フードファイト(伍ノ膳~終ノ膳)(talk)

2000・7-9月放送(日本テレビ系)
田辺誠一さんの出演していない壱ノ膳~四ノ膳については感想がありません。ご了承下さい。
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
 

伍ノ膳/大福                          
  夢:いやぁ、待ってましたよ、もう、話したくて、話したくて!(笑)
  翔:私も。(笑)
  夢:翔は、ちょうど精神的にめげてた時で、加賀見俊介氏(田辺さんの役)に救われた、って言ってたけど?
  翔:あの、ハチャメチャな、脳天気な、向こう見ずの明るさって、すごく、落ち込んでたココロに響くものがあった。 そういう役を、田辺さんがやっている、ということで、余計に。
  夢:でも、かなりおもしろ系のキャラだというのは分かってたけど、ここまで突き抜けちゃってるとは思わなかったし、それを、さも愉(うれ)しそうに田辺さんがやってて、こっちも、すんなり乗せられちゃった感じがするよね。
  翔:田辺誠一プロデューサーとしては、俳優・田辺誠一を、こういうふうに使いたかったんだろうね、今現在としては。
  夢:うんうん。
  翔:最近、田辺さんは、いろんなインタビューの中で、「バランス」という言葉をよく口にするけど、ずっとシリアス・クール路線で来ていたし、アキレウス(@グリークス/蜷川幸雄演出の舞台)という大役を控えて、一度、自分が持たれている一般的なイメージを、メチャクチャに壊してみたかったのかもしれない。
  夢:うん。・・・あと、翔、以前に「裏切り」という言葉も使ってたけど?
  翔:「裏切り」って、すごく好きなキーワードなんだけど、たとえば、『はなまるカフェ』に出た時、田辺さんの‘おめざ’って「4枚ちゃん」(4枚切りトーストに、バターとマヨネーズをつけて焼いたもの)だったじゃない?
  夢:ああ、はいはい。
  翔:あんなふうに、他人(ひと)が「田辺誠一」という俳優に対して持っているイメージを、すんなり壊して行く、裏切る、というのも、彼が言うところの「バランス」を取る上で、非常に大事な作業になっているのかもしれない、と。
  だから、「加賀見役を田辺で」というオファーが、この時期に来た、おぼっちゃまくんみたいな役を田辺にやらせたい、という人物がいた、それが、ちょうど今、おそらく田辺さんがやりたいと思っていたような役だった、ということに、田辺さんの運の強さ、みたいなものを感じるんだけどね。
★    ★    ★
  夢:加賀見俊介という役については、どう?
  翔:まぁ、滝川幸次(@月下の棋士)みたいに、一目観た途端、電流ビリビリ!という感じではなかったけど、加賀見も相当にインパクトがあって、登場こそ、「え?」という感じだったけど、あとはもう、怒涛(どとう)のように、加賀見パワーに押し流されました。(笑)
  夢:ははは・・・
  翔:観ていて、オイシイ役、得役だと思ったけど、案外、笑わせキャラとして楽しい・面白い、というだけじゃない、重要なポジションだとも思った。
  夢:と言うと?
  翔:『フードファイト』って、私、過去に1回しか観てなかったんだけど、特に草彅剛くんが演じた井原満は、背負っているものが重いにもかかわらず、その場を明るくする立場でもあって、演じている草彅くんは大変だなぁ、という印象だった。
  夢:うーん、子供相手のところなんか、特にねぇ。
  翔:今回、加賀見という、超ド級のおとぼけキャラが加わったこと、笑わせ部分を加賀見がかなり背負ったことで、満が、すごく「楽」になったと思うんだよね。 満が、おやじギャグとばしても、浮かなくなった、というか。(笑)
  夢:ああ、そうか。(笑)
  翔:早い話、「俺の胃袋は宇宙だ」という決めセリフも、前はちょっと違和感があったけど、自分のことを「プリンスメロンくん」なんて言う加賀見の出現で、満も、そのぐらいのセリフは言ってもいいよね、と、観ているほうも、納得させられたというか。
  夢:うんうん。
  翔:加賀見のおかげで、満のポジションが固まって、演じている草彅くんにも、心なしか余裕が出てきた気がする。
  夢:草彅くん、「俺が主役!」という自己主張は少ないんだけど、アンサンブルとして、全体にすごく馴染んでる感じがした。
  翔:たとえば、キムタクや中居くんのように、「俺はここにいる!」ってタイプじゃない。 誰が相手でも、サラッと受け流して、でも、一番底の部分では、きちんと「草彅剛」として存在している・・・・なかなか‘したたか’だな、と。
  夢:あと、あたしも翔も好きな、如月医師役の筧利夫さんについては?
