『功名が辻』(第26話)感想

功名が辻』(第26話)感想
最近、「大人の恋」を繊細に描くドラマがないよなぁ、
と残念に思っていたところなので、『功名が辻』ここ数回の
「吉兵衛(武田鉄矢)とたき(細川ふみえ)の不器用な恋」は、
久々に「やられたなぁ!」という感じがしました。


この『功名が辻』、
もちろん、千代(仲間由紀恵)と一豊(上川隆也)をメインにした
歴史ドラマではあるのですが、
実は、大変良く練れた恋愛ドラマでもあるのではないか、と。

吉兵衛とたきもそうですが、
六平太(香川照之)や竹中半兵衛筒井道隆)の千代への想い、にしても、
明智光秀坂東三津五郎)のお濃(和久井映見)への想い、にしても、
物語の本筋ではない、枝葉の部分ではあるのだけれど、
脚本も演出も、
「忍ぶ恋」「耐える恋」に身を置く彼らを、非常に丁寧に追っていて・・
演じる彼らもまた、丁寧に役作りをし、演じていて・・
そういう、全体的な、この物語への誠実で きめ細やかな対峙が、
この時代劇を、深みとコクのあるものにしているような気がします。


吉兵衛役の武田鉄矢さん。
いい俳優さんだとは思っていましたが、
今まで、好き、と言ってしまうには抵抗があったんですよね、私の中で。
でも、『白夜行』第1話のラストの表情を観た時に、
「大人の残酷さ」や「大人のいやらしさ」みたいなものをものすごく感じて
以来、とても気になる俳優さんになりました。

今回の吉兵衛は、「いい歳したおじさんの恋」(笑)を、
とってもいい雰囲気で演じていて、なんだか素敵だなぁ、と。
確かにとても哀しい結末ではあったのだけれど、
でも、同じくらい、じんわりとしっかりと温かく沁みて来るものもあって。

なんだろう、あの歳だから出せる味、みたいなものがあるんでしょうね。
でもそれは、武田さんが持ってる、というだけでは駄目なので。
それを出せる「場」を作ってあげる、ということ。
それには、武田さんだけではない、
相手役の細川さんや、脚本の大石静さん、
演出を始めとするスタッフ等による力も大きい、という気がしました。


なんか、いいよなぁ、いいよねぇ、
武田さんぐらいの年齢の人の、不器用な恋、というのも。