グリークス (第1部)(talk)

2000・9-10公演(シアターコクーン他)/2000・12・29放送(NHK BS2
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

 
  夢:『グリークス』です。 長いお芝居なので、とりあえず田辺さんが出演してた部分(第1部のⅠ・Ⅱ)を中心に、話をしたいと思うのだけど・・・・ しかし、ものすごいメンバーだね、プログラムに載ってる名前見ただけでも。
  翔:今の日本で商業演劇やろうと思ったら、これ以上のメンバー集めるの、なかなか難しいんじゃないか、と思うくらい。
  夢:平幹二朗さん、渡辺美佐子さん、白石加代子さん、麻実れいさん・・・・皆、ひとりで主役張れるような人ばかり。 その中に交じって、田辺さんが出演してたというのは、ものすごいことだよね。
  翔:メンバーに選ばれた、ということがね、そのことからして、すごいなぁ、と。
  夢:オーディションか何か?
  翔:いや、今回はオーディションはなかったんじゃないかな。 皆、監督の蜷川幸雄さんとかプロデューサーの人とかが相談して、この人はどうか、ということで決めて行ったみたい。
  夢:数多(あまた)いる若手俳優の中から、「アキレウス田辺誠一に」という白羽の矢が当たった、ということね。 ――で、どうだった?田辺アキレウスは?
  翔:かっこいい・・・
  夢:へ?
  翔:かっこいい。
  夢:わ、その一言? 分析好きの翔にしてはめずらしい。(笑)
  翔:なんかねぇ、余計なこと何も言う必要ない、って気分。 作品自体がすごく良く出来てるから、アキレウスに関しては、とにかく、ひたすら「かっこいい!」って思ってればいいんじゃないか、って。(笑)
  夢:アキレウスって、女の子の憧れの的、って感じだもんね。
  翔:あれだけみんなから「アキレウスさまぁ~♪」って言われているところに出て行くわけだから、やっぱり見た目良くないと、存在自体危うくなると思うんだけど、田辺・アキレウス、かっこよかったな、と。
  夢:もう、それで十分?(笑)
  翔:はい!(笑)
  ★    ★    ★
  夢:・・・・って、それだけで終わるわけにも・・・・(笑)
  翔:そうね。(笑)  もうちょっと、深く まじめに話そうか。
  夢:うん。 
  翔:やっぱり、お芝居っていいなぁ・・・って、つくづく思った。 
  心の中にポッと灯がともって、身体がホワッと浮き上がって・・・・TV画面を通して、で、ではあるけれど、一時(いっとき)ギリシャトロイアにタイムワープして、あの時代の人間として生きているアキレウスアガメムノンたちと一緒の時間を共有する、人の生や死や、争い、愛、悩みや苦しみや痛みや、いろんなものを、舞台の上にいる俳優さんと共に享受出来る幸せ。
  TVで観ていただけでも、これだけの感動があるんだから、実際その場に居合わせた観客って、どれほどのものを受け取ったのか、と、ものすごくうらやましくなった。
  夢:翔は、お芝居観るの好きだったもんね。
  翔:私は今、東京に行って生の舞台を観る、ということが出来ない状態にあるけど、だからこそ、目の前で田辺さんが動いている・・・言葉を紡いで、怒って、泣いて、汗をほとばしらせ、唾をとばして、アキレウスとして生きている・・・神と人間の子、皆から愛され、畏れられる英雄・・・まだ若い、だから一途で、不安を隠さず、むきになったり、冷静になったり、うぬぼれたり、悔やんだり、そうやって、今、その空間に生きているアキレウスと、同じ空気が吸える、同じ時間を過ごせる、その幸せがどれほどのものか、と思う。
  夢:・・・・・・・・
  翔:あの客席で、あの舞台を観たかった。 アキレウスアガメムノンやたくさんのキラ星のようなギリシャ神話の住人たちと、一時、共に生きたかった。 自分の人生の9時間を、彼らに捧げたかった。本当に、心から、ね。
  夢:・・・・うん。
  翔:もちろん、TVで中継を観られただけでも幸せだし、TVならではの良さ、というのも、間違いなくあるんだろうけれど、劇場という空間に身を置いて、生の舞台を観るということは、それとはまったく違う価値があるんだよ。 ひょっとしたら、あの客席に座ることが出来た幸せな人たちには、かえって、理解してもらえない想いかもしれないんだけど。
  夢:うーん、なるほどね。
 ★    ★    ★
  夢:さっき翔は、田辺さんのアキレウスについて、「かっこいい。余計なこと、なにも言う必要ない」って言ったけど・・・・
  翔:うん。
  夢:あえて、俳優・田辺に何か注文をつけるとしたら、どんなことを?