  翔:ダジャレ・お笑い大好きな筧さんのことだから、ホントは、加賀見ぐらいはじけた役もやりたかったんだろう、と思うけど、如月医師も、どこかずれてて、おかしい・・・さすが筧さん、うまい!と思った。
  ★    ★    ★
  夢:今回、妙に『ガラスの仮面』との繋がりを感じなかった?(笑)
  翔:まぁ、こちらが『ガラかめ』に特別な想いを持っているから、そう感じるのかもしれないけど、援助してくれる足長おじさん、仮面の下の治らない傷、打ち明けられない想い、贈られた花・・・・って、かなりひねってるけど、『ガラかめ』に通じるものが多い気がした。 
  またそこに、田辺さんが出演しているという、一種不思議なデジャヴュ(既視感)もあって、妙に『ガラかめ』の匂いを感じてしまった。(笑) そのせいかどうか、加賀見さんの今後に、速水真澄を重ねて見てしまったりして・・・・
  夢:へぇ、どんなふうに?
  翔:おちゃらけキャラから、どんどん変化して、どんどんいい奴になって、どんどんかっこ良くなって、やがて、満と対等に、麻奈美(深田恭子)を争うようになるんじゃないか、って。  
  夢:えーっ!?(笑)
  翔:いや、もちろん、想像に過ぎないけど。 なんとなく、最後まで笑わせるだけ、じゃなく、まだ、もうひとひねりあるんじゃないか、と。
  夢:うーん、そこまで書き込んでくれてたら、最高だけどなぁ。
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六ノ膳/焼き鳥      
  夢:いよいよ加賀見さん(田辺)が、フードファイターとして、チャンプ・満(草彅)と対決!したわけだけど。
  翔:加賀見さんからしたら、ホントに急展開で、お父さんは死んじゃう、加賀見グループのトップにはなる、愛する麻奈美さん(深田)からは冷たい仕打ちを受ける、あげく、全財産賭けて満とフードファイトするハメになってしまうんだけど・・・・でも、そういう境遇を、すんなり受け入れて、楽しんでしまっているようなところがある。(笑)
  夢:・・・と言うか、ただの単純アホなんじゃないか、って、不謹慎なこと考えちゃったりしたんだけど。(笑)
  翔:そうねぇ・・・そういうところ、確かにあるかも。 でなけりゃ、スケールでかい天才か、どちらかだよね。
  夢:でも、今回、あんまりダジャレなかったんじゃない?
  翔:その分、他の人たちが頑張っていた。 前回、加賀見が出て来て、ダジャレ言い放題だったから、今回、他の人が突然ギャグを飛ばしても、「おもしろ~い」と思って聞けた。
  夢:加賀見ギャグで、免疫(めんえき)出来てた?(笑)
  翔:そうそう。(笑)
  夢:加賀見さん自体は、今回は、テンション少し抑え目、って気がしたけど?
