月下の棋士(第1局~第5局)(talk)

2000・1-3月放送(テレビ朝日系)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

第1局/将来の名人なり                     
  翔:田辺さんの「滝川幸次」・・・嵌(は)まりすぎ!(笑)
  夢:最初から釘付け! やられちゃったね、本当に。(笑)
  翔:あの、どこ見てるか分からない眼、抑揚のないセリフ、揺るぎない歩き方・・・どこから見ても「滝川幸次」。 ひょっとしたら、原作の滝川幸次より、「滝川幸次」になっていたんじゃないか、という言い方は変かもしれないけど(笑)、本当にそう言いたいくらい 嵌まっていた。
  夢:いったい田辺さんに何が起こったんだろう。
  翔:本当に。 今まで、田辺さんのいろいろな役を観て来たけれど、これほど、今までやった役と重ならない、ということは なかった。 まあ、『BLUES HARP』の健二も違っていたけど、あれは、内容からして、他の作品とは毛色が違っていたし。
  夢:うん。
  翔:これまでの田辺誠一のイメージをまったく消し去って、自分を「滝川幸次」に ものすごく近づけて行った、と言えばいいか。 
  今までは、どんな役を演(や)っていても、他に、この役をやるとしたらどんな俳優さんが良いか、なんて失礼な事を考えたりしてしまっていたんだけど、「滝川」に関しては、もう、田辺さん以外にまったく考えられない。 次に、どんな名優が演っても、たぶん 違和感を抱いてしまうと思う。
  夢:あたしも同じことを思った!(笑)
  翔:まだ1回目だから、これからどうなって行くか分からないし、断定するのは早いかもしれないけれど、田辺さんの代表作になってしまう可能性があるよね、「速水真澄」を差し置いて。
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  夢:「氷室将介」役の森田剛くんとのコントラストも良かった。
  翔:森田くんがまた、自然体そのものでね。
  夢:二人が顔を合わせるのは、名人戦までないのかなぁ。 もっと‘からみ’が観たい。
  翔:将棋盤をはさんで向かい合っている二人の姿が、とてもいい雰囲気だったから。
  夢:名人になって、目標がなくなった滝川が、やっと「戦うべき相手」を見つけて・・・
  翔:たぶんワクワクしていたよね、表情は変わらなかったけど。
  滝川は、絶対に「保身」を考えない。 「神」に愛されている自分の実力がどれだけのものか、見極めたい・・・心にあるのはそれだけで、だから、「名人」という称号にも、本当は、あまりこだわっていないのかもしれない。
  夢:憎らしいぐらい自信たっぷり。
  翔:それが、これからどう変わって行くのか。 近寄って欲しくなかった千代子(川島なお美)とも、早くも2話で急接近しそうだし。
  夢:滝川みたいなタイプは、年上の女性に弱いような気がするからなぁ。(笑)
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  夢:1話ごとに「私のイチ押し」選ぶことにしようか?
  翔:そうだね。でも、ひとつだけ選べない。どのシーンも、みんな良かったから。
  夢:あたしは、やっぱり、森田くんとのシーンにする。 出会って、「なんだこいつは」から「おや?」になって、「もしかすると・・・」まで、氷室の実力を瞬時に見抜いた、滝川の変化が面白かったので。
  翔:あの時の立ち姿が、ものすごくきれいで、氷室を見下す目線も、滝川そのもの、という感じだった。 同じシーンを選んでもつまらないので、じゃあ私は、村木師匠(仲谷昇)との対面シーンにします。 村木と滝川の、あの寒々とした感じ、速水vs義父より インパクトがあった。
  夢:あの師匠って、まともじゃないよね。
  翔:滝川が内弟子だとしたら、たぶん一緒に生活していたはずだけど。プロデビュー前ぐらいまでは。
  夢:そうか。
  翔:あの村木の許(もと)で、「私は神に選ばれた人間だ」などという 不遜(ふそん)な思いを抱くようになる滝川は、いったいどういう育ち方をしてきたんだ、と、刀の切っ先を冷たい眼で見つめる彼を見ていたら、ついつい いつものくせが・・・
  夢:出た!翔の‘生い立ち知りたがり’。(笑)
  翔:だって、いかにも何かありそうで。(笑)
  夢:これから少しずつ解かっていくんじゃない?
  翔:そこまで突っ込んでくれるとうれしいけれど。 あ、あともうひとつ・・・
  夢:なに?
