今さら『更生補導員・深津さくら 殺人者の来訪〜告解者〜』感想

今さら『更生補導員・深津さくら 殺人者の来訪〜告解者〜』感想 

3月にテレビ東京で放送された2時間ドラマ。
今さらながらの短め感想です。

始まってすぐ、
更生保護施設「親愛寮」にすむ寮生と近所の住人のトラブルがあって、
施設補導員のさくら(貫地谷しほり)が仲裁に入るシーンがあるのですが、
住人の 寮生に対する偏見に対して、
「みんな前向きに生きてるんです。今度変なこと言ったら許しませんよ」
というさくらのセリフがあって、
実は私、そこでかなり萎えてしまって…
う〜ん、これはちょっと観続けるのしんどいかなぁ、と思ってしまい、
前半はほとんど画面に集中出来なかった、というのが正直なところ。
何度も出て来る土下座もレイプ(未遂も含め)も、
そこに関わる人間の痛みが伝わって来ないように思われたのも
大きかったかなぁ。

しかし、後半になって、
久保島田辺誠一)が19年前なぜ人を殺したのか、
ということが少しずつ掘り下げられて行くうちに、
観ているこちらとしても、徐々に物語に入って行くことが出来ました。
特に、二人の息子を殺された牧野(西岡徳馬)が、
殺した当事者である久保島を自分の会社で雇う、という行為には、
驚きと同時にどこか心惹かれるものがあって、
その時の彼の、死んだ息子たちや久保島に対する複雑な想いが、
私には興味深かったです。
久保島という男が、牧野にとって、
単に息子を殺した憎むべき相手、というだけでない、
むしろ、自分には見えなかった大切な何かを知っているかもしれない、
それを教えて欲しい、という、
どこか すがりたい気持ちが含まれているような気がして。


貫地谷さんと田辺さん。
少女のようなしなやかなたたずまいの中に、
さくらの芯の強さや明るさの奥にある陰影が無理なく伝わって来て、
観る側が自然とさくらに寄り添える空気感になっていたのは、
さすが貫地谷さんだと思いました。

一方の田辺さん。
最近、WOWOW以外では ダメなお父さんとか天然上司とかの役が多くて、
こういった影のある役は本当に久しぶりでしたが、
すんなりと馴染んで違和感なかったですし、
やっぱり彼のこの独特の持ち味というのは非常に魅力的でした。
地上波ドラマの製作陣は、
なんで田辺さんのこの部分をもっと使ってくれないんだろう、と、
改めて思った次第。

こういった 信仰が底辺にあるドラマ(特にミステリー)というのは、
嘘っぽくならないように説得力を持たせるのが難しいと思うし、
今回の脚本も決してその部分を丁寧に書いてくれた
とは思えないのだけれども、
貫地谷さんと田辺さんが作り出したさくらと久保島の距離感が程よくて、
お互いへの想いが恋愛という感情に至らず純粋なまま留まっている、
という部分がちゃんと伝わって来たように感じられた、
そのことが 私には なかなか興味深かったです。


『更生補導員・深津さくら 殺人者の来訪〜告解者〜』     
放送日時:2017年3月26日 (日)14:00-16:00(TV東京系)
脚本:山田耕大 監督・演出:君塚匠
エンディング曲: 「マスカット」平原綾香(EMI Records/ユニバーサル ミュージック)
製作:テレビ東京、BSジャパン、Joker
キャスト:貫地谷しほり 田辺誠一 遠山景織子 ベンガル
斎藤歩 上田耕一 河合美智子 中野裕太 掛田誠
賀来千香子 西岡徳馬 他
公式サイト