『眠れぬ夜を抱いて』感想(BBS)

以下は、BBSに載せた『眠れぬ夜を抱いて』の感想です。
    
田辺誠一が、佐藤浩市に見えた夜 投稿日: 2002年5月19日(日)showm
↑しかし、いきなり何というタイトルなんでしょうね。(笑)

2年ぐらい前でしたか、田辺さんが、
「あと2~3年したら、佐藤浩市さんがやってるような役をやってみたい」
みたいなこと言ってて、
それがずっと頭の隅にあったせいでしょうか、
今週の進藤見てて、ふと、浩市さんとダブって見えたところがあって。

何故か、って考えてたんですけど、
たぶん、「緊迫感」があるかどうか、なんだと思います。

今までの田辺さん、「恐怖の大王・織田」(らせん)にしても
「組長の後釜ねらう・新藤」(BLUESHARP)にしても、
差し迫った感じっていうのがなくて、
どこかに本当の自分(役の上での)を置き忘れて来てる、という、
距離感みたいなのがあったような気がするんですけど、
今回は、ちゃんと「進藤要士の真ん中に立ってる」と、そんなふうに思えて。

ただ厄介なのは、
その田辺さんの「役との距離感」をもまた、愛してる自分がいて、
すごく不器用に役に取り組んで、結局、自分自身の本質を見せてしまうような、
そんな田辺さんが見られなくなってしまうのでは、と、
残念に思ってる自分もいて。
(すごく残酷なこと言ってる気がしますが)

でも、たぶん、これからの田辺さんは、
その「距離感」でさえ、演技力で見せてしまうのかもしれない、と、
それもまた、ものすごく楽しみだな、と、そんなことを考えた木曜の夜でした。

Re:ありがとう   投稿日:2002年7月18日(木]showm
眠れぬ夜を抱いて』の田辺さん、
7話までは、私の中で一番になっちゃうんじゃないか、というぐらい、
ものすごく引き込まれました。
その存在感って、それこそ、周り全部食ってしまうぐらい、だったと思うんです。
もう嬉しくて嬉しくて。
でも、8話の時、欧太(仲村トオル)に拳銃つきつけられた要士を観て、
「あれ?」と思ったんですね。
要士は、欧太が本当に恐いんだろうか、と。

もちろん、すぐそばに、自分に向けて拳銃構えてる男がいたら、
そりゃ、ビビるには違いないだろうけど、
それよりも、私は、
「欧太vs要士」という「女の亡霊に取りつかれた いい男二人が、対決する」の図、
という、要士としては最もオイシイ場面になれたはずのあのシーンを、
強い欧太、弱い要士、という、アンバランスな関係にしてしまった、
あの時の田辺さんの演技に、納得がいかなかったのです。

いや、それは演出家の要求だったのかもしれないし、
(6・7話の演出と違う人だったそうですし)
もともと、脚本が、要士の恐怖、を指示していたのかもしれないけれども、
田辺・要士だけが、なんとなく、あの場の空気と密度が違った感じがしたのでした。

まぁ、それって、もともと、欧太の類子(伊藤裕子)への想いが、きちんと描けてなかったから、
ということもあるんですけど。
要士のように、類子への気持ちが丁寧に描けていたら、
あの時、欧太が要士に向けた拳銃に込めた想いというのが、
もっともっと大きなものになっていたはずだし、
「大出類子」を巡って、二人の火花は、もっともっと激しく散っていた、とも思うから。

で、最終回ですが。
この回に関しても、ストーリー的に言いたいことはあるんですが、
ま、それは置いておくとして。

欧太からの携帯で、類子を殺したのは山路(筧利夫)だ、と知った要士、
拳銃を山路に向け、引き金を引く要士、警察に捕まり、連れて行かれる要士、
取り調べを受ける要士・・・・
そこまで、要士には、ものすごく濃密な時間の流れがあるのですが、
その濃密な時間を、田辺さんは、
しっかりと自分の周りの空気に染み込ませていた、という気がします。

しかし、無条件で「うまい!」と思ったにもかかわらず、
どうしても引っ掛かったのは、
その濃密な空気が、周り・・・特に主人公・欧太の醸し出す空気と、
交じり合わない感じがしたからです。
「二人(欧太夫妻)はどこへ行った?」と訊かれて、
「さんにん・・・中河と、女房と、おんな・・の亡霊と・・・・」と答えるシーン。

あの焦点の合わない眼を見ていて、
12年間引きずってきた悔恨が、仲間(山路)によって生み出されたもので、
その仲間を自分は殺そうとしたのだ、という、
ものすごい悪夢から抜け出せないでいる要士、というのが、
ひしひしと伝わって来た。
類子の亡霊が、今も、そしてこれからも、彼を苦しませ続けるんだろう、と
予感させられた。

そのあまりにもいたわしい様子は、
その後の欧太夫婦(仲村・財前直見)のシーンと並べられた時、
亡霊を背負っていたのは、要士だけで、
欧太の方は、もうすっかり、そんなものから抜け出していたのではないか、と
誤解させてしまうほどのものだった。
・・・・・と、そんなことを感じたのは、私だけでしょうか。

役に対して、前後の見境なくなるほど のめり込める、いさぎよく身を投じられる、
田辺さんの、この、役に対する真剣な姿勢が、
ひょっとしたら、ドラマ全体の調和を崩してしまったり、
TVのワクに収まり切れなくなってしまうことはないのだろうか・・・などと。
そんな、背筋がぞわりと来る感じ、が、
私の中に不安や引っ掛かりを生み出しているのも確かなんですが、
一方で、そういうふうに演じた俳優・田辺、
何だか予測出来ないところに行ってしまいそうな俳優・田辺、に、
ますます興味を持った私なのであります。(笑)

Re:ありがとう   投稿日:2002年7月19日(金)showm
私は原作を読んでいないので、8話の銃を突きつけられたあのシーン、
原作ではどうだったんだろう、と気になっていました。
私は、要士に、欧太を睨み返して欲しかった。
「お前も俺と同じなんだ」というセリフを、哀しみの色を込めて言って欲しかった。

贅沢なこと言ってると、自分でも思うけど、
最終回まで、きっちり一本スジが通っていたら、
「進藤要士」という役は、田辺さんにとって、きっと、特別な役になっていたはずなのに、
と、そう思うと、悔しくて。

実は、私が『眠れぬ・・』最終回で恐くなった田辺さん、
TVのワクに収まり切れなくなるのでは、と危惧した田辺さん、から、
「心配しなくて大丈夫だよ」という返事を貰った、ような気がしたのは、翌日、
夢のカリフォルニア』最終回の中林を観た時でした。
あの、だらしな~い中林(笑)を観た時、
「ああ、ちゃんと田辺さんは分かってる。この役があったから、安心して、
要士で、あれだけ自分を壊せたんだ。」
と、思うことが出来たのでした。