  翔:・・・・・・・・
  夢:あたし、田辺さんのセリフの言い方、ちょっと気になったんだけど。 セリフすべて叫んでた感じがしたのね。 シロウトが知ったかぶりしてるみたいだけど、もうちょっと、抑揚効かせたほうが良かったような気がする。
  翔:ああ、そうだね。 それは私も思った。 もうちょっと、おちついてセリフを言って欲しいと思った場面もあったんだけど。 たぶん、ああしなければ、声が通らなかったのかもしれないし・・・・
  でも、それとは別に、すべて性急に、イライラと、怒鳴るように言葉を吐き出す、それって、アキレウスの持ってる焦燥や絶望をあらわしてたんじゃないか、と・・・・ずいぶん贔屓目(ひいきめ)に見てるかもしれないけど、ちょっと、そんなことも感じた。
  夢:ん?
  翔:アキレウスは、自分の運命を知ってるんだよね。 自分はいずれ死ぬ、という予言。 運命の歯車は、その予言の方向へ少しずつ近づいている。 どうあがいても、逃れられない。
  逃れられないその運命を、若くて、力もあり、やがてギリシャを統べる能力さえあると自負している自分が、受け入れなければならない。 その悔しさや焦りが、常に何かにいらついているような態度になって現れる、というのは、すごく良く分かるし、そのイライラ感が、母親・テティス南果歩)の前だけではやわらいで、甘えた感じになる、というのも、ものすごく納得出来る気がした。
  夢:ああ、そうかぁ・・・・
  翔:もちろん、もっともっとセリフに感情を滲(にじ)ませて言って欲しいし、セリフの最初に力が入るから、最後まで息が続かなくて、語尾が聞こえにくくなるし、そもそも発声法からして、まだ出来上がっているとは言えないし・・・・不備なところを挙げればきりがないくらいなんだけど。
  夢:それでも、そんな田辺さんを観て、「余計なこと、なにも言う必要ない」と、翔が思った、その根拠、みたいなのは、何かあるの? 今までたくさん一緒にトークしてきて、今回、やけに甘いな、突っ込み不足だな、って、正直、あたしなんかは思っちゃうんだけど。
  翔:(笑)
  夢:あ、そんな、謎の笑いを浮かべてないで・・・・
  翔:私が、舞台俳優としての田辺さんをあまり心配していないのは、主役級の人たちが必ず持っていなければならないものを、田辺さんが、ちゃんと持っている、と思えたからなのかもしれない。
  夢:え? それは何?
  翔:「華」
  夢:はな?
  翔:そう。 はなやか、の「華」。
  夢:ああ・・・・はい。
  翔:出て来るだけで観客の眼を引く、立っているだけで華やかな雰囲気を醸(かも)し出す、というのは、舞台俳優にとって、すでに大きな武器だと思う。
  夢:それは、見た目の美しさ、ってこと?
  翔:もちろんそれもあるけど、自分を観せる(魅せる)技術、って、やっぱりあるんじゃないかな。 それは、演技力とは別物(あるいはちょっとシンクロしてるかも知れないけど)の、自分の生かし方、ということなんだと思う。
  夢:自分の生かし方??
