『荒神〜AraJinn〜』感想:1

自分が、俳優・田辺誠一の上に思い描き、いつかはきっと、と望み、
けれど特に『ハッシュ!』以降、
そしてとりわけ『サボテンジャーニー』以降、
ひょっとしたらもう観られないのではないか、と、
内心諦めかけてもいた「夢」の具現―――
私にとって、風左衛門=アルゴールは、まさにそういう役でした。

勝裕で解放され、ナビオで結実したものを、
決して疎ましく思ったり、嫌いだったりしたわけではない。
田辺誠一の魅力として、十分理解し、感動し、心から愛してもいる。

けれども一方で、
田辺さん本人はどうか知らないけれど、
少なくとも、周囲(TV・映画関係者)の見方が、なんとなく
「そこ」に田辺さんの到達点を見い出し、
「そこ」に収束して行こうとしている、その穏やかな流れを、
切歯扼腕(せっしやくわん)していた自分がいたことも確かで。

風賀風左衛門=アルゴールを観た時、本当に本当に嬉しかった。
私が田辺さんに対して「一度でいいから観せて(魅せて)欲しい!!」
と密かに願っていたものが、
あれほど完璧に近い形で、田辺さんに与えられたことに・・・
田辺誠一の魅力」を、ああいう形で捉えていた人が存在したことに・・・
とてもとても感動しました。

それは、私にとっては、
ある意味、「田辺誠一があの役をあんなふうに魅力的に演じている」
ということより、
ずっとずっと、「大きな意味のあること」、だったのです。

だから・・・・
演出のいのうえひでのりさん、脚本の中島かずきさんに、
まず、心から感謝したい、
今現在の田辺誠一、を、あんなふうに料理してくれたこと、
「あの魅力」を、引き出してくれたこと、
観客に、それを観せて、楽しませてくれたこと、
そしておそらく、田辺さん本人に、まだ半信半疑であれ、何であれ、
「あの魅力」が、自分の中にある、ということを気づかせてくれたこと、に
心から、心から!!