『人間の証明』(第10話=最終回)感想

最終回に集約されたもの=登場人物それぞれの着地点、というのは、
私としては、とても心打たれるものでした。
制作側が、このドラマを通して伝えたかったものが、
非常にクリアに、ストレートに、
こちらの胸に、直球でぶつかって来た気がします。

究極、ドラマにとって最も大切なのは、「何を伝えたいか」ということで、
「伝えたいことをいかにうまく伝えるか」という大きなテーマの前では、
スタッフも、キャストも、ただの「駒」であっていいのだ、と、
人間の証明』最終回を観て、改めて、実感させられたような気がします。
(かなり誤解されそうな言い方してますが)

ここから↓は、
あくまで、私がそう感じた、ということでしかありませんが。

たとえば、那須を演じた緒形拳さん。
最初はもっとどっしりとおちついた上司かと思ったら、
どんどん頼りなく情けなくなって行った。
あの役について、途中からキャラを変えなければいけなかったとすれば、
緒形さんとしては、やりにくい部分もあっただろう、と。

たとえば、桐子を演じた夏川結衣さん。
脚本の段階で書き足りない部分というのは確かにあっただろう、
だから役を掴みにくいということがあったかもしれない、と。

同じことが佐伯を演じた田辺誠一さんにも言えるのではないか。
那須のように、やりにくい部分も、
桐子のように、役を掴みにくいということも、
きっと経験したに違いない。

それでも、緒形さんや夏川さんが、
物語の中で確実に役を自分のものにして行ったように、
田辺さんも、最終的には、佐伯友也という人物の「真ん中」に、
きっちりと立っていた、と、そんな気がしてなりません。

確かに、出番はとてもとても短かったかもしれない、
けれども、3年後に衆議院議員に当選する、
その空白の3年間を想い描く時、
彼はきっと、郡恭子と出逢ったことが無駄にならない、
そういう日々を送るのだろう、
そしてその先も、恭子の選挙参謀になった頃の青二才の青年からは
一皮も二皮もむけた、深い人生を歩んで行くのだろう、と、
十分想像出来るラストであったような気がします。