  翔:田辺さん、眼や手や長い足や、そういう自分の魅力的なパーツを持て余さずに、表現手段として、有効に使っていた。
  夢:うん。
  翔:俳優の「華」って、持ってるだけじゃダメなんだよね、きっと。 それを表に出す、魅力あるものとして見せる、それは、演技力というのとはちょっと違う次元のもののような気がする。
  私は、田辺さんの舞台って、今回初めて観せてもらったわけだけど、観ていて、フッと引き寄せられる感じがして、その感じがした時に、「彼は、舞台が向いてるんじゃないか」って、かなり僭越(せんえつ)だけど、そう思った。
  夢:うーん・・・・「華」を、演技力とは違った次元で見せる、というのは、あたしなんかは、どうも、ピンと来ないんだけど・・・・   
  翔:そうねぇ、私もうまい言葉が見つからないけど・・・・ 何故そう思ったか、というと、麻実れいさんが、最初にちょっとだけ出て来るんだけど、ものすごい存在感なんだよね。 あれって、彼女の「華」の部分であって、演技がうまいから、あの雰囲気が醸し出せたわけじゃないんじゃないか、って。
  夢:ああ・・・そうかぁ・・・・
  翔:自分の持ち味を知って、伸び伸びと表現している、だから、彼女を観てると、気持ちがいいんだと思う。 それは、もちろん、平さん初め、他の主役級の人たちにも言えることだけど。
  夢:うんうん。
  翔:以前、『ガラスの仮面・完結編』(TVdrama.8)のトークの時に、
    「演技が 完成されたものではなかったとしても、その俳優の持つ容姿や、雰囲気や、空気、といったものが、「役」に、ピタリと当てはまってしまう事だってある。それもまた、俳優にとっては、大事な「資質」だし、ひょっとしたら、それこそが、一番大切なものなのかもしれない。」
 という話をした。
  今回の田辺さんのアキレウスにも、そういう資質を感じた(まだ、あくまで「資質」の段階だけど)、って言ったらいいのかな。
  夢:ああ、なるほど・・・・
 ★    ★    ★
  夢:それでも、演技力というのも、絶対に必要なものではあるよね。 あたしなんかは、やっぱり、あのメンバーの中では、どうしても、田辺さんだけ、まだ出来上がってない、という感じがしてしまって・・・・ 具体的に、何をどうすればいいか、っていうのは、うまく言えないんだけど。
  翔:もちろんそうなんだけど・・・もう、田辺さんには、全部 解(わ)かっているんだと思う。
  夢:え?
  翔:田辺さんには、もう全部解かってる、自分に今足りないものが何か、求められ、応え切れずにいる部分がどんなものか・・・・
  今の彼には、100%の力を出し切っても、それらを補うことが出来ないこと、だけど今、100%の力を出し切らなければ、次のステップに進めないこと、そうやって、全部の力を出し尽くしていれば、いずれ、答えが見えてくること・・・・    
  夢:・・・・んん・・・・・
  翔:もちろん、観客がいるからには、質の高い、完成された演技を観せなければならないのは当然のことで、その点から言えば、今回の田辺さんの演技は、残念ながら、そこまでのレベルには達していない、と、酷な言い方をすれば、そういうことになってしまうんだろう。
  これほど質の高い、完成度の高い舞台の中で、田辺さんだけが、その合格ラインに到達していない・・・・きつい言い方だけど、高いお金を払って観に来てくれた観客に対して、言い訳は通用しないのも事実。
  でも、そのかわり、その歯がゆさ・物足りなさ、を一番強く感じてるのも、また、田辺さん自身で、そんな彼が、毎日毎日貪欲に、肌に触れるすべてのものから吸収している、その量の大きさ、吸収力の強さを考えた時、逃げ出さず、向かって行く、挑戦し続ける、というだけでも、ものすごいことなんじゃないか、と・・・・
  夢:・・・・・・・・
  翔:あれだけのメンバーの中で芝居することが、どれほど大変なことか・・・私たちが想像してもしきれないほどのプレッシャーや、不安や、焦りや、苛立ち・・・そういうもの全部を背負い込んで、大人の中にひとり取り残された子供みたいな状況の中で、悔しさも惨(みじ)めさも存分に味わって、味わいつくして、あの板の上に立ってる・・・・
  夢:うん。
  翔:その悔しさ・辛さを、痛みだけではない「糧(かて)」として、自分の内に取り込もうとする貪欲で強い強い意志。 田辺さんのアキレウスを観ていて、「出来ない喜び」さえ感じているのじゃないか、とさえ思えてしまった。
  夢:デキナイ ヨロコビ??