  翔:タイトル、キャストの一番最後に名前が出たでしょう。
  夢:そう! 『BLUES HARP』以来、二度目。
  翔:今回、中尾彬さんら、名だたる俳優さんを差し置いての「トリ」だったから、すごく嬉しかった。
  夢:本当に、文字通り、‘最後’まで、楽しませてもらったよね。

第2局/死闘!地獄からの使者  
  翔:先週から、二人ともテンション高いまま、一週間が過ぎてしまいました。 1話の時の表情や立ち姿を思い出しただけで、チェシャ猫笑いが浮かんで来てしまって、ゆるみっぱなしの顔を元に戻すのが大変。(笑)
  夢:ふふ・・・
  翔:田辺さん、役に対する「羞恥心」も「てれ」もなくなって、完璧に壁ひとつぶち壊して、突き抜けてしまった感じがする。
  夢:今まで越えられなかった壁を、軽々と飛び越えてしまった?
  翔:こんな奴いないだろう、って分かっているんだけど、滝川になりきってしまっているから、強引に納得させられてしまう、と言うか。 まじめな話、今回、田辺さんには、本当にびっくりさせられた。
  夢:どんなところが?
  翔:滝川って、派手な動きもないし、大きな表情の変化もない、しかもアップが多いから、眼の表情、と言うか、視線の強さ・弱さ、泳がせ方、ぐらいだけで、感情を表わすしかないんだけど、その視線が、場面場面で、微妙に違っている。 俳優なら当たり前、と言えば、そうなのかもしれない。 だけど、田辺さんの役への「のめり込み」を見せられた気がして、感動してしまった。
  夢:「迷い」がなくなった、って気がするよね。 役柄的に入り込みやすかった、ということもあるかもしれないけど。
  翔:1話の時に、滝川の立ち姿とか、全体の雰囲気、空気みたいなものに凄さを感じて、「これって、いったい何なんだろう」と思って、1週間ずっと考えていたのだけど、たとえば、歌舞伎とか、日舞とか、バレエとかも、それぞれに独特の「様式美」みたいなものがあるよね。
  夢:うん。
  翔:『怪』で 時代劇を経験したせいか、田辺さんの「滝川」を観ていると、自分なりに「滝川幸次の様式美」みたいなものを探り当てて、そういうものにきっちりと当てはめた所作をしているな、と。・・・うまく言えないんだけど。
  夢:でも、翔の言いたい事って、なんとなく分かる気がする。 たとえば、立ちあがる、座る、振り向く・・・そういうひとつひとつの動作に、田辺さんの滝川に対する美意識みたいなもの、確かに感じる。
  翔:私が一番心惹(ひ)かれたのは、将棋を指す時の、指先の緊張感。 駒を持ち上げて 指すまでの指の形が、すごく綺麗。 だけど、あの指先、やっている田辺さんは、ものすごく辛いと思う。
  夢:指がつっちゃうんじゃないか、って心配になるほど、ピンと伸びてるものね。 あと、1話で、将介に、「振り駒で決めましょう」と言って、駒を手に握って遊ばせる、その時の手も綺麗だった。
  翔:前に、何かで読んだのだけど、バレエのポーズというのは、演じる側が辛ければ辛いほど、観る側に、美しいと思わせる事が出来るのだとか。 田辺さんが将棋を指す姿を観ていて、ふと、その話を思い出した。 そんなことを考えながら観ていたので、2話で、将棋を指すシーンがなかったのは、ちょっと残念だった。
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  夢:今回の滝川は、‘おちゃめ’なところもあったよね。 ホテルで、大原(中尾彬)に「こんばんは」ってあいさつしちゃうところとか、ワクワクしながらホテルに付いて来た真由美(山口沙弥加)の鼻先で、無表情のまま、幕を閉じるみたいにドア閉めてしまったりとか。(笑)
  翔:妙にズレている。だけど、滝川みたいな奴なら、それも‘あり’だよね、と。(笑)
  夢:うん。
  翔:相手が大原でなくても、「こんばんは」って入って行って、「ドアはお閉めになったほうが」なんて忠告したりするんだろうか。
  夢:はははっ、タッキー(滝川)やっぱり最高!(笑)
  翔:今回初めて滝川の部屋が出てきたけど、見事に「無味乾燥」という感じで、おまけに、ここでも彼はスーツ姿。 寝る時までスーツだったりして、なんて考えてしまったのは、私だけ?(笑)
  夢:でも、滝川って、スーツか着物じゃなければ、何を着てるのか、って想像出来ない。
  翔:滝川の私生活、パロディーにしたくなるよね。
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  夢:「私のイチ押し」だけど。
  翔:真由美とホテルに行って、彼女の目の前でドアを閉めてしまったところ。 「ありがとう」の顔のまま、スー バタン!って、そのタイミングと表情が絶妙だったので。
  夢:石丸姐さん(川島なお美)にハンカチ巻いてもらった時の、うろたえてたタッキー。 あと、関係ないんだけど、真由美のデスクに張ってあったタッキーのポスターが欲しい。(笑)
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  翔:ひとつ話すのを忘れていた。
  夢:え?なに?
