『風林火山』(第13回)感想

風林火山』(第13回)感想
信虎(仲代達矢)という、願ってもない敵役がいたこともあって、
11話までは非常に緊迫していたのですが、
12〜13話と、
勘助(内野聖陽)の武田への仕官の道のりを描くようになってからは、
ちょっと凪状態になった感じがします。
特に今回は、原虎胤(宍戸開)・教来石景政(高橋和也)・
太吉(有馬自由)一家らと、
勘助とのやりとりがユーモラスに描かれ、
観ている側としても、肩の力がぬけたような気がしました。
まぁ、10・11話あたりに比べたら、物足りないかもしれないけれども、
同じハイテンションで1年間続けられるわけでもないので、
こういう回もあっていいのでしょう。
(物語をはみ出さない程度のあの絶妙なおかしさは、
受ける勘助が内野さんだったから、
というのは間違いないところですよね。
お笑いのセンスもあるんだなぁ。笑)


だからと言って、中身が薄かったわけではなく、
特に、船上で勘助が、
原の戦意を喪失させた後「兵は詭道なり」と説くシーンでは、
それを聞いた晴信(市川亀治郎)の反応が興味深かったです。
晴信は、戦わず(血を流すことなく)して勝った勘助に、
自分が目指してきた道(やり方)を、重ね合わせた・・・
それは、晴信自身が、海ノ口城で勘助に対して取った行動に
繋がっているものでもあり、
晴信が、この後、甲斐をどういう方向に進ませたいと考えているのか、
そのために、勘助をどう使いたいと思っているか、を、
暗示させるものでもあったような気がします。


しかし、今は国力を充実させる時と考え、
他国と戦いたくないと考えている晴信に、
周囲の敵は容赦なく襲って来るわけで、
否応なく戦(いくさ)に巻き込まれてしまう若い晴信の苦悩が、
今後、よりクローズアップされて行くことになるのかもしれません。
そのうねりに飲み込まれてしまうのか、跳ね返せるのか、
その時の勘助の立場はどういうものになるのか、
このあたりの史実にあまり詳しくない者としては、
興味の尽きないところです。


勘助が仕官したことで、新たな軋轢(あつれき)も生まれそうですね。
勘助の異相を、疱瘡のため視力を失った次男と重ね合わせた
三条夫人(池脇千鶴)。
勘助個人への単純な憎しみから生まれたものではないから余計に、
夫人の、彼への不穏な感情は、
今後、複雑な色合いを増して行くような気がします。


さて、小山田信有(田辺誠一)。
勘助と原の一騎打ちを見届けた後の この男の高笑いには、
どんな意味が込められていたのでしょうか。
勘助の策略にまんまと引っ掛かった原に対してだけでなく、
単純な原を引っ掛けただけなのに、いっぱしの兵法を説く勘助へも、
さらには、この下らない酔狂に大真面目に付き合った晴信へも、
見下した気持ちがあったのかどうか――
それは、これからの彼の言動によって、明らかになって行くんでしょうね。
こういう茶番めいたことって、彼の美学には反するような気がしますから、
くっだらねぇ〜と思ったのは間違いないと思いますが、
一方で、「女子なれば良い心掛けじゃ」なんてことを言える人
でもあるので(笑)
案外、この下らなさを面白がっていた、ということもあるかもしれません。

田辺さんの「笑う演技」に関しては、
実は以前の私、かなりの拒否反応があったのですが、
今回はまったく違和感がなくて、
気持ちよく、独特の高音の笑いに身をゆだねることが出来ました。
(なまいきな言い草はいつものことゆえ、ご容赦。笑)