  翔:そう。 すべての力を出し尽くしても、まるで歯が立たないほど、相手(平さんを初めとする共演者)はスケールが大きい。 そんな相手に、負けると分かっていて決闘を挑んで、メタメタに返り討ちに会って、それでもまだ剣を握って挑んで行く。
  何度も何度もぶつかって、負けて、ぶつかって、負けて・・・・そうやって繰り返すうち、ただ負けてばかりじゃない、今はどうしようもなくても、いずれ一太刀浴びせるための戦略を、着々と練っているんじゃないか。 そういう自身の状況を、苦しみながらも楽しんでいるんじゃないか・・・・
  確かに田辺さんのアキレウスは、今、お世辞にも完壁なものとは言いがたいけど、平さんに必死で食らいついてる田辺さんを観ていたら、きっといつか、平さんに恥ずかしくない俳優になって舞台に戻って来る、と、そんな気がしてならなかった。
  夢:そうかぁ・・・・
  翔:それもこれも、あの舞台の上にいるから体験出来ること。 たぶん、田辺さん、今回の公演の出演者の中で、もっとも貴重な財産を得たひとり、と言っても、間違いじゃないと思う。
  夢:うーん、すごいね、あの中継観て、そこまで読んでしまいましたか。
  翔:あ、これはもちろん、私見なんだけど。(笑) でも、今の話や、さっきの「華」の話も含め、だから、そういう田辺さんだから、蜷川さんは、まだ舞台人としては発展途上の田辺さんを、この大舞台で使いたい、と思ってくれたんじゃないか、とも思うんだよね。
  夢:うん。
  翔:何にせよ、田辺さんに対して「また舞台に立って欲しい」と思えた、今のところは(あくまで「今のところ」だけど)、それで十分のような気がする、私は。
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  夢:生で観るのと、TVで観るのとでは、全然違う、という話を、さっき翔はしてたよね。 TVならではの良さ、というのも、間違いなくあると思うんだけど。
  翔:さっき言ったみたいに、生の魅力は、文字通り「LIVE(ライブ)」ということだと思うけど、TVの良さは、その時その時、最良のポジションで、俳優の細かい表情まで、きっちりと観られる、ということだよね。
  夢:アキレウスの表情で、「あ!」と思うとこ、あったよね、いい顔してる!って。
  翔:そうそう!(笑)
  夢:あ、それが、さっき翔が言ってた「華」の部分なのかな、もしかして。
  翔:そう・・・・そういう部分も入ってると思う。 それと・・・・・
  夢:ん?
  翔:さっき、田辺さんの資質の話をしたけど、そこからさらに一歩進んで、その資質を「表現する技術」を身に付けつつあるんじゃないか、と、アキレウスを観ていて、思った。
  夢:どういうこと?