  翔:そうだね。 全体には、喜劇路線のままだけど、ふと、真面目になった時、すごくいい表情になったりして、なんだか、ホッとしたような、嬉しいような気分になった。
  夢:その辺のバランスが良かったよね。 おちゃらけキャラから、自然に速水モードに替わっていって、アップになると、瞳がキラキラで。(笑)
  翔:(笑)
  夢:フードファイトで、満に負けた時、爺(梅津栄)をなぐさめるじゃない? 「ああ、速水さんのやさしさだ」って、妙になつかしいモノを見たような気分になったよ。 おぼっちゃまにあんな顔されたら、誰でも、一生付いて行く気になるよなぁ、って。(笑)
  翔:確かに。(笑)
  夢:結局、全財産を宮園さん(佐野史郎)に取られたわけだけど、加賀見さん、あんまりくじけてないし、落ち込まないし、思ったよりずっとたくましくて・・・・
  翔:今まで、ずっと、作られたレールの上を走らされていて、今回、初めて、自分自身の力で勝負した・・・負けても、その充実感みたいなものがあったんだろうね。
  あと、これまで、ずっとあのキャラでやって来られたのは、もちろん、「加賀見」という名前に守られ、爺に守られて来たからではあるけど、案外、周りに惑(まど)わされない、自分の中に、きっちりとした「核」のようなものがあったからじゃないか、という気もする。
  夢:え~? そう?(笑)
  翔:いや、惑わされなさ過ぎかもしれないけど。(笑)
  夢:弱さとたくましさと、両方持ってるような気はするけどね。
  翔:弱いゆえのたくましさ、それと、やさしさ、ね。
  前に、田辺さんが、「ぜん息か何かで、爺と一緒に山村留学していた」って、加賀見のキャラ分析をしていたけど、鋭い読みだなぁ、と思った。 身体が弱かったから、きっと、盲目的に愛されて、世の中から隔離されて、でも、「加賀見グループ」の御曹司としてのプライドだけは植えつけられて、それを当たり前に受け入れて、温室の中で、マイペースで育ってしまった・・という感じがするもの。
  だけど、そんな境遇だったから、素直に・・・ちょっと間違った方向ではあるけど(笑)すくすくと育ったんだよね、きっと。
  夢:麻奈美に、「たとえ貧乏でも、自分の力でちゃんと生きている人のほうが好き」と言われて、かなりショックだったみたいだけど・・・
  翔:でも、そう言われて、満とフードファイトすることを決心してしまうんだから、やっぱりタダモノじゃない。 もっとも、その過酷さをよく分かってなかったみたいだけど、ナイフとフォークで焼き鳥を食べていたところをみると。(笑)
  夢:そんな「甘ちゃん」加賀見と「焼き鳥を食べられない」満との対決は、後半、一気勝負になるんだけど、それでも、前回の「大福」で、満も広海(挑戦者/横山裕)もあまりにも辛(つら)そうに食べてたのを観たせいか、後半、目一杯口にほおばっても、すごくおいしそうに食べてるように見えた。
  翔:食べている人たちは、大変だったと思うけど、「焼き鳥」って、フードファイトの食材としては、食べやすい部類に入るのかもしれないね。
★    ★    ★
  夢:今回は、如月さん(筧利夫)も頑張ってたよね。(笑)
  翔:如月さんは、地に足がついた面白さ、加賀見さんは、地に足がついてない面白さ、とでも言ったらいいか。(笑) 加賀見のように、ハイテンションで笑わせるんじゃなく、ジワジワ笑わせる感じ。 ようやく、筧さんの本領が発揮されて嬉しい。
  夢:筧さん、最近CMへの出演も多くなってきて、ようやく、「時代が筧利夫に追いついた」って気がする。(笑)
  翔:あと、最近気になっているのが、九官鳥の久太郎の声が、いったい誰か?ってこと。 最初、志村けんさんだと確信してたんだけど、何度も聴いているうちに、違うかな、って。
  夢:あたしは、SMAPの誰か、か、ジャニーズの先輩じゃないかと思うんだけど。
  翔:中居くん、ってセンもありかな、とも思うけど、久太郎って、歌うまいし・・・(笑) ちょっとずつヒントが出てくるようなので、推理するのも楽しい。
★    ★    ★
  夢:加賀見さんに話を戻すけど、フードファイトに負けて、全財産を失って、どうなるのかと思ったら、しっかりラーメン屋さんになって、しかも、次回にはもう「おいしい」と言われるほどのモノを作ってしまう、という、とんでもない底力を見せる!(笑)
  翔:うーん、たくましい!(笑) しかも、ちゃんと、麻奈美さんの言った通り、「貧乏でも、自分の力でちゃんと生きている人」になりつつあって、これは、そのうち麻奈美さんのハートを掴むってことだって有り得るかも・・・・なんて、余計な期待までしてしまったりして。
  夢:一応、メインとしての話は終わったわけだけど、次回からも、きっちり登場するらしいし、今後も、楽しみだよね。
  翔:ほんのちょっとの出番でも、私たちが「おお!」と思えるようなものであって欲しい。 加賀見さんと爺のコンビって、これから、このドラマのスパイスになって行くんじゃないか、と、すごく期待しているので。
