恋人はスナイパー≪劇場版≫(talk)

2004・4公開
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

夢:船木健一さん・・・ですねぇ。(笑)
翔:・・・・ですね。(笑)
夢:いろいろと「思い入れ」があるんじゃないか、とも思うんだけど。
翔:そうだね、映画以外のところでも、いろいろと楽しませてもらったし。(笑)
夢:正直、翔が、船木さんであれだけ盛り上がるとは思ってなかった。(笑)
翔:(笑)
夢:映画自体にしても、田辺さんにしても、それほど飛びぬけて評判が良かったわけじゃない、と思うんだけど。
翔:作品の出来としては、かなりぬるいところもあるし、田辺さんの出番はそれほど多くなかったし、何より、最終的には、船木(田辺誠一)は、きなこ(水野美紀)と王凱歌(内村光良)の世界に入り込めなくて終わってるわけだから、「つまんない」と思う人も多かったんじゃないか、と思うけど・・・
夢:翔はそう思わなかったんだ。
翔:はい。 
夢:そのあたり、「作品として」と、「役として」と、「田辺誠一として」と、3つぐらいに分けて、順を追って訊きたいんだけど。 ――まず「作品として」、『恋スナ』は、どうだった?
翔:これはもう、ウッチャンと水野さんのアクションを見せたい!という大前提があって、それに沿って作られた作品なんだ、ということ。 それって、最初にTVドラマが作られた時からずっと変わっていないわけで。
夢:うん。
翔:そういうことを頭に置いて観ると、今回は特に、水野さんが非常に魅力的だったし、ウッチャンは、アクションというより、スナイパーとしての面を多く出したことで、ふたりの魅力が被(かぶ)らないで、かえって良かった気がした。
夢:それは確かにそうかもしれないけど、あたしは、やっぱり、この物語の嘘っぽさ、というのが、どうにも馴染まなかった。    
翔:・・・・・・・・
夢:まぁ、映画では、あたしの苦手な「母を捜して何千里」的部分を取っ払ってくれたから、妙な「甘ったるさ」が薄まってよかった、とは思ったけど、閣僚の描き方の軽さとか、バッジに踊らされる人々とか、どうも、薄っぽくてペラペラしてて、いまいち 入り込めない感じがしたし。
翔:そうだね、そのあたりの骨格の弱さ、というのは、私も強く感じたところだけど。
夢:何だかね、笑えない冗談、って感じがしたんだよね。 どこか不謹慎というか。
翔:とてもよく分かるよ。 画一的でも何でも、せめて、もうちょっと骨太に描けなかったものか、という感じがしたものね。 こんなところで笑いを取ろうとしてどうする!?みたいな。
夢:うんうん。
翔:ただ、今回観直して思ったのは、閣僚にしても、国民にしても、「自分じゃ決められない、誰かに決めてもらいたい」という「根無し草」みたいなところって、これほどデフォルメされたものじゃないにしても、実際、どこかに持ってるような気もするんだよね。 ・・・まぁ、そういうふうに深く読んでしまっちゃいけないのかもしれないけど。
夢:・・・翔は、映画の初見で「9・11テロの影」みたいなことを言ってたけど、こういう作品に、そういう重いものを読み込んでしまっていいのか、という思いも、正直あったんだよね、あたしとしては。
翔:そのあたりについては、自分でも深読みが過ぎたかな、という気はしてるし、あれから2年以上経ったことで、自分自身どこか薄れているものがあって、今回は、そこにあるメッセージ性を強く受け取らないで済んでよかった、という気もしてるけど。
  もともとそのぐらいの程度で感じれば良かったのに、あの時は、深く考え過ぎて、頭が一杯一杯になってしまった、というところがあったな、と。 今にして思えば、ね。(苦笑)
夢:でも逆に、そんなふうに弱まってしまっていいものなの? 
