『究極の共鳴』(TV)

『究極の共鳴』(TV)フェアレディZプレゼンツ
遅ればせですが、昨日、第1章・第2章続けて観ました。
内容としては、大人らしさの漂う、
とても趣(おもむき)のあるものになっていた気がします。
特に、陶芸家・川尻潤さんのお皿に
瓢亭の高橋幸一さんがお料理を盛ったところなどは、
ただのコラボレーションに留まらない、
一種の「対決」の様相さえ呈していて、
非常に興味深かったです。(瓢亭たまごが美味しそうだった!)


田辺さんのMCを観るのは『トップランナー』以来5年ぶりでしたが、
さすがに今回は あれほどハラハラすることもなく(笑)、
興味深く観ることが出来ました。
ただ、やはりこの人は、
相手から何かを引き出し、それに対して瞬時に自分の言葉で返す、
というのは、不得意なのかな、という気がしました。
熟考型、というか、相手から受け取ったものをちゃんと咀嚼(そしゃく)して、
その後で、ようやく自分の言葉にして返す、という感じなので、
ポンポンという弾むような会話にならないのですよね。


トップランナーの時は、それがすごく歯がゆかったのだけれど、
今回は、それでも、ゆっくりとではあるけれど
彼なりの返し方が出来ていたので、
以前ほど気をもむことなく観ることが出来たような気がしました。
まぁ、編集の力も(第1章ではゲストのジローラモ氏の気遣いも)
大きかったかもしれないですが。(笑)


一番安心して観ていられたのは、高橋幸宏さんとの対談。
きっと、田辺さん自身、彼をとても好きなのかもしれない。(笑)


それと、この人は、言葉足らずのところはたくさんあるのだけれども、
相手への興味、というものは、間違いなく強く持っている人なのだ、
ということが、‘まなざし’の強さに、良く表れていたような気がします。

俳優としてもそうなのだけれど、最近の田辺さんは、
その‘まなざし’から発せられるものが
とても多彩になって来たのではないでしょうか。
もともと、視線の微妙な強弱に
いろいろな感情や想いを乗せられる人でしたが、
このところの彼を見ていると、
そこに、ストレートで純粋な、彼独特の「洞察のしかた」が
反映されているようで、非常に興味深いです。


この『究極の共鳴』は、朝日新聞とも連動していました。
新聞の全面広告に載った文章が、田辺さん自身が書いたものかどうか、
明確な表示がないので正確には解かりませんが、
でも、『眠らない羊』などに近い、田辺誠一節のようなものを感じるので、
かなりの部分、田辺さんが関わって作られた文章なのではないか、
という気がしました。


瓢亭当主・高橋栄一さん、陶芸家・川尻潤さん、
ジャズピアニスト・小曽根真さん、
元YMO・高橋幸宏さん、カーデザイナー・中村史郎さん・・・
番組に登場された方々は、それぞれ本当に魅力的でしたが、
正直に言うと、田辺誠一がその人たちと関わることで表現されたもの、
としては、
私としては、TV番組のナビゲーターより、
新聞の全面広告の文章から伝わるライターとしての田辺さんのほうに、
より多くの刺激を与えてもらった気がします。

うん、私はきっと、
田辺誠一が誰かの何かを引き出すところをじかに見るより、
それを、いったん彼自身の中で消化した後‘書き言葉’にしたもの、
を受け取るほうが、より好きなのかもしれない――
まだ 今のところは。(笑)

         (BS Asahi/2月24日・3月3日放送 朝日新聞/同日、全面広告2面に掲載)