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七ノ膳/コロッケ                               
  夢:今回は、対決ドラマの常道、「肉親との対決」だったね。
  翔:『月下の棋士』にもあったよね、「実の父親と、将棋で対決する」っていうのが。
  夢:情にほだされて、途中、形勢不利になるけど、結局は勝つんだよね、こういう場合。
  翔:それにしても、今回の母親役・浅香光代さんの存在感には、脱帽!だった。
  夢:なんか、いそうじゃない?ああいう人。
  翔:それもそうだし、役作りにしても、徹底的だよね。 リアリティーがある、と言ったらいいか。 それに、今回、満の母親を見ていて、「食べる」って、「生きる」ってことと同義語なんじゃないか、って、考えさせられた。 初めて、食べ物対決する「意味」がある闘いだったような気がする。
  夢:うーん、なるほど。
  ★    ★    ★
  夢:ところで、今回の加賀見さん(田辺)は・・・・
  翔:ワキだけど、ほんとにオイシイ役だな、と。 
  夢:うんうん。
  翔:あれほどおいしいものを食べ尽くしている満くん(草彅)に「うまいよ」と言わせるほどのラーメンを作れる、って、もしかしたら、料理人としての隠れた才能があったのかもしれないし、レストランで食い逃げなんて、いつの間に、そんなにたくましくなったんだ!?って。(笑)
  夢:「服、脱いでいただけませんか?」って爺(梅津)に言われて、「貸衣装だったね」って、ちっとも悪びれてなくて、また、そこが可笑(おか)しくて、可愛くて。(笑)
  翔:何なんだろうね。 やはり、育ちの良さからくる素直さなんだろうか?(笑)
  夢:世間知らず、とも、言える気がするけど。(笑)
  翔:それにしても、麻奈美ちゃん(深田)への見栄っ張りは、いつまで続くか?
  夢:麻奈美ちゃんも、ダマされやすい性格してそうだから、けっこう長いこと続くかも?
  翔:案外、麻奈美ちゃんの気づかないうちに、ほんとのラーメン王になってしまったりして。
  夢:お! やっぱり、加賀見の身に、もう一波乱ある、と見てる?
  翔:ま、願望だけどね。(笑)
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八ノ膳/ステーキ                               
  夢:翔、この話、好きだって?
  翔:ストーリーとしては、私が今まで観た中で、一番面白かった。
  夢:どんなところが?
  翔:挑戦者・カルロス(羽賀健二)が持ってる怒り・・・彼には、フードファイトするのに、お金の為だけでない明確な理由がある、ということ。
  そして何より、圧倒的な自信、それに見合った実力、自分と同じ種類の人間を嗅ぎ分ける能力・・・そういうものが、周りの人間たちを巻き込んで、普段出てこない彼らのナマの感情を引き出したこと。
  夢:・・・・?
  翔:カルロスの放つ「言葉」が、満も、宮園も、宮園夫人も、それぞれの心の内を見つめ直すきっかけになっている。 逆説的な意味で、彼は、とても重要な役割を演じていたんじゃないか、と。
  夢:うーん、なるほど。
  翔:特に、宮園夫妻の関係が、カルロスによって、ちょっと動き出した、今回、その辺も面白かった。 グッとおさえ気味の演技の佐野さん(宮園会長)、無表情のままで、でも、夫人への想いを思わず口にしてしまうところなんか、唸ってしまった、あまりにもうまくて。
  夢:あと、宮沢りえさん、あたし、今まであまり好きじゃなかったんだけど、宮園夫人は、すごくいいよね。
  翔:回を重ねるごとに、どんどん魅力的になっている気がする。 ただきれいなだけじゃない、奥深い、何かを背負った美しさ。
  夢:それから、満(草彅)も、カルロスによって、心をこじ開けられたし?
  翔:「ポケットに穴があいてるから、いくらでも食える」というセリフが、「俺達には、ハズレの白玉しかない」という満のつぶやきと同じような意味で使われていたよね。
  あきらめや絶望が、やがて怒りに変わる・・・・自分も、このまま行ったら、カルロスのような「ロボット」になってしまうんじゃないか? カルロスと自分とは、何が違うのか? という気持ちの揺れ・葛藤が、満にはある。 裕太のおかげで、迷いを吹っ切るんだけど、その辺の人間臭さみたいなものも、私には面白かった。
★    ★    ★
  夢:同時進行のサイドストーリーでは、その裕太役の秋場まなとくんがよかったし、母親役の南野陽子さんが、いかにもはかなげで、良かった。
  翔:南野さんの雰囲気、って、何か現実的じゃなくて、夢のようで、だから、裕太が女装する、なんていう突飛な話にも、すんなりついて行けたんじゃないかな。 今回に限らず、このドラマ、キャスティングがすごくいい、うまい、と思う。
  夢:プリンスメロンくんを、田辺さんに振ったことといい?(笑)
  翔:(笑)そうそう。
  夢:ふう、やっと田辺さんの話になった。
  翔:もう、帰って来る気、ないんじゃない?