翔:「それ(メッセージを伝えること)」が、この映画の「一番大切な部分」じゃないからね。 もともとこの映画は「B級アクションムービー」。 そういうメッセージ性は、感じる人だけが感じればいいんじゃないか、と。 感じなければいけない、ってものでもないと思うし。
夢:うーん、そうか・・・
翔:ただ、神宮寺の存在意味、というか、事件を起こした背景、というか、そこにあるのは、10ドル紙幣のために妻が殺されたことと、「9・11」によってすべての価値観が覆(くつがえ)されたことによる、「あまりにも軽い生命」への虚しさ、には違いないわけなので。
夢:うん。
翔:「事件の背景」にあるのが、お金目当てでなく、神宮寺の「虚無」みたいなものだった、というのは、私としては、ある程度納得出来るものだった気もするから。
夢:うーん・・・
翔:むしろ私としては、映画を観た時には、コー村木(竹中直人)の役のほうがピンと来なくて、遊び過ぎじゃないか、という気がしたんだけど。
夢:うんうん。
翔:今回観たら、何だかあのキャラをすんなり受け入れている自分がいて。
夢:・・・・・・・・
翔:面白いけどくだらない。 そのくだらなさこそが「強さ」なんじゃないか、という気もして。
夢:うーん・・・
翔:「嘘」なんだよね、結局は。 日本国民を誘拐する、という、荒唐無稽のこの物語が着地するべきところ、というのは。 だけど、この映画に関しては、それでいい、とも思うんだよね。
夢:・・・・・・・・
翔:その「嘘」で覆(おお)われた中に、ひょっとしたら「真実」があるかもしれないし、ないかもしれない。 「嘘」を押し通すことで、「真実」が見えてくるかもしれないし、見えてこないかもしれない。 その「どこ」を受け取るか、は、観客に委(ゆだ)ねられている、そういう作品じゃなかったか、と。
夢:つまり、単純にアクションを楽しもうが、「9・11」のような深い意味を読み取ろうが、それはどっちでもいい、ってこと?
翔:どっちが正しい、間違ってる、ってことじゃなくて。 伝えたいことはあるんだけど、それを押し付けようとはしていない、という感じがするので。
夢:うーん・・・いいのかなぁ、それで。 何となく逃げてる気もするけどなぁ。
翔:すべてを真面目に寸分の狂いなく伝えようと思ったら、映画なんて、みんなつまらないものになってしまうでしょう。 もちろん、そういう作り方をしているものもあって、それはそれでいいし、逆に、こんな単純なアクションムービーに、そういう影を投射することも、それはそれで「あり」だと、私には思えるんだけどね。
夢:・・・・・うーん・・・なるほどねぇ・・・・
★    ★    ★
夢:さて次は「役について」だけど。まず主役のふたりについて。
翔:ウッチャンはね、実はすごくうまい人なんじゃないか、と思う。 
最近、お笑いの人たちがドラマに出演することが多いけど、みんなうまい。 最近のお笑いはコント(=ドラマ仕立て)が多くて、お笑いの人たちは、それを、いつも人前で「演じてる」わけだから、うまいのが当然、と言えば当然なんだよね 
中でもウッチャンは、お笑い畑の人にはめずらしく、すごく地味に臆病に演じることが出来る人で、そういうところを観ると、ちょっと普通の人とは違うなぁ、という気もする。
夢:うん。
翔:もちろん、だからと言って、お笑いからすっかり抜けてるわけではなくて、どこかユーモラスでもあるし、かと思えば、ちゃんと二枚目な抱擁シーンも出来るし。(笑)
夢:・・・ああ、うん。(笑)  
翔:たとえば、夢が苦手だと言っていた「母を訪ねて・・」のあたりにしても、私は、ウッチャンだから何とか受け入れられた気がするし。
夢:・・・・・・・・
翔:王凱歌(ウォン・カイコー)という中国人の設定が、うまくウッチャンに嵌(は)まっていたと思うし、ウッチャンがまた、そういう役を、不自然さをまったく感じさせず、澱(よど)みなく演じていたのが印象的だった。
夢:なるほど。
