演技については、毎回かなり細かく感想を書いていたので、それを読んでもらった方がいいと思うけど。
夢:時に感情過多になりつつ熱く語ってる翔がいますので(笑)、そちらもぜひご覧下さい。
翔:(笑)
夢:あと、言いたいことは?
翔:田辺さんの所作が本当にきれいだったので、また最初から観られて嬉しかったけど、小山田の武将としての一面が、もっとたくさん観たかったな、と。 大河ドラマということで、始まる前に、戦うシーンとか、馬上のシーンとか、かなり期待していたんだけど、ほとんどなかったので。 
夢:やっぱり貪欲だね~。(笑)
翔:(笑) でも、このドラマの中で、かなり、時代劇の田辺誠一に満足感を得られるようになった気もするけどね。
夢:そのあたりは、なかなか及第点の出なかった時代劇の田辺さんに対して、納得出来るようになって来た、ってことなのかな。
翔:そうだね・・・でも、ツッコミどころがだんだんなくなって来てるので、ちょっと淋しい気もしないでもない。(笑)
夢:ワガママな奴だ!(笑)