  夢:え?
  翔:三のセン、とことん愉(たの)しんでしまってるから。 いずれ「まとも路線」に戻る、って信じていたけど、もう、戻って来ないんじゃないか、という気になって来た。
  夢:このまま三枚目で行っちゃうの?加賀見さん。
  翔:でも、完璧に、このドラマの中でのポジションを獲得しているのは確か。 今回みたいに、やや暗め、重いテーマの時に「俊・爺コンビ」が出て来てくれると、ほんとにホッとする。
  夢:爺役の梅津栄さんも、いい味出してるよね。
  翔:初めは、俊介のハイテンションについて行けない感じだったけど、前回あたりから、絶妙のかけあいになってきた。 二人のシーンは、アドリブもかなり入ってるんじゃないかと思うんだけど。
  夢:ラストで「爺、大丈夫?」って、田辺さんの声だけ聞こえるんだけど、アドリブだよね?(笑)
  翔:そうだね。(笑)
  夢:何があったんだろ?
  翔:さぁ・・・・ でも、間違いなく、二人は、このドラマになくてはならない「薬味」になっている。
  夢:うん! ところで、次回の挑戦者、まだ伏せられてるんだけど?
  翔:如月医師じゃない?
  夢:うわ、筧さん??
  翔:満の胃に潰瘍が出来た。 フードファイトをやめさせようとするが、やめようとしない。 自分(如月)が勝ったらやめることを条件に、挑戦者になる・・・・という流れじゃないかと思うんだけど。
  夢:なるほど!.
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九ノ膳/わんこそば                               
  夢:やっぱり相手は如月医師(筧)だったね。
  翔:でも、かすみちゃんのお兄さんの話が絡んで来るとは思わなかった。
  夢:如月さんって、いい人なんだか、悪い人なんだか・・・
  翔:どうなんだろうね、私も、いまいち読みきれない。 でも、筧さんは、今回、すごく「ワル」って感じの役作りをしていたよね。
  夢:どうしても、筧さん本人のイメージがあるから、「ワル」なのに、そうは思えなくて。
  翔:いい奴→ほんとは悪い奴→でも結局いい奴、とクルクル状況が変わったから、やっていても、難しかったろうなと思う。
  夢:途中、ちょっと「狂気」入るよね。
  翔:フードファイトがらみの部分ね。 筧さん、舞台っぽい演技をしていたような気がする。
  夢:舞台っぽい?
  翔:ちょっとオーバーアクションで、テンションも上げ気味で、あのまま、どこかの小劇場に持って行きたい、と。 でも、正直、TVのこちら側で見せられている私には、キツイ感じもした。
  夢:うーん。
  翔:対照的に、草彅くんは、あいかわらず抑揚のない、非感情的な感じで、でも、ふと、うまいなぁ、と思わせるところもあって・・・・
  夢:捉えどころがないよね、なんとなく。
  翔:うん。 で、ふたりのちょうど中間あたりに位置するのが加賀見(田辺)さん。
  夢:うんうん。 ・・・彼、どんどん「まとも」になってない?
  翔:まとも、って。(笑) でも、ずっとハイキーで来ていたんだけど、今回は、少し・・・半音とまでは行かない・・・四分の一音下げた、という気がする。
  夢:あ、そうそう、そんな感じ。 声のトーンが高かったのに、少しおちついたような。
  翔:麻奈美さん(深田恭子)にポロッと本音を言うあたり、三のセンを引きずっていながら、ちゃんと二のセンの匂いも漂わせていて、「あなただから言えないんです。好きだから」というあたりは、うまい!と思った。
  夢:あれって、『ガラかめ』でも使った、田辺さん独特の技術だよね。
  翔:独特、かどうかは分からないけど、あの辺のうまさは、あいかわらずだよね。 とすれば、今回、この『フードファイト』で田辺さんが身につけたものは、イヤミにならない三枚目というポジションと、どれほど喜劇モードに入っていても、そこから二枚目にすんなり戻れること、と言えるかもしれない。
  夢:うーん、そうか・・・
  翔:あと2回、田辺さんが、他に何を掴んでくれるか、楽しみ。
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拾ノ膳/回転寿司                               
  夢:今回は、満くんがよかったんじゃない?