翔:きなこを演じた水野美紀さんは、あいかわらず切れのいいアクションだなぁ、と、惚れ惚れ。 エピソード1~2~3と、回を追うごとに魅力が増して行ってる気がした。
夢:うん。
翔:でも、アクションだけじゃないんだよね、彼女も。 サバサバしてるんだけど、どこかぽっかり穴があいてる感じがしたり、淋しげだったり、役の上に重ねられてるものが、いろいろあったように思えた。
夢:うんうん。
翔:きなこと王が、お互いを好きだったのかどうか、については、私は最初から違うと思っていて。
夢:でも今回、留置所で王が「会いたかった」みたいなことを言ってるでしょ。 少なくとも王は、きなこを好きなのかなぁ、って、そんなふうにも取れたんだけど。
翔:私としては、王は、捨てられた犬だと思ってるから。(笑)
夢:ああ、翔は、最初からそんなことを言ってたよね。(笑)
翔:映画の最初のモノローグで、きなこも言ってたけれど、王はきなこに母親の面影を見ていたようなところがある。 留置所の「会いたかった」も、捨て犬が寂しげな眼で飼い主にしっぽを振ってる、という感じがしたんだよね、私は。
夢:捨て犬・・ねぇ。(笑)
翔:ハグシーンにしても、男と女という感じがまったくしなかった。 きなこの傷口をそっと舐めて治してあげようとしている、みたいな。
夢:ああ・・うん、それは確かにそんな感じもしたけど。
翔:まるで田辺さんのラブシーン観てるみたいな感じだった。余談だけど。(笑)
夢:(笑)
翔:でも、だからやっかいだ、とも言えるわけだよね。 ただ好きだ惚れた、というんじゃない、もっと、魂と魂で繋がってしまったふたりだから。 人間と動物(ペット)のような繋がりだとしても、ものすごく過酷な時間を共に生きた同志的なところもあるし。
夢:船木さんに勝ち目はない?
翔:・・・いや・・・犬(的役割を担った王)と人間(としてきなこに対峙する船木)は違うからね。 きなこのどういう部分を支えてあげるか、と言ったら、それぞれ違う役割があるわけだから。
夢:これが逆の立場だとして・・・田辺さんが王凱歌をやったとしても、翔としては、恋人という関係にならなくていい、「犬」でいい、と思う?
翔:もちろんだよ。 その方が絶対に魅力的に感じられる役、というのが、間違いなくある、と確信してるから。 モモ(@きみはペット)にしても、ヘンリー(@恋する三人姉妹)にしても、ね。
夢:う・・ん。
翔:ウッチャンもそうだけど、田辺さんもそういう役がまたすごくぴったり嵌(は)まるし。 演技としてじゃなく、持ち味として、の部分だとは思うけど。
夢:うん。
翔:話を戻すけど、とにかく、そこのところを、脚本の君塚さんはともかく、他のスタッフが、どれほど理解していたか。 いや、十分理解していても、コマーシャル戦略として、きなこと王を「恋人」という括(くく)りにしてしまったほうが受けるだろう、とは考えなかったか。
夢:それは考えたでしょう。 だから『恋人はスナイパー』というタイトルになったんだろうし。
翔:そのあたりの「おとこ+おんな=恋人」という安易な着地を、観ている側が本当に求めているのか、というのは、私としては、かなり疑問があるところではあるんだけど。
  逆に、水野さんとウッチャンが醸(かも)し出した雰囲気が、そういうものではなかったことで、すごく良かった、と思ってる自分がいる。 (きなこの婚約者である)船木を田辺さんがやっていたから云々ではなく、ね。
夢:うーん・・・そうか。 
★    ★    ★
夢:他の出演者についてもちょっと触れておこう。
翔:神宮寺役の阿部寛さんは、妻を殺された空虚感をうまく醸し出していたなぁ、と。 彼と船木(田辺)が対峙するシーンがいくつかあるんだけど、やはり彼のほうが一枚上なんだよね。 それは、役の上で、ということもあるけど、俳優としての重量感の違いでもあったのかな、と。
夢:うーん・・・・
