以下は、BBSに載せた『アウトリミット』の感想です。
『アウトリミット』 投稿日：2005年10月15日(土）
これはねぇ、岸谷五朗と萩原聖人のためのドラマ、ですね。
とにかく、二人の魅力てんこもりです。
岸谷さんの「井川」は、もう一生懸命、とことん楽しんでる、という感じが伝わって来る。
どんな役を振られても「これがやりたかったんだよ～」って言いそうなぐらい（笑）
しっかりと役に食らいつく人だから、何やっても、ハズレがない感じがするし、
がっちりとこちらにぶつかって来る骨太なところがあるんですよね。
あの、一種の‘暑苦しさ’みたいなのが嫌いな人は、
きっと彼を好きになれないかもしれない。
だけど、私は、彼のまさにそういうところが好きなので、
久しぶりに‘スロットル全開’でふっ飛ばしてる彼を観ることが出来て、嬉しかった。
萩原さんは、私には、どうもよく正体が見えてなくて、
だから、あんまり興味がなかったのですが、今回の「大成」役は、ものすごく良かった！
井川に振り回され、もうたくさんだ、と思ってるのに、
また、いやいやながら井川の言いなりになってしまう、その、要領の悪さ、不器用さ、
しかし、底にはきっちりと‘純’な部分もあって。
この二人の絶妙なコンビネーションは、
『傷だらけの天使』の萩原健一・水谷豊を彷彿とさせる････
ん～この１作で終わらすのもったいないぞ～！！
ストーリーは、正直、骨組が弱くて、しっかりした料理を食べてる感じがしなかった。
ジャンクフードでごまかしてる、と言ったらいいか、
もうちょっと繊細な部分とか、重厚な味付けとかあってもよかったと思う。
でもまぁ、ジャンクなりのおいしさ、というのも、確かにあるんだけど。
決定的に弱いのは、二人の対極にいる「悪」の存在が希薄なこと。
彼らを追いかけ、追い詰めてる相手の正体が、最後まできちんと見えて来ない。
まぁ、ラスト近いあの場面では「田村」ということになるんだろうけど、
それにしては、伏線もほとんどない、あれだけしか出番のない彼に、
それを背負わせるのは 酷（こく）というもの。
ただ、そのあたりの説明に時間を費やすのが勿体ない、
という気持ちも、何だかすごく良く分かるような気がするので。
そこを描くなら、もっと他に描きたいものがある、というか。
で、そういうところをばっさり切り捨ててしまったことで、
「事件の解決」としては弱いものになってしまった、
そのあたりに、あえて落とし前をつけなかったやり方は、
この作品に関しては、正しかった、ような気がする。
何も描かなかったわけじゃない、「神崎」の行動にも、ちゃんと意味があった、
というのは、ちゃんと匂わせてるわけだし。
うーん、もっと突っ込んで言えば、ひょっとしたら、このドラマは、
そういうところ（事件解決への道筋）を楽しむためのものじゃないのかもしれない。
とにかくスピーディ。とにかくノンストップ。まるでゲーム。
そう、まるでゲームのように、俯瞰やアップで割られる画面、標的をしぼる赤い丸。
闘う男たちの扮装、動き。
元同僚の妻。死体。‘今’に差し挟まれる‘過去’。立場が逆転する二人････
彼らが闘ったのは、「敵」じゃない、「時間」なのかもしれない、などと。
それにしても。 下山監督、ゲーム好きじゃありません？（笑）
･･････あ！田辺さん！（笑）
相手が岸谷さん、ということで、どうしても『らせん』を思い出してしまったのですが。
織田の時よりも人物描写が格段に少なかったにも関わらず、
最後の場面で田辺さんが描いてみせたものの中に、
その背景にあるもの（過去や引きずっているもの等々）が、
きっちりと浮き彫りになっていて、深みがあって、
もちろん、織田の、若いゆえの痛々しさ、というのも好きだったけれど、
今の私は、今回の熟成された役にも、違う魅力を感じました。
Ｒe：ありがとう 投稿日：2005年10月17日(月)
『アウトリミット』
確かに田辺さんのタイセーはおもしろいと思うけど、
どうせなら、あと７～８年後に井川の方を観てみたいです、私としては。
Ｒe：ありがとう 投稿日：2005年10月21日（金）
拳銃を構えたシーン、横顔がアップになった時、田村の目尻にスッとしわが寄るのよね。
それ観たら、ふわ～っと、もう若いとは言えない３０代半ばの男のえもいわれぬ魅力に、
思いがけなく遭遇してしまったような気持ちになって、
何だかドギマギしてしまったんですよね～。（告白してしまった。笑）
『アウトリミット』再見 投稿日：2007年 7月26日(木)
トークのために再見。
田辺さんの出演作品のトークやってて、何が楽しいか、って、
こうやって、ちょっと前の田辺誠一にまた逢える、
しかも、今現在の田辺誠一とシンクロナイズさせて観られる、ってことなんですが。
いや～これ良かったわ。
何だろう、田辺さんの「田村の作り方」みたいなものが、すごくかっこいい！んですよ。
『らせん』の織田に似た不気味さを持ってるんだけど、
狂気、というのとはまったく違っていて、
織田が、ものすごく孤独感を漂わせていたのに、田村には、そのカケラもなくて。
拳銃を撃つことが、まるで井川（岸谷五朗）への屈折した愛情にも感じられて・・
・・・ってのは、さすがに自分でも読み過ぎだとは思うけど。（笑）
欲を言えば、見所が１シーンしかなかったこと。
クレジットの最後に名前を出すくらいなら、
もうちょっと、彼の行動の背景にあるものを、掘り下げて欲しかったし、
もうちょっと、黒谷さんや岸谷さんに絡ませてあげられなかったものか、と思う。
でもまぁ‘今’こういう田辺さんに再会出来て良かった。
そうかぁ、最近、この田辺を忘れていたなぁ。
こういう田辺も、田辺なんだよなぁ。
柿崎（＠肩ごしの恋人）みたいな役を観ながら、この田村みたいな役にも逢える。
なんてファン冥利に尽きるんだろう。（笑）
しかも、これ、あの究極のペットキャラ・ヘンリー（＠笑う三人姉妹）を撮った直後。
マジで「千の仮面を持つ男」なんじゃないのか、田辺誠一！（笑）
―――文中敬称略してます。敬愛の裏返し、ということで、ご容赦下さい。