  翔:そうだね、感情が表に出る場面が多かったから、草彅くんも、やりやすかったかもしれない。
  夢:挑戦者が、冴香(宮沢りえ)のおとうさんだった、しかも、それを、さだまさしさんがやってた、というので、二重の驚きがあったんだけど。
  翔:伍ノ膳の時の弟といい、今回の父親といい、どうして宮園(佐野史郎)は、冴香の肉親をフードファイターに選んだのか、という疑問があるんだけど、何となく、最終回で、その辺のこともはっきりするのかなぁ、と。
  夢:ん?
  翔:冴香の過去や肉親のことは、よく出てくるのに、宮園については、何も出て来ていない。 彼の過去、金の力で手に入れた冴香への想い・・・・不器用で、愛想がなくて、金の亡者で、でも、実は冴香を深く愛している、という、その辺が、フードファイトとともに語られるのかな、と。
  夢:宮園も、最終的にはいい役になりそう?
  翔:そう思うけどね。 あ、あと、さださんだけど、すごく自然で、いい感じだった。 特に、ラスト近く、娘(冴香)の手相を見てやるところ、宮沢さんも抑えた演技で、名シーンになった。
  夢:前に翔も言ってたけど、宮沢さん、いいよね。
  翔:雰囲気がね、独特のものがある。 冴香という役に、ぴったり収まったというか。
  夢:で、田辺さんなんだけど・・・・
  翔:はい。
  夢:もう、予告編が気になって気になって。ついに深キョンとキスシーンかぁ!?って。
  翔:(笑)まぁ、振られるんだろうけど。
  夢:あ、そう言っちゃ、身もフタもない・・・・(笑)
  翔:最近、かすみちゃん(平田祐香)がお気に入りなので、麻奈美ちゃんやめて、かすみちゃんと幸せになって欲しいと思ってるから。
  夢:本気(マジ)?
  翔:うん。
  夢:だって、あの子まだ・・・・
  翔:高校生。 どこかに、そんな歳の差カップルがいたよね。(笑)
  夢:・・・・・あ!! ははは!そっかぁ!
  翔:かすみちゃんなら、爺も幸せになれそうだし。
  夢:あとは加賀見さんの決断次第、って?
  翔:願わくば、今度は「あんな年下の子に」なんて悩まないで欲しいよね。(笑)
  夢:はははは・・・(笑)
★    ★    ★
  翔:久太郎の声だけど。
  夢:わかった?
  翔:わからない。 けど、今回観ていて、キムタクかな、って気もしてきた。
  夢:そう言えば、キムタクの話題、出てたね。
  翔:その話題を、わざわざ久太郎にふったでしょう? それを見ていて、あ、キムタクなのかな、と。
  夢:でも、声の感じは違うみたいだけどなぁ。
  翔:声の調子とかから判断すると、泉谷しげるって気がするんだけどね。(笑)
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終ノ膳/おにぎり                          
  夢:3回観直したって?
  翔:うん。 どうも後味が悪くて・・・・
  夢:え?なんで?
  翔:野島伸司さんの作品、って、総じてマンガ的な作りになっているよね。
  夢:うーん、そう言えばそうかな。
  翔:別にそのことが悪いと言うんじゃないんだけど、人が怪我をしたり、病気になったり、あるいは命をおとしたり、ということを、すごく‘ぞんざい’に扱うことがあるから、観ていて、辛くなる時がある。
  夢:・・・・・・?
  翔:たとえば、宮園会長だけど、今まで、具合が悪いなんて様子、まったくなかったのに、急に「死ぬのは時間の問題だ」という話になる。
  夢:うんうん。
  翔:手っ取り早く話を締めくくるために、「命」を簡単に賭け過ぎないか?と思う。 確かに、「死」というのは、最終回を盛り上げるのに大きな役割を果たすってこともあるかもしれないけど、それにしても、あまりにも安易じゃないのか、って。
  夢:そう言えば、満だって、胃に大きな潰瘍(かいよう)が出来てる、これ以上フードファイト続けたら危険だ、ということになったしねぇ。
  翔:野島さんや、山崎淳也さん(脚本担当)が意図したものは、実は、もっともっと奥深いもので、単に、私がそれを読み切れていないだけ、ならいいんだけど。
★    ★    ★
  夢:翔は、今回、宮園夫人や加賀見さんにも不満があるみたいだけど。
  翔:演じている宮沢さんや田辺さんに、じゃなくて。 脚本上、どうも納得いかなくて、その辺も、後味の悪さに繋がっているんだけど。
  夢:どういうところが?