翔:でも、だからと言って、全面降伏している感じは、船木(を演じてる田辺さん)からはまったく感じられなくて、力の差はあっても、何とか喰らいつこうとしている、隙(すき)あらば正体をあばいてやろうと思っている、その、任務を一生懸命に果たそうとしてる感じ、というのが、私が、「強い船木」を感じた所以(ゆえん)にもなってるんだけど。
夢:ふーん・・・うん、面白い。
翔:きなこの父・鴈太郎役のいかりや長介さんは、これが遺作となってしまった。
夢:残念だったね、いい俳優さんだったのに。
翔:映画の時は、声に力がなくて、往年の彼からしたら、半分程度の力しか出せなかったんじゃないか、とは思うけど、でも、あの存在感は、やはり大きなものがあった。
夢:うん。
翔:いかりやさんは、ひそかに田辺さんと共演して欲しい、と願っていた俳優さんのひとりで、『恋人はスナイパー』がドラマになった時、たくさん絡(から)んでくれ、と思ったんだけど、なかなかそういうシーンがなくて。
夢:映画では、まったく接点がなくて終わってしまったよね。
翔:それがとても残念だった。
夢:スナイパー役の中村獅童さんは、あいかわらずの不気味さで。
翔:(笑)うまいよね。 今回は、彼の存在が大きかった。 
夢:うん。
翔:神宮寺(阿部寛)という明確な敵役を作り、范火清(中村獅童)という凄腕スナイパーをそこに添わせ、彼らに「日本国民すべての誘拐」という役割を担(にな)わせた、というのは、王凱歌を日本に違和感なく存在させるためには、とても重要なことだった、という気がする。 前作のTVドラマ2本に比べ、そのあたりはすごく良くなったと思う。
夢:うん。
翔:スナイパーが東京をうろうろする、ということ自体、どうなの?と思うところはあったにしても。
夢:その辺が、翔がさっき話してた「この映画は‘嘘’でいい」ってことと繋がって行くのかな。
翔:そうだね、たとえばコー村木(竹中直人)が最後に神宮寺の前に現れる、あれって、まったくの荒唐無稽(こうとうむけい)で、ばかばかしい、と言ってしまえば本当にばかばかしいんだけど、その「ばかばかしさ」が、一瞬、神宮寺のシリアスを凌(しの)いでいたんじゃないか、と、ふと そんなことも感じたので。
夢:うーん・・・・・
翔:映画で観た時は、そこまで納得していたわけじゃないんだけど、今回ビデオを観直したら、あまり違和感なく、すんなりあのシーンを受け入れられたので、ちょっと自分でもびっくりした、ということはあったよね。(笑)
夢:・・・・だめだ、やっぱりあたしは、翔ほどすんなり受け入れられないなぁ。
翔:まぁ、それも仕方ないかもしれないけど。 説明不足、練り込み不足なところは、たくさんあったと思うから。
夢:いろんな不足があっても、翔は面白いと思ったんでしょ?
翔:はい。 まぁ、これほど好意的に受け取れるのは、ほとんど船木さん(を演じた田辺さん)のおかげ、という気もするけど。(笑)
夢:・・・・・・・(笑)
★    ★    ★
夢:さて、その、魅力的な船木健一を演じた田辺さんについて、ですが。(笑)
翔:はい。(笑)
夢:翔がずっと言い続けてる「船木の強さ」ってあたりを、もうちょっと具体的に聞かせて欲しいんだけど。
翔:具体的に・・・・ うーん、たとえば、神宮寺に対しては、過去にきなこがワイドショーネタにされた時のことを皮肉めいて言われた時、ふっと隣に座るきなこを気に掛け、さらにこちらから質問をぶつける、その時の、きなこをかばい護(まも)ろうとする感じとか、上杉(田口トモロヲ)を間にはさんで、視線を絡ませた時とか、部下に対して、以前は敬語だったのに、今回は「おい、ちょっとこれ見てみろ!」だったり、上司(升毅)に神宮寺を調べさせてくれ、と食い下がったり、等々、ありとあらゆるところで強さを感じたんだけど・・・・
夢:そういえば、最初から・・・船木が登場した時から・・・って言ってたよね、翔。
翔:もう、出演シーンひとつひとつ、頑張ってるなぁ、と思えたので。
夢:それは、船木が、ってこと? それとも、船木を演じてる田辺さんが、ってこと?
