『トットてれび』感想

トットてれび』感想 

幼い頃、『ブーフーウー』やら『チロリン村とくるみの木』やらの
子供向け番組を夢中になって観て育ち、
夢で逢いましょう』も かすかに覚えている私のような年代には、
うわ〜っ懐かし〜いっ!という気持ちが呼び覚まされる
ドラマバラエティーでした。
ただ楽しいだけじゃなく、ドラマとしてのきちんとした ‘重さ’ もあって、
見ごたえのあるものになっていたのが嬉しかったです。

黒柳徹子さん(トットちゃん)の声は、私にとって、
大山のぶ代さんや野沢雅子さん、田中真弓さん‥といった
声優さんに対するリスペクトのルーツと言ってもいいのですが、
そのトットちゃんを演じた満島ひかりさんが、
もう本当に 黒柳さんの個性=魅力みたいなものを
見事に体現してくれていて、
表情や動き、特に特徴的な声(話し方)を
「真似してる」と感じさせない自然さで表現してくれていたのには
感動してしまいました。

彼女を始め、キャスティングが最高にハマってましたね。
まぁ、よくぞこれだけ集めましたね、という感じ。
森繁久彌吉田剛太郎さん)、渥美清中村獅童さん)、
向田邦子ミムラさん)、坂本九錦戸亮さん)、
沢村貞子岸本加代子さん)、E・H・エリック(パトリック・ハーランさん)、
三木のり平小松和重さん)、クレージーキャッツ(我が家)…etc。
(中でも、のり平さんを演じた小松さんは、私のツボに入りまくり、
出て来るたびに ニンマリしてしまいましたw)

いつもトットちゃんたちに振り回されているNHKのディレクターを
程よくユーモアとペーソスを交えて演じていた濱田岳さん、
こんな馴染み店があったらいいなぁ、と思わせてくれた中華飯店、
その店の主人・王さんを演じた松重豊さん、
温かなナレーションでほっこりさせてくれた小泉今日子さんも
とても良かったです。

大森南朋さん、武田鉄矢さん、吉田栄作さん、安田成美さんらが
出番は少ないながらもきっちり締めてくれたほか、
新井浩文さん、福田彩乃さん、北村有起哉さん、青木崇高さん、
木野花さん、三浦大知さん、高橋愛さん、田中要次さん、岩尾望さん、
片桐はいりさん、中村優子さん、山中崇さん、前野朋哉さん、
ピエール瀧さん、松田龍平さん…といった そうそうたる顔ぶれが
次から次へとチョイ役で出て来るのも楽しくて、
今回は誰が出て来るんだろう、と、画面の隅から隅まで探したりして。
まさか この人がこの役を?というところで出てこられると、
やられた!という気分にもなりました。(嬉し楽しい敗北感w)


生放送だったテレビ創成期のエピソードを楽しく紹介した前半から、
後半は、トットちゃんと親しかった、向田さん、渥美さん、森繁さんとの
別れが描かれます。
彼らとトットちゃんのエピソードは、
(30分番組なので)そんなに詳しく描かれているわけじゃないんだけど、
とにかく丁寧で、深くて、何だかいろんなことを考えさせられて、
すごく切なかった。
向田邦子(を演じたミムラさん)、渥美清(を演じた中村獅童さん)、
森繁久彌(を演じた吉田剛太郎さん)と
トットちゃん(満島ひかりさん)の醸し出す空気感が素晴らしくて、
四人の生き様(いきざま)が すごく胸に響いたし、
人の命の重さ、とか、抗(あらが)えない運命(事故・病気・老い)、とか、
去られていく側・残される側の寂寥(せきりょう)とか、
死というフィナーレに向かって生きていく覚悟とか、
そういったものを、押しつけがましくなく伝えてくれていたように感じました。

王さんが、森繁さんがテレビで「知床旅情」を歌うのを観て、
ホームのみんなと一緒に歌うシーンに思わず泣けてしまったのは、
私も 寄る年波 というものを感じ始めているから、なのかもしれないけどw
でも、ちょっぴり切なく寂しく感じつつも、
「何があっても、前を向いて、
夢と希望を失わずに明るく楽しく生きて行かなきゃね!」 という
先輩方からの(背中をそっと押されるような)柔らかな励ましを頂いたようで、
何となく背筋がシャンとするような気持ちにもなりました。

…それにしても、黒柳さんって、
人との出逢い、人との触れ合い(気持ちの重なり合い)を
大切に大切にする人なんだなぁ、と改めて思った次第。


最後に―――
こういう楽しい番組を観ると、つい、
最近ちょっと熱が弱まって元気のない「テレビ(TV)」に、
頑張れ!とエールを送りたくなってしまいます。
テレビに携わるすべての人が、
熱い夢と希望を己(おのれ)の身内に再び呼び覚ましてくれんことを、
そして、
しがらみに囚(とら)われない面白い番組をたくさん作ってくれることを、
テレビと向かい合ったこの場所から願い続けて行きたいです。


トットてれび』     
放送日時:2016年4月30日 - 毎週土曜 20:15-20:43 <連続7回> (NHK総合)
原作:黒柳徹子トットひとり』『トットチャンネル』
脚本:中園ミホ 演出:井上剛 川上剛 津田温子 制作統括:加賀田透
プロデューサー:訓覇圭 高橋練 取材:小松昌代
音楽:大友良英 Sachiko M 江藤直子  演奏:大友良英スペシャルビッグバンド
挿入歌:「買い物ブギ」歌:中納良恵(EGO-WRAPPIN') 「上を向いて歩こう」歌:錦戸亮
「スーダラ節」 歌:トットてれびオールキャスト ほか
キャスト:満島ひかり 中村獅童 錦戸亮 ミムラ 濱田 岳
安田成美 松重豊 大森南朋 武田鉄矢 吉田栄作 岸本加世子 吉田鋼太郎 黒柳徹子 
語り(パンダ):小泉今日子
各回ゲスト: 新井浩文 福田彩乃 菊池亜希子 小松和重 北村有起哉
坪倉由幸 杉山裕之 谷田部俊
パトリック・ハーラン 内田慈 高橋愛 田中れいな 久住小春 elfin'
青木崇高 木野花 三浦大知 田中要次 岩尾望 片桐はいり 中村優子 
山中崇 前野朋哉 ピエール瀧 松田龍平 他
公式サイト