  翔:これね、きっと、「喜劇なんだから。ドラマという作り物なんだから。」と、流して観ていたら、それで済む問題なんだと思う、さっきの宮園会長の死についても・・・
  夢:でも、翔は引っ掛かっちゃったわけね。
  翔:実は、はっきり言えば、最初から引っ掛かるものがあった。
  夢:最初から、って、ドラマの初めから、ってこと?
  翔:そう。 私たちって、田辺さんが登場した5話からしか観てないでしょう? 最初はそのせいかな、と思ったんだけど・・・
  夢:違ってた?
  翔:・・・最終回で決定的になった。
  夢:どういうところが?
  翔:たとえば、宮園夫人は、夫から、個人的な賭けを申し込まれて受けるわけだけど、「チャンプが勝ったら、全財産は夫人のもの。挑戦者が勝ったら、全財産を慈善団体に寄付する」って、どちらにしても、夫の取り分は全然ないわけでしょう?
  夢:あ、そうか。
  翔:あの、金の亡者のような宮園会長が、なんのメリットもない賭けを申し出た時点で、普通なら、変だと気づくと思うんだよね。 少なくとも、冴香のほうは、前回までで、お金がすべてじゃない、という気持ちを抱いていたはずだから、夫に、今までと違う何か、を感じても良さそうなのに・・・・
  夢:なんにも気づかず、しかも、申し出をあっさり受けて、会長をリングに上げた?
  翔:そう。 本当は、脚本上・演出上では、冴香は、「会長が、財産全てを自分に譲る気でいる」と満に聞かされるまで、財産のためなら、どんな手を使っても、という気持ちだったはずだと思う。
  夢:でも、夫人には、ちょっと躊躇(ちゅうちょ)もあったような・・・?
  翔:だって、それって、無理があるじゃない?
  夢:無理?
  翔:前回までの冴香の気持ちの上での成長みたいなものが、リセットされてしまっているわけだから。 宮沢さん、ひょっとしたら戸惑ったんじゃないだろうか。 少しずつ溶けて来た冴香の気持ちに、もう一度、鎧(よろい)を着せなきゃならない、そういう違和感はなかったんだろうか、って。
  夢:うーん・・・・
  翔:同じことは、実は田辺さんにも言える。
  夢:え?
  翔:フードファイトに負けて、全財産を失って、でも、ここまで、すごくたくましく生きてきた。 言い換えれば、失ったからこそ、成長出来たわけで。 
  夢:うん。
  翔:そのことに、加賀見さん自身、気づいてくれていたんじゃないのか、って。 ここまでの成長を、彼もまた、リセットさせられたわけだよね、「加賀見グループの株を取り戻すために、満の替わりに、麻奈美の足長おじさんになる」という交換条件をのんだことで。
  今まで身につけた、たくましさ、強さは、どこに行ってしまったんだろう? 「俊ちゃん、目を覚ませ!」と言ってやりたかった。
  夢:あたしもね、あれじゃ、大都芸能のためにシオリーと婚約した速水さんとおんなじじゃないか!
って思ってたんだ、実は。
  翔:加賀見さん、「たとえ貧乏でも、自分の力で生きてる人が好き」という麻奈美ちゃんの言葉が、あんたの座右の銘だったんじゃないのかい!?
  夢:そうだそうだぁ!(机をドンドンと叩く)
★    ★    ★
  翔:で、演じている田辺さんは、と言うと、こちらがそういう眼で見ていたせいか、演じにくそう、というか、迷いがあったような気がした。
  夢:うーん、あたしはそこまで見切れなかったけど。
  翔:麻奈美に「自分が足長おじさんだった」と、嘘をつく場面から、キスしそうになる場面まで、加賀見が何のためらいもなく嘘をつき通す、という役作りも出来たし、そういう作り方をすれば、麻奈美が去ったあと、自分のしようとしたことにハッとなって、自己嫌悪する、という流れは、自然だったはずなんだけど。
  夢:・・・・・・・・
  翔:でも、田辺さんは、加賀見を、そういう人間にしなかった。 前回、麻奈美の心にいるのは満だけだと知って、彼女への想いに終止符を打った。 だけど、けしてあきらめ切れているわけではない。 自分が足長おじさんだと名乗ることで、麻奈美が自分の方を振り向いてくれるかもしれない、という淡い期待・・・・ だけど、同時に、加賀見は気づいている、もう、足長おじさんの存在が、彼女の心を揺らすことはないだろう、と。
  負けると分かっていて、彼女に、自分が足長おじさんだと打ち明け、負けると分かっていて、デートに誘い、負けると分かっていて、キスしようとした・・・・ そして、彼女の涙を見て、ずっと前から分かっていたことに、改めて気づかされる・・・・
  夢:あの涙で、彼女の本当の気持ちを知ったわけじゃなかった?
