『荒神〜AraJinn〜』感想:9

 田辺誠一が演じる 風左衛門(アルゴール)の魅力
一番最初にこれ(↑)を書けよ!って感じですよね。(爆)
でも、私としては、ようやく「ここ」に辿り着いた、って気分なので。(笑)

 

えっと、まず「見た目」ですかね。(笑)とにかく舞台映えがします。
背が高い、というのは、特にこの役には、とても有効だったと思います。
ひとつ注文をつけるとすれば、
もうちょっと姿勢を良くして(背筋を伸ばして)くれると、
もっと映えたんじゃないかと。

 

前半の風左衛門は、完全に、ジン(森田剛)の対極にいる「敵役」です。
最初から、ジンの真の敵はこいつだろう、と解かります。(笑)
田辺さんにしてはめずらしく、
堂々とした二枚目で、しかも強くて、力があって、徹底的に悪で、卑怯で、
「権力を使って相手を威圧する」感じが、
私には、とても新鮮にうつりました。
そういう「強さ」を演じるのは苦手なのかな、
そういう雰囲気を出せない人なのかな、と思っていたので。

 

後半、回想シーンで、アルゴールとして登場してからは、
サラサーディ(緒川たまき)をはさんだ、
ジンに対する色敵(いろがたき)の一面を見せるようになります。
しかも「欲しいものは必ず手に入れる」とか
「私から逃れることは出来ない」とか
言い切ってしまうようなヤツなんですよ〜。
そういうセリフが、田辺さんの口から発せられるなんて、
ひょっとしたら永遠にないかも、と諦めかけてたもので(笑)、
心の中でバンザイ三唱、
「きゃ〜〜アルゴールかっこいい!」と、もうその辺から、
ストーリーそっちのけで、アルゴール応援団と化してた自分。(笑)

 

ジンが魔界地獄から戻り、風左衛門をアルゴールと見破ってからは、
一気に形勢逆転、
風左衛門は、闘いを放棄し「殺せ」とジンの前に座るのですが、
アルゴールの独白からここまでを観て来ると、
私には、風左衛門が
「誰か私を救ってくれ!」と声なき声で叫んでいるようで、
胸にグッと来るものがありました。

しかも、それは本当に微かなもので、
明らかな「弱さ」には繋がっていないんです。
そのために、風左衛門を「かわいそうな人」と観てしまうのではなくて、
彼の「孤独」に思い至るに留まる・・・
「切ない」と感じる一歩手前で踏み留まることが出来る・・・
うまく言えませんが、彼の「哀しみ」に酔わずに済む、というか、
ちゃんと最後まで「敵役」のままでいられる、というか、
ジンに対する風左衛門の強さが、
ちゃんと最後まで持続してるような気がして、
切な系の風左衛門も観てみたかったけれど、こういう役の作り方も、
田辺さんだから余計に、とても興味深いと思いました。

 

ラストは、風左衛門ファンとしては、とてもとてもあっさりし過ぎてて、
え〜〜こんな簡単に捕まっちゃって終わりなの〜〜?という感じです。
最初に観た時、一緒に観た人と、
「せめて、花でも雪でも紫の薔薇でもどっさり降らせて、
風左さまを気持ち良く退場させてやってくれ〜〜」
と、思わず東京駅のど真ん中で叫んじゃった(大爆)ほど、物足りません。

しかも、「ひとりで歩ける」というところまでちゃんと二枚目なのに、
最後の最後、田辺さん、「ダッシュ!」ってアドリブ入れて、
風左衛門を三枚目にしちゃってるんですよね〜。
それって、このお芝居的にはどーなのよ!?と思うことしきり。
いや、隙あらば三の線に戻りたがる、田辺さんらしい、
っちゃ、らしいんだけども。(笑)
私としては、
せめてラストは、二枚目のまま終わって欲しかった気がしました。