『七人の恋人』(DVD)感想

七人の恋人』(DVD)感想
七人の恋人』(DVD)を観ました。
いや〜面白かったです。
う‥ん、でもね、今回観てて思ったんだけど、やはりこういう作品は
「最初に出会った時のインパクトが 命」なんですよね。
「えっ!?あの田辺誠一が、こ〜んなことやってくれちゃうの!?」
という衝撃は、
内容が解ってしまった2回目からは、ずっと弱いものになってしまう。
そのことが、少し淋しかったです。
(我ながら、すごく贅沢なこと言ってる気がするけど)


舞台を観た時に、
「田辺さん、大人計画の一員と言っていいくらい馴染んでた」
というような感想を書きましたが、
うーん、それってどうなんだろう、と、今回ちょっと思ってしまいました。
生で観た時は、
あまりにも「白い恋人くん」のインパクトが強過ぎた(笑)せいか、
一気に「田辺誠一大人計画・二枚目担当!」みたいな気持ちに
させられたんだけど、
今回、画面を通して観たら、やっぱりどこか、田辺さん独特の
「浮いてる感じ」や「すんなり入り込んでない感じ」があって、
どんなに馴染んでるように見えても、
いくらか距離があるような気がしました。
周囲から、微妙に 特別扱い(笑)されてるような気もしましたし。


その、底の底の部分で相容れない何かが、
サラリと何気なく表面に出て来たように思われたのが「FIRST KISS」で、
この作品における「白い恋人くん」が、どこか、田辺さん本人の、
この芝居や大人計画のメンバーに対する立ち位置から
反映されたもののような気もして、
私としては、すごく面白いんだけど、笑ってばかりはいられない、
というか、
だけど「それこそが田辺なんだよね」と納得させられた、というか、
なかなかに、一筋縄ではいかない俳優だな(笑)と、改めて思いました。


もっとも、『熊沢パンキース03』ではまるっきりお客様扱いだったのが、
とりあえず真ん中に立つ、
さらに、場合によっては、まるっきり主導権を握る、
というところまで来たわけですから、
これはもうすごい進歩であることには間違いない、とも言えるわけで、
そこまで来た俳優・田辺誠一と、
そこまで使い込んだ演出脚本・宮藤官九郎に、
素直に大拍手を送りたい、とも思うわけですが。


好きなのは、回想のヒサシと、五十嵐先生。
どちらも阿部サダヲさんと組んでるのですが、
たとえば三宅弘城さんのようにすんなりいじられる相手ではない、
田辺さんという、いじりにくいキャラ(笑)を相手に、
阿部さんの絡みがどこか鋭くなくて、どうしようかなぁという感じ(笑)
でも とにかくすごく興味は持ってくれてるようで、
それがなんだか嬉しくて。(笑)
一方の田辺さんも、阿部さんが相手だと、
遠慮がちながらも やりたいようにやってる(それを許してもらってる)
みたいで、とってもいい感じだったし。
このふたりの距離関係みたいなものが、なんだか不思議で面白いなぁ、と。
(ある意味「対等」でないと、この空気感は生まれないような気もする)
なので、このふたりのバリエーションを、もっといろいろ観たかったです。

いつか、こういうコント形式じゃない「芝居」というフィールドで、
正面からぶつかったふたりを観てみたい!と思うのですが、
クドカンさん、いかがなもんでしょう?(笑)


特典映像は、出演者それぞれの「好きな作品」と「初恋話」。
それと、練習風景など。
こういうのを観ると、ますます、
田辺誠一の浮遊感」が浮き彫りになって来るような気がしてしまいます。
う〜〜ん、私にとって、メイキングとか特典映像とかってのは、
どこか 鬼門(笑)のようなものになってるのかもしれない。


それから、『信長』の時、田辺さんの声についていろいろ書きましたが、
よく聴いてみれば、この『七人‥』も基本的には変わってない、
ということが分かりました。
田辺さんって声が高いので、お腹から声を出しにくいのかもしれない。
しかし、それを克服しないと舞台の場合はハンデになってしまうと思うので
なんとか、舞台のための発声法を身につけて欲しい、と思いました。