「名探偵 金田一耕助」(NHK知るを楽しむ)

横溝正史〜日本を見つめた探偵小説家』               
第3回「名探偵 金田一耕助
知るを楽しむ/私のこだわり人物伝(NHK教育6月17日22:25-22:50)
正直、今までこういう番組(知るを楽しむ)があることさえ
知らなかったのですが(笑)
偶然TVで予告を見て、面白そうだと思い、見ることにしました。
作家・真山仁さんが読み解く「横溝正史」の第3回目で、
名探偵・金田一耕助を取り上げていたのですが、
いや〜これすごく面白かった・・というか、興味深かったです!
内容を簡単に紹介してみます。 

 

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名探偵というのは、
会った瞬間から頭が良さそうだったり、観察力があったり、
身なりも良くて、威圧感があって、
あっと言う間に事件解決してしまうスーパーマンのような存在
であることが多い。
ほとんどの探偵小説では、謎を解くことが大事なのだけれど、
金田一は、事件を哀しみ、
事件に巻き込まれた人間に優しいまなざしを注ぐ。

 

金田一はなぜ事件を途中で止められないのか。
横溝氏は、快刀乱麻的名探偵を求めていなかったのではないか。
名探偵はシンキングマシーン(非人間的)のように描かれることが多いが
金田一は、殺人事件という突然の悲劇から生まれる哀しみ・怒りを、
金田一自身が大きく感じてしまう。
探偵がそういう人間であることで、読者に、
謎解きだけの面白さに走って欲しくない、事件はゲームじゃない、
ということを伝えたいのではないか。

 

名探偵らしくない金田一は、
謎を解いた瞬間に、また起きてしまう悲劇を、とても心配する。
事件の謎を披露すれば、一生ぬぐえない悲劇をまた新たに生んでしまう。
事件解決以外に、そこまで気を配る探偵はめったにいない。

 

そういう人間くささがあることで、金田一が特別な探偵に見える。
金田一が解決したいのは、殺人事件という「事件」ではなくて、
事件に絡む大勢の人間の悲劇をひも解くこと。
悲劇に巻き込まれた人々を、宿命として受け容れながら、
流れは流れのまま、事件が過ぎて行く中で、
事件の本当の終着点を、最後に自分が見極めようと思っている。

 

市川崑監督は、金田一耕助は「天使」のようなもの、と言っていた。
哀しみ・憎しみ・愛憎によって、人間には、いろんな想い・苦しみがある。
それが究極になった時、殺人事件が起きる。
天使である金田一は、その悲劇を止めるのではなく、
そういう宿命の中で、人はどう生きるか、を見つめている。
そして、その宿命が辿り着いた時、その悲劇を少しでも緩和する役目、
運命の扉を閉じる役目を担っている。

 

金田一は、名探偵としての誇りをかなぐり捨てて、
人間の悲劇を自ら受け止め、それを抱きつつ、どこかに去って行く。
そして、次の悲劇に向かう、
自分がいることで、少しでも誰かが救えるのではないか、
という、かすかな望みを抱きながら・・・

 

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私が田辺さんに金田一耕助を演じて欲しい、と思っている理由は、
 次の「田辺誠一さんに演じて欲しい役 金田一耕助」にて詳しく。