  翔:私はそう思う。最初から、なんだよね。 だから、彼女の涙を見て、すんなり降参して、自分が足長おじさんじゃないこと、満が本当の足長おじさんだということを打ち明けたのだと思う。
  夢:言わば、負けると分かってるリングに上がって、あっさり打ち負かされた、ってことか。
  翔:最初から、ただ、負けを認める機会を待っていた・・・・田辺さんの加賀見って、今回、そういう作り方だったような気がする。 だから、逆に、麻奈美が去ったあとの自己嫌悪は必要ないんじゃないか、と思える。
  夢:うーん、そうかぁ・・・・
  翔:まぁ、田辺版加賀見の解釈が、果して、脚本・演出のねらいだったかどうか、というのは、疑問だし、そもそも、私の読みが当たっているかどうかもわからない話ではあるんだけど。
  ★    ★    ★
  夢:で、結局、プリンスメロンくんは、パイナップルプリンセス(=かすみ)ちゃんと、幸せになりましたとさ、めでたしめでたし。(笑)
  翔:考えていた通りの展開で。 でも、こういうラストになってくると、↑で、必死で深読みしていたのがアホらしくなってくる。(笑)
  夢:そうだねぇ・・・・
  翔:これはファンタジーなんだから、そこまで突っ込まなくていいのに、と、もうひとりの私が耳元でささやいている。
  夢:(笑) ところで、満くん、ラストが気になるんですけど。
  翔:最初、「あしたのジョー」のように、真っ白になってフェイドアウト・・・と思ったんだけど、うーん、どうだろう、最後に、どんぶりご飯がきれいに食べ尽くされてたところを見ると、ちょっと休んでいたんじゃないか、と・・・
  夢:え、そうなの? あたし、満くんまで死んじゃったのかと思った。
  翔:いや、本当のところはわからないけど。 でも、満まで死んでしまったら、ますます後味が悪いし、続編があるような終わり方だったので・・・・
  夢:そうか、続編ねぇ・・・・
★    ★    ★
  夢:今回で最終回、ということなので、総括しましょうか。
  翔:田辺ファンとしては、なかなか面白かったです。
  夢:でも、たとえば、『月下の棋士』や『DOG-FOOD』や、ここ最近のトークと比べると、わりとあっさりしてた、という印象があるんだけど。
  翔:するどい。(笑) さっきも言ったけど、これ、ファンタジーだと思うんだよね、結局は。 そういう作品に対して、きつい突っ込みを入れても、深読みしても、仕方ないんじゃないか、って、無意識に思っていたのかもしれない。
  夢:それにしては、今回、ちょっと「読み」が入った?
  翔:最終回だけは、ちょっと納得が行かなかったから。
  夢:でも、キャストに関しては、非常に満足してたよね。
  翔:まず、草彅くんが、思ったより良かった。 前半のおもしろキャラより、後半、シリアスになってきてからの方が、ずっと良かったような気がする。
  あと、宮沢りえさん、とにかくきれいだし、ものすごくいい雰囲気があるし、時々、フッと惹き込まれるような時があって、今回、好きになりました。
  深田恭子ちゃん、実は、よくわかんない子だなぁ、って思っていたんだけど、すごく一途、って感じは出ていたと思う。
  筧さん、役に対して掴(つか)みどころがなかったんじゃないか、と思うんだけど、さすがに、ツボは押さえていた。
  佐野史郎さんに関しては、非常に難しい役だったと思うんだけど、出過ぎず、抑えて抑えて演じていたのが印象的だった。 結局、この役が、この物語の核だったような気もする。
  夢:で、田辺さんですが。
  翔:この時期に、この役をやった意味は大きいと思う。 コメディセンスがある、ということが実証されたということは、一気に役の幅を広げることになるんじゃないか。
  「アキレウス」を終えてTVに帰ってきた時、田辺さんに、いったいどういう役が用意されているのか、ものすごく楽しみです。