  翔:ちょっと気になる事があって。 田辺さんの指先、爪のところがちょっと荒れていた。 滝川って、指が商売道具だから、絶対きれいにしていそうな気がするんだけど。
  夢:でも、しょうがないんじゃない? タッキー、お洗濯とかお掃除とかやって荒れちゃったんだよ、きっと。
  翔:あ・・・・ははは。(笑)
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  翔:「滝川菌」は、ファンの間にも蔓延中。
  ふきのとうさんが、あるBBSに第1話のことをカキコされていたのを読んで、「ぜひとも2話の感想を聞かせて」とお願いしたところ、快諾の上、次のコメントをいただきました。

ふきのとう:『月下の棋士』第2回。いいよ~、やっぱり。滝川幸次。 
  あの立ち方って、意識し尽くした演技なんでしょうね。 モデルであんな立ち姿してたら、仕事なくなる(笑)。 中心軸がブレてて、なんか気持ちナナメになってるんです。 あれはカスミ食って生きてる男の立ち方。歩き方。すごい!!!
  ホテルの部屋で、中尾&川島(敬称略)コンビがもつれ合ってお楽しみ(?)の所にぬーっと現れ、テキが大原と気付いてもあくまで沈着。
  「こんばんは」「このような行為に及ぶなら」・・・・は、笑っちゃいました。 (あんな風に横に立たれたら、いくら彬サマでも気持ちが萎える・・・・?)
  特製グラスを握力70で割るシーンのイっちゃってる目はゾクゾクものだし、デヴィット村森との対局シーンの「・・・・負けました」も、おなじみメガネを指で上げる仕草も、まさに「滝川幸次」という人間が実在する気にさせられる。
  この『月下の棋士』は、田辺くんが男性のファンをがっちりつかむ記念碑的作品になるという予感がしてなりません。 (男の嫉妬を買わないというか・・・・。 これホメ言葉になってない??)
  氷室・剛くん、いい味でているし、「立会人」の沙弥加ちゃんも地でイケル。 何より主役二人のキャラが際立ってきっていることで、ドラマ自体の奥行きと説得力に厚みが出てきてます。
  誤解を恐れず言えば、石丸・なお美さんも、今ぐらいの気丈なやもめぶりなら、何とか許そう・・・と思います。 これもドラマの為、田辺くんの為。く~っっ。
  それにしてもあのハンカチ。 やはり名人自らアイロンかけたんでしょうね。正座して。 それを袱紗に包んで返しに行って、お茶も飲まずに帰るとは・・・!
  か、かわいいぞ~~。
  滝川幸次への愛はますます募るばかりの ふきのとうでした。

  夢:あいかわらず 滝川幸次への愛情満杯。
  翔:「立ち姿の中心軸がブレてる」・・・うーん、なるほど。そこまで見切れなかったなあ。 確かに、あの立ち方はモデルのものじゃないかもしれない。 「ハンカチ、名人自らアイロンかけた」・・って、想像するだけでおかしい。
  夢:でも、滝川って、洗濯とかアイロンとか、お掃除とか、けっこうマメにやりそうな気がしない?(笑) 
  翔:でも、食生活は悲惨そう。「あ、夕飯食べるの忘れた・・」とか言いそうだし、睡眠もあまりとらない気がする。 寝食忘れて将棋して、合間にお掃除したりしていそう。(笑) 
  夢:いいキャラしてるものね、タッキー。
  翔:ふきのとうさん、コメントありがとうございました。
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第3局/鬼門!死を呼ぶ占い棋士  
  夢:第3話です。
  翔:今回、森田-山口コンビが、すごくテンション高くない? 絶好調という感じで・・
  夢:森田くんも沙弥加ちゃんも、いいよ~、漫才コンビみたいで。(笑) あの二人は、あのまま突っ走って欲しいわ。
  翔:おかげで田辺さん、ちょっと影が薄かったような・・・
  夢:いや、タッキーはタッキーで、ちゃんと存在感あったよ。 目をつぶって道路を渡るところなんか、「あんたは武田鉄矢か!?」って突っ込み入れたくなってしまうほどだったし。(笑)
  翔:私も思った。(笑)
  夢:喫茶店でインタビュー受けてる時、ティーカップを回す時の手が綺麗だった。
  翔:そうそう。 田辺さん、今回は本当に指先に気を使っている。
  でも、どうなんだろう、記者から女性に関する質問をされて、「せっかくだから・・」と滝川が答えるシーン、滝川って、ああいう質問には絶対に答えないで、アルカイックスマイルでかわすような気がするのだけれど。
  夢:そうねぇ・・・
  翔:あそこは、質問されても答えずに、手のひらを見つめるだけで、十分、千代子姐さんへの想いが表現出来たと思う。 滝川の口から出て来る言葉は、将棋の事ばかり、という気がするから、あのシーンは、何となく違和感があった。
  夢:うーん、名人・滝川幸次じゃなくて、普通の人のインタビューみたいな気はしたね、確かに。
  翔:せっかく、第1話であれだけ近寄りがたい「滝川幸次」を作り上げたのだから、出来れば、あのままの雰囲気で最後まで行って欲しいと思う、生(なま)の人間っぽくならずに。
  夢:とは言え、目をつぶって道路を渡るシーンあたりは、滝川の真骨頂だったんじゃない?
