訃報・久世光彦さん

 久世光彦氏。
『時間ですよ』('70〜)『寺内貫太郎一家』('74〜)などの斬新な演出、
また、向田邦子作品のドラマでの、独特の静寂な時間の紡ぎ方、
等々が特に印象に残ります。

 

しかし、何と言っても、私の中に強烈に焼き付いているのは、
沢田研二を三億円犯人に仕立てた『悪魔のようなあいつ』('75)でした。
沢田さんの魅力を聞かれた久世さんが、
「一緒に飯食ってるだろ。
すると、俺が食ってたぐちゃぐちゃに混ぜて汚くなってる飯を、
それ食べてもいいかなぁ、って。
で、そのぐちゃぐちゃになったのを、皆の前で平気で食っちゃうんだよね。
そんなことされたら、もう惚れるしかないだろ」
とおっしゃってたのが、すごく印象的だった。大好きな演出家でした。

 

そういえば、以前ここで話題になった『キツイ奴ら』('89)も
久世さん演出だったのですよね。
あまりにも突然の死は、かえすがえす残念でなりません。
ご冥福をお祈りします。