窪塚洋介さん オダギリジョーさん 田辺誠一さん

 先日、窪塚洋介さん復帰第一作映画の話題をやってたんですが、
インタビューに応える彼は、
以前のような独特の「毒気」のようなものがなくなっていて、
まるで生まれたての赤ん坊のようで、
事故によって削ぎ落とされたものが何だったのか、ということを想像すると
すごく揺さぶられるものがありました。

 

オダギリジョーさん。
彼の、作品の選び方、というのは、
ものすごく振り幅の広い役を節操なく演じているように見えて、
実は、きちんと一貫しているような気がします。
彼は、俳優である自分に対して確実な自信を持っている・・・・
つまり、自分をとても良く「知っている」んじゃないか、と。
出演作品を選ぶ段階で、
自分を活かせる、あるいは自分が十分に楽しめる、
あるいは自分をさらに伸ばす、そういう役を、きちんと嗅ぎ取っている。

それと、オダギリさんの場合、
たとえば以前の窪塚さんのように、
役をことごとく自分の色に染めるのではなく、
役を自分に引き寄せると同時に、
自分を役に跳び込ませることも出来るタイプで、
その変幻自在なフットワークの軽さが、
彼独特の世界を生み出しているようにも思えます。

 

田辺誠一さん。
彼はまだ、本当の(俳優としての)自分の力をよく知らないんじゃないか、
と思う。
何が出来て、何が出来ないのか、さえはっきりしていなくて、
自分に対して、いつまでも絶対の自信を持てない(持たない)
ようなところがあって。

だけど、その、
いつまで経っても「俳優としての拠り所」を得ようとしないところ、が、
そういう「確かなもの」を持たない不安定な揺らぎ、が、
この人の最大の魅力なのではあるまいか、と、
そんなことをふと思ったりもするのです。

田辺さんの、来るもの拒まず、の姿勢も好きです。(笑)
自分に合わないと思われるものや、納得行かないものであっても、
とりあえずやってみようとする、その節操のなさ(笑)が好きです。

そのために、一時的に評価を落とされても、軽く扱われても、
役を演じたことで、彼の中に確実に培われて行く「何か」があるのも、
また確かなことなのではないか、と。

 

ヘンリーという、今のところさほど為所(しどころ)のない役を、
田辺さんは「余裕」を持って「演じている」ように思える。
それはそれでとても嬉しいことだし、
観ていてすごく幸せな気分になれるのも確かだけれど、
その安定・安心の先に、いささかの停滞、が潜んでいないだろうか、と、
ちょっと疑心暗鬼(心配性?)な気持ちを抱きつつある自分がいるのも、
また確かで。

もちろん、ヘンリーが「田辺さんの得意分野」である、
というのが一番の原因で、
だからこその余裕・安定なのだとしても、
自分の「何」を「どう」見せるか、「どう」さらけ出すか、
その問いを、常に自分に突きつけている、
そういう田辺誠一であって欲しい、
自分のテリトリーに役を引き込んで、
満足してしまう俳優にはなって欲しくない、と思う。