翔:うーん・・・・・・どちらも。
夢:どっちも・・・なの?(笑)
翔:はい。そう考えると、相乗効果、ってのはあったのかも。 足し算じゃなく、船木健一×田辺誠一という掛け算で、魅力値が大幅にアップしたのかな、って。
夢:・・・・はぁ~・・・なんか、のろけ話を聞かされてる気分になって来た。
翔:いや、そこまで独占しようという気はないけど。(笑) 
夢:あたりまえだ。(笑)
翔:とにかく、そういう「揺るぎない強さ」を見せてもらえたことが、私には、とてもうれしいことだったので。 たとえ、それが、ほんのちょっと、片鱗、に過ぎないとしても。 それが、船木健一(を演じる田辺誠一)の「これから」に、どう繋がって行くんだろう、と。
夢:うん。
翔:きなこにとって、王がいなくなった後の欠落感というのは、単に恋人を失った、というのとは違うと思う。 ある意味、一層深刻だった、とも言えるわけで。
 その、ぽっかり開いた大きな穴を、船木はこの先どうやって埋めて行くんだろう、あれほど傷ついたきなこを守って行かなければならない船木の「強さの片鱗」は、果たして今後どんなふうに育っていくんだろう――という興味が、ものすごく大きくなってしまって・・・・で、「恋人はスナイパー・トリビュート」に繋がったわけなんだけど。
夢:それそれ。 ちょっとその話をしたいんだけど。(笑)
翔:・・・はい。(笑)
夢:長く続いたよね。 5月から11月までだから・・・半年間?
翔:最初は、シチュエーションだけがいろいろ浮かんで、それをちょっと書ければいいかな、って、だから1話部分で終わるつもりだったんだけど・・・書き始めたら、もう、楽しくて。(笑)
夢:(笑)結局、12話まで書き切ってしまった。 それだけ、翔にとっての船木健一ってのは、魅力があったわけだよね。
翔:あったね。 何だろう・・・・屈折しないで好きな相手にまっすぐに向かって行く役って、田辺さんはほとんど演じていないんだよね。 自分の気持ちが くすんだり滞(とどこお)ったりしない、ひたすらに一筋に相手を思い、愛そうとする、そういう船木に出会って、かなり強く揺さぶられるものがあったから。
夢:正直、あの映画の中に、そこまでちゃんと描かれてたか?という疑問がなくもないんだけど。
翔:いや、まだそこまで突き抜けて きなこに向かってる感じはなかったかもしれないけど・・・
夢:あ、そうなんだ、翔としても、あの船木でそこまで感じたわけじゃなかったんだね。(笑)
翔:そうだよ。(笑) ただ「素地」としては、そういうものを十分に感じられたから。 「たぶんそうなんだろうな」って信じられるものを、船木の行動や雰囲気から受け取ることが出来たから。 
  それがなければ、いくら田辺ファンだとしても、あれほど船木健一というキャラにのめり込むことはなかった、と思うし。
夢:「素地」・・信じられるもの・・かぁ・・・・・
翔:そう。 「強さ」にしても、きなこへのまっすぐな気持ちにしても、あの映画の中に完璧に出て来ていたわけじゃない。 だけど、信じられる片鱗があった、ってこと。
  それがあったから、そこからいろいろな空想を広げて行くことが出来たし、いろいろなエピソードを思い浮かべることが出来たわけだから。
夢:で、半年かけて、トリビュート12話を書いた、ということなんだね。
翔:あのトリビュートを書いてる半年間は、だから、本当に楽しかった。 ・・・いや、もちろん「創造の苦しみ」はあったけど、船木健一を自分の好きなように動かせる、聞きたいセリフを言わせることが出来る――要するに「(船木を演じる)俳優・田辺誠一」そのものを、自由に、私の好き勝手に、動かしたり話させたりすることが出来る、ということなわけだから。その嬉しさ・楽しさと言ったら、もう・・・(笑)
夢:うんうん。(笑) いいよね、そんなふうにキャラクターを自由に動かせる、というのは。 好きじゃなきゃ出来ないことなんだろうし。
翔:そうだね。 そこには、「私が観たい田辺誠一」がいろいろ含まれている。 今にして思えば、そういうことが出来た、って、本当に幸せなことだったと思うね。