瑠璃の島SP 2007~初恋(talk)

2007・1・6放送(NTV系)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
  

夢:こういう ちゃんとしたメッセージを持った作品っていうのは、久しぶりだったような気がするけど。 
翔:今、きちんと何かを伝えようとするドラマが少なくなっているので、多少窮屈であろうが、重い内容であろうが、こういうものを作ろうとする姿勢は、私は とてもいいと思う。 しっかりと伝えたいことがある、それを物語の中に練り込むことで、視聴者に伝えやすくする、というのも、ドラマの持っている‘力’の一つだと思うし。 
夢:うん。
翔:さっき、BBSの初見感想を読み直してみたら、テーマやメッセージ的にはすごく伝わるものがあって満足したけど、その他の部分で、結構引っ掛かっていたところもあったんだなぁ、と。 宮原親子(田辺誠一神木隆之介)に関しては、詩音(神木)の父親への葛藤をもっと深くして欲しかった、とか、詩音と瑠璃(成海璃子)とが惹かれ合う気持ちが弱い、とか。
夢:うん。
翔:でも、今回観たら、そういう引っ掛かりはほとんど感じられなくて、すんなりと心に入り込んで来て、自分でもびっくりした。(笑)
夢:それはどうしてだろう。
翔:まぁ、以前に観て、内容が分かっていた、っていうこともあるだろうし、初見の時のようには、一場面一場面 食い入るように、真剣に、熱を入れて観ることもなかったから、かもしれないけど。
夢:えらく 投げやりな言い方に聞こえるけど・・
翔:いや、最初に観た時には、とにかく、このドラマが伝えようとしていることを全部受け取ろう、と、頑張って、肩に力が入り過ぎていた気がするから。 その点、今回は、いい意味で力が抜けて、楽に観ることが出来たので。
夢:ああ、そうか。
翔:何となく、ちょっと俯瞰(ふかん)で見ることが出来て、で、全体的な物語の流れが、自然に無理なく繋がっていたんだ、と、そんなふうに思われて。
夢:うん。
翔:宮原親子にしても、これ以上父親への葛藤を深いものにしてしまうと、14歳の詩音には背負い切れなくなってしまうかもしれない。 崩れてしまいそうになっているけれど、完全に崩れてしまってはいない、そこに救いがあるわけで。 
夢:うんうん。
翔:詩音と瑠璃の関係にしても、結局、どん底だった詩音の気持ちが、瑠璃によって救われる、つまり、詩音は瑠璃に引っ張り上げられている。 だとすると、瑠璃の、ちょっとおねえさんみたいな風情というのも、ちょうどよかったのかな、という気もして。
夢:でも どうなんだろう、初恋、というには、もうちょっと何か味付けが足りないような気もしたんだけど。
翔:そうだね、私も初見ではそう思った。 サブタイトルが「初恋」だったから、どうしても ふたりをそういう関係として見ようとしてしまっていたのだけど、でも、相手を好きになるって、どういうことなんだろう、と考えた時に、ただドキドキしたりワクワクしたり、という上辺(うわべ)のことだけじゃなくて、相手に共鳴して、もっともっと理解したいと思うこと、それもまた、というか、それこそが、人を好きになること、なんじゃないか、と。
夢:・・・・・・・・
翔:そういう、初恋の中身・・まだ入り口に立ったばかりのモヤモヤとはっきりしない想い・・を、はっきりしないまま描く、っていうのも、ありなのかな、と思った、今回観直して。
夢:うーん、そうかぁ・・・
★    ★    ★
夢:さて、詩音の父・聖一郎を演じた田辺さんだけど。
翔:もう、最初から、うっとうしくて うっとうしくて・・・(苦笑)
夢:確かに!(笑)
翔:本当に、彼が何か言ったりやったりするたびに、「こいつ、どうしてくれよう!」って、心にゲンコツを握ってたから、田辺さんが演じてるっていうのに。
夢:田辺さんが演じてるっていうのに、ねぇ・・・でも、翔の気持ち分かるわ~。(笑)
翔:初めの頃は、また 無駄に明るくて、聖一郎が、自分をそういうキャラにしようとしているのが見え見えで。建前ばかりで。 そういう彼の嘘っぽさが、はっきりと浮き彫りになるのが、タコのエピソード。 自給自足とか何とか言葉ではきれいなことを言っても、捌(さば)き切れないものを預けられると、途端に投げ出してしまう、という、その覚悟のなさに、無性にイライラさせられて。
夢:うんうん。
翔:でも、彼がやってることや言ってることは、私自身、別な形でではあれ、言ったりやったりしていることでもあるんだ、と・・・ だから・・自分の姿を重ねて観てるから、なおさら嫌悪感がつのるのかな、という気もして。
夢:・・・・・・・・
翔:そういう どうしようもない愚かな人間を、愚かだな、と笑い飛ばせない、切り捨てられない、同じように愚かな自分がいるのも確かで。
夢:・・・・うーん・・・・
翔:そういう人間を、他でもない田辺さんが演じている・・演じてくれている・・そのことが、何だか無性に嬉しかった。 聖一郎をあんなふうにどうしようもない人間として演じてくれたことで、このドラマが伝えようとしていた大切なメッセージが、きちんと伝わって来たような気がするから。 
夢:・・・・・・・・
翔:田辺さんって、演じる役によって、自分自身の持ち味(個性)を抑えたり、場合によっては、まったく出さなかったり出来る俳優さんだと思う。
夢:それは翔がよく言ってることだよね。
翔:同じ寺田敏雄脚本の『R-17』でも思ったことだけど、すごく観ている人間の癇に障(さわ)る人物を演じる時に、でも田辺さんが演じているんだから、本当のところはいい人なんだろう、といった救いが、まるでないから・・・
夢:救いがない!(笑)
翔:役の中に、田辺誠一という俳優のキャラクターとしての魅力がまったく混じって来ないから、とにかく、観ていてとことん腹が立って。(笑)
夢:とことん腹が立つ!(笑)
翔:でも、そういう役を そんなふうに何の混じり気もなく演じることって、ひょっとしたら すごいことなんじゃないか、と、時間が経つにつれ、何だか背筋がゾクゾクするような気分になって。
  聖一郎って、すごく嫌な奴で、私の大嫌いなタイプなんだけど、そんなふうに演じた田辺さんには、また惚れ直した、というか。
夢:なるほどね。
翔:そのあたりの「役のなり切り方」というのは、『R-17』よりもかなりグレードアップしていて、あの時はまだ緩(ゆる)みがあったんだけど、今回は、本当に徹底的にうっとうしい奴で。
  で、さっき言ったように、「彼が何か言ったりやったりするたびに、『こいつ、どうしてくれよう!』って、心にゲンコツ握ってた」ぐらい嫌いになったわけなんだけど。
夢:そうかぁ・・・
翔:大好きな俳優さんが演じているのに、そこまで徹底的に役を嫌いになれる、って、ひょっとしたら、ファンとして、すごく幸せなことなのかもしれないし、そんなふうに演じている田辺誠一という人は、ひょっとしたら、すごい俳優なのかもしれない、と、たくさんの名優が出ている この作品で、そう思えたことが、何だか嬉しくなって来ている、じわじわと。(笑)
夢:じわじわと・・ね~、なるほど なるほど。(笑)