  翔:TVドラマの田辺さんを観ていて、自分が持っている魅力的なパーツをうまく使い切ってない、と、いつも歯がゆい思いをしていた。 自分のどこにチャームポイントがあるのか、自分の何をどう見せれば、田辺誠一の持つ魅力を堪能してもらえるのか、彼自身、よく解かってなかったんじゃないか、と思う。
  だけど、舞台って、とにかく、自分が持っているものすべてさらけだして、全部見せてやらないと観客は納得しないから、田辺さんとしても、頭であまり難しく考えないで、とにかくMAXまで動いて、叫んで、その中から、何かを掴もうとしたんじゃないか、と思う。
  夢:うん。
  翔:で、ある時ふと、「あ!」と思う瞬間があって、何かが吹っ切れて、存分に伸ばし切れてなかった腕を思いっきり伸ばしたり、開け切れなかった口を大きく開けて叫んだり、もつれていた足を大股で歩かせたり、相手を思いっきり抱きしめる、床につっぷして泣き叫ぶ、指一杯広げて虚空を掴む・・・・そういうふうに、自分を、裏も表もぜーんぶ解放してやることが出来るようになって、自分をどう見せればいいか、ということが、解かり始めたんじゃないか、って。
  夢:ああ、うん、なるほど・・・・
  翔:今、田辺さんはTVの『2001年のおとこ運』で天羽という役をやってるけど、この田辺さんを観ていると、「自分の見せ方」というのが、ちゃんと理解出来てるように思えて、それも、頭で解かってるんじゃなくて、肌で解かってるって言ったらいいか・・・・天羽さんのナチュラルさは、アキレウスでMAXまで自分を解放した結果なのかな、と思える。
  夢:天羽さんはね、本当にいいよ! ま、ここでその話してもしょうがない、『おとこ運』については、そちらのトークご覧下さい、って言うしかないけど。(笑)
  翔:(笑) まだ、私自身、はっきりとした確証があったり、断固たる自信があって言ってることじゃないので、もうちょっと、これからの田辺さんを観て、いずれ、その辺のことを詳しく話せれば、と思っていますが。
  夢:そうだね。 ――では、話を戻して、印象に残ったシーン・・・
  翔:はい。
  夢:あたしはね、おかあさんであるテティスを、すごくまぶしそうに見る、あの時のアキレウスの表情って、好きだったな。 パトロクロス横田栄司)に口移しでお酒飲ませるとこも良かったけど。(笑)
  翔:私は、おんな好きのアガメムノン(平)を、苦々しく見つめるところ、かな。 ああいう表情を、間近で観られる、って、ものすごく幸せなことだし、LIVEはLIVEとして、その良さは歴然としてあるんだけれども、TV中継の意味も、それはそれで、大きいものがあったような気がする。
  夢:うん。
  翔:最後になってしまったけれど、『グリークス』という作品自体の質の高さは、本当にすごいと思うし、いつか、出来ることなら再演してもらって、その時は、出来れば、是非、客席で至福の時間を過ごしたい、と、切に願っています。
  夢:そうだね・・・その時、田辺さんは・・・・
  翔:その時の田辺・アキレウスは、きっと、今回とは比べ物にならないくらい、良くなっているよね、間違いなく!

≪追 記≫
役者の「華」ということに関して、『ガラスの仮面SP』のトークの話が出ましたので、参考までに、添付します。 
 翔:私、前に、「田辺さんは、けして芝居のうまい人じゃない」って言ったけど、だからと言って、「俳優・田辺誠一」を否定しているんじゃない、という事を、誤解のないように付け加えさせて下さい。
  与えられた役を 完璧に演じ、観客を驚嘆させてくれる 本物の役者たち、表情・しぐさを含めた演技すべてが、きちんと完成されている人たち・・・・「役者」を名乗る以上、そうでなければならない、とは思う。
  けど、現実には、そうじゃない人もいるんだよ。そして、田辺さんも、私は、まだ、その中に入ると思う。
  だけど、だからと言って、田辺さんのような人たちが、観客を感動させられないか、と言ったら、そうじゃないでしょう?
  演技が 完成されたものではなかったとしても、その俳優の持つ容姿や、雰囲気や、空気、といったものが、「役」に、ピタリと当てはまってしまう事だってある。
  それもまた、俳優にとっては、大事な「資質」だし、ひょっとしたら、それこそが、一番大切なものなのかもしれない。
  だって、芝居は、ある程度経験を積めば、うまくなって行くけれど、そういう「資質」は、持とうと思っても、みんながみんな持てるわけじゃないんだから。
ガラスの仮面・完結編(talk)≫より