『笑う三人姉妹』感想:8

 私としては、
病院に向かう時、すずめの数歩うしろを荷物持って歩いてたヘンリーが、
非常にツボでした。(歩き方はヘンだったけど。笑)
うん、きっとヘンリー〈田辺誠一〉は、
あの「一歩うしろのポジション」が心地良いんだろうな。
だから、すずめが振り返った時、「戻りましょ」と言って、
何度でも、何度でも、
すずめが忘れ物を取りに行くのに付き合うことが出来るんだ。

 

どうしてつばめ(牧瀬里穂)じゃなくてすずめ(光浦靖子)なのか。
きっと、あんなふうに何度も足踏みしながら、後戻りしながら、
それでも、「でも、私、頑張るんだもんね!」と密かに自分に気合を入れて
誰の手も借りようとせず一歩を踏み出そうとする、
そういう不器用なすずめのいじらしさが、
ヘンリーには、とってもいとおしく思えたのかもしれない。
それが、ヘンリーにとっての「好きになること」だったのかもしれない。

 

これほどしっかりと「支えてあげたい」という想いで人を好きになった役を
今まで、田辺さんは、演じたことがあっただろうか。
好きになった相手を支えてあげる一方で、どこか支えてもらってもいた、
役の上で、弱い部分をどうしても滲ませてしまっていた彼が、
堂々と、一方的に「支えてあげる」立場にいる、
それを、確実な演技でこちらに伝えることが出来ている、ということが、
私としては、ものすごく嬉しく、感無量の想い募るものがありました。