  翔:あのシーンを「バカバカしい」と見てしまうか、「鬼気迫る」と見るかによって、『月下の棋士』というTVドラマにおける「滝川幸次」の‘神懸り(かみがかり)的な部分’を、今後も受け入れられるかどうかが決まる、という、本当にギリギリの場面だった気がする。
  夢:「なにバカなことやってんだ!?」というふうになってしまったら、「将棋の神に愛されている」と豪語する滝川の言葉が嘘になる?
  翔:でも、道路を渡り終えて振り返った時、正面から見据えた滝川の強い視線が、この嘘っぽいエピソードを、本物にした、と、私はそう思った。
  夢:あの眼、印象的だったなぁ。 
翔:―――話が横道に逸(そ)れるけど、あの「道路横断シーン」の前に、滝川が武者小路(宇梶剛士)と一緒に歩いているシーン・・・
  夢:うん。
  翔:宇梶さん、田辺さんより背が高いので、田辺さんが、すごく華奢(きゃしゃ)で、初々しくて、かわいらしく見えた。(笑) 今まで、田辺さんが自分より背の高い人と向き合っているシーンというのを見た事がなかったから、見上げている田辺さんの顔の向きに、妙に感動してしまいました。
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  夢:「私のイチ押し」は?
  翔:さっき話した、道路を渡り終えた後の、武者小路を強く見返した眼。 その視線をスッと左に逸らしたところも良かった。 それにしても、田辺さんが、本当に目をつぶって渡っているように見えたのは、私だけ?
  夢:でも、あたしもそんなふうに見えたよ。 あたしの一番は、ティーカップの持ち手をくるっと替えた時の手、かな。
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第4局/必死!崖っぷちの人情棋士   
  夢:翔、この話好きだったよね。
  翔:高嶋政伸さんが、役にぴったり嵌(は)まっていたし、2局・3局のように奇をてらったところがなくて、それでいてちょっとファンタジーっぽくて、おもしろい、と思った。
  夢:高嶋さんが、将棋盤を舐(な)めるように見つめるシーンがあるんだけど、鈴本(高嶋)の性格が、すごく出ててたような気がする。
  翔:歩き方も、カクッカクッという感じだった。(笑) それに、将棋の指し方とか奥さんとのやりとりとか、すごくこの役を楽しんでいるようで、観ているこちらまで自然と笑みが浮かんで来た。
  夢:すごく「いい人」だよね。 いい人過ぎて、三段のまま止まっている、という・・・
  翔:ここでも滝川が絡(から)んでいるのだけど、鈴本に汚い手を使ったり、氷室に「あんな人間とつきあうな」と余計なお世話をしたり、どんどんイヤな奴になって行っている。
  夢:鈴本みたいな人にまであくどいことをする、というのが、ちょっとショックだった。
  翔:氷室への偉そうな忠告は、「いったい何様?」と思ったし。 だけど、今(第8局終了時点)にして思えば、ああなるほど・・・と納得出来ます。
  夢:それにしても、滝川の奇行は、益々エスカレート。 棋盤にこぼれたワインを舐めるシーンは、背すじがゾクゾクした。
  翔:私は、原作を読んで知っていたので・・・。 それより、巨乳のお姉さんと「たまたま」一緒に食事してしまう、それを、あろうことか新聞にすっぱ抜かれてしまう、という、まったくその辺の芸能人と変わらない行状には、かなりへこまされました。
  夢:おまけに、おねえさんに勝手に部屋に入られるし。
  翔:「頼むから、滝川を生(なま)の人間にしないでくれ!」と、叫びたい気分だった。 だから、そのあとの棋盤を舐めるシーンは、溜飲(りゅういん)のさがる思いがした。 滝川は、あのぐらい「変なヤツ」じゃないといけない。
  夢:翔、もうひとつ気になる、って言ってたけど?
