『半落ち』感想:2

半落ち』感想:2 投稿日: 2004年1月23日(金)roji
原作は「このミステリーがすごい」2002年度1位を獲得しています。
私は原作を読んでいないので、
この作品の「ミステリー度」というのが、どれほどのものだったのか
分からないけど、
少なくとも映画版「半落ち」は、ミステリーという視点で観てしまうと、
かなりつまらなかったような気がします。
「空白の2日間に何があったのか」という部分を追って観て行くと、
タネ明かしされた時点で、
肩透かしをくらったような気分にさせられるんじゃないか、と。

 

私はむしろ、この映画では、
前半は「組織に組み込まれた人間のやるせなさ」を、
後半は「魂を失いつつある人間への愛情の注ぎ方の違い」を、
強く感じ、受け取ったような気がします。

梶を、妻の後追いから思い止(とど)まらせ、踏み止まらせたもの。
50歳まで生き長らえることで、ひょっとしたら救われるかもしれない命。
誰かに生きて欲しい、と思う気持ち・・・・

 

魂を失う前に殺して欲しい、と願う妻を、
愛するがゆえにその手にかけてしまう男と、
魂を失いつつある父親の、生きるべき寿命を全うさせようとする男と。
犯罪者になってまで、妻の魂の尊厳を守ろうとした夫と、
ボロボロに傷ついてなお、妻とともに父親を見守ろうとする息子と。
どちらの愛が深いのか。 どちらが本当の愛なのか・・・・

ミステリーの裏にある、この映画のさまざまな投げかけを受け止めて、
受け止めつつ、結論は出ないままで・・・・

私にとっての「半落ち」は、そういう映画、でありました。

 

余談。前回、
 >この映画の寺尾・柴田・吉岡を観られたことは、
 >私にとって、すごく幸せなこと
と書きましたが、それは、決して、彼等が巧いから、ではないんですね。
うまく言えないんですが、
役に飛び込んで行くための「裸のなりかた」に、すごく惹かれたから、
と言えばいいか・・・・
ひょっとしたら、その辺は、
ビデオじゃ感じられない部分かもしれないなぁ、と。
だから、なおのこと、
「映画を映画館で観ることって面白い」と思ったわけで。
・・・・変ですかね。
そういえば、こんなこと『木更津キャッツアイ』観に行った時には
感じなかったんだけど。

 

今回ばかりじゃなく、
田辺誠一さんって、ブレーキかけてるんじゃないか、
と思うことが、たまにあります。
彼等(寺尾・柴田・吉岡)のような形ではなくても、
月下の滝川のような「裸のなりかた」は出来るのに。
ナイトホスピタルの東のような「気配の作り方」が出来るのに。
なぜ・・・・??