  翔:滝川が、千代子の店にお金を持って行った時、千代子のうしろ姿を見て、自分の母親を思い出すシーンがあるのだけど、それも、「頼むから、滝川をありふれたマザコン青年にしないでくれ!」と、叫びたかった。 でも、その後、千代子にお金を突き返されて、呆然と彼女を見送る表情が良かったから、かなり救われたけど。
  夢:翔としたら、とにかく、「滝川幸次は普通の人間じゃいけない!」と。
  翔:精神的に何かが欠けている・・・って、ちょっときつい言い方かもしれないけど、でも、そういう感じがするから。 ひとつの道を極めるために、他のものを全部犠牲にしてきた、というような。 それも、半端じゃなく。
  そういう人間が、ふと、人としての感情に触れた時の、とまどいとか、揺らぎとか、そういうものを見せて欲しいし、実際、田辺さんはそういう役づくりをしているように私には見える。 だから、周りで、あまり滝川を捏(こ)ねくり回さないで欲しいと思う。
  夢:うーん・・・・
  翔:彼を見ているだけで、十分に伝わって来るものがある。 説明的な言葉や行動は、あまりいらないんじゃないか、と思うんだけどね。 
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第5局/誘惑!愛を乞う女勝負師          
  翔:実は、この回も、好きでした。 第4局あたりからじわじわと盛り上がって、第6局で爆発した、という印象がある。
  夢:ストーリーが良かった?
  翔:と言うより、俳優vs俳優のぶつかり合いが、すごく面白かった。 前回の高嶋さんといい、今回の雛形あきこさんといい、役の掴み方が的確で、どこか普通じゃないんだけど、でも納得させられてしまう、という感じ。
  夢:雛形さんが、あんなにいい女優さんだったとは!と思わなかった?
  翔:思った。 あの、印象的なキラキラの瞳は、相当な武器だと思う。 氷室相手に指していて、「楽しい・・・将棋って、こんなに楽しいものだったのね」と言うところなど、あまりにもきれいで、見とれてしまった。
  他にも、麿赤児さん、深水三章さん、と、豪華な脇役陣で、雛形さんを頂点として出来たトライアングルが、すごくバランス良くて、楽しませてもらいました。
  夢:今回、滝川の出番が、少なかったけど。
  翔:でも、前回・今回と、滝川の少年時代が垣間見られて、興味深かった。
  夢:もうちょっと子役を選んで欲しい、と思ったけどね。(笑)
  翔:(笑)
  夢:・・・・滝川が、真由美に、岬(雛形)の父親のことを調べさせて、病の床の父親に会いに行くけれど、何の為に行ったのかなぁ。
  翔:滝川にとっても、岬の父親との対局は、すごく印象深いものだったんじゃないかな。 天空(麿)のところで岬に再会した時、見つめ返してきた瞳の鋭さに、滝川は、おぼろげに幼い彼女と出会っていたことを思い出す。 あの時、「今度は私が相手よ!」と挑んできた少女。 もしかしたら、とてつもなく強い棋士になっているかもしれない。 それを確認したかった?
  夢:そうか・・・
  翔:でも、うらぶれた病室で、瀕死の状態になりながらも、滝川を見ると将棋を指すしぐさをした、その姿に、滝川は、自分を重ねて見たりはしなかったんだろうか。
  夢:え?
  翔:まぎれもない「棋士」の末路。 一度転げ落ちてしまったら、滝川だって、ああならないとは限らない。 将棋以外に何も持たない者にとっては、最も、もしかしたら「死」よりも恐れていた姿・・・・滝川は、彼を見てしまったことで、ますます「勝つこと」に捕らわれ、縛り付けられるようになってしまったんじゃないか、という気がする。
  夢:・・・・・・・・
  翔:深読みしすぎてる?
  夢:いや、面白いよ。 あの1シーンで、そこまで読んじゃうのが。