『田辺誠一のマケドニア紀行』感想

田辺誠一マケドニア紀行』感想

マケドニア共和国・・
実は、この国がどこにあるのかも よく知らなかった私。

歴史を紐解いてみると、マケドニアのあるバルカン半島は、
さまざまな宗教や思想のぶつかり合った場所でもあったようです。
過去、この国の上を 数多くの戦いや争いが通り過ぎて行った・・

この番組は、マケドニアの観光案内でもありながら、
この国のそんな成り立ちや人々の生き方をも映しています。
もとは社会主義の国だったことも大きいかもしれないけれども、
けばけばしさとか喧噪とか棘々したところがなくて、
どこも落ち着いていて穏やかで、
自分たちの生活の営みの中で自然に旅人を受け入れてくれる・・

今の日本人の海外旅行というと、
きれいな景色を観たり、ショッピングを楽しんだり、ということが
主となっていることが多いと思うし、
もちろんマケドニアにも 風光明媚なところも名産品もあるんだけど、
何かもっと違うものを受け取ることが出来るような・・
国そのものへの理解を多少なりとも深めることが出来るような・・
そんな番組になっていたように思います。


撮影は去年の夏だったと思うのですが、
そのわずか数か月後には、
マケドニアから1000kmしか離れていないところで
二人の日本人の哀しい出来事が起こり、火種はさらに広がりつつある。

そういう時代だから、なおのこと、
マケドニアに生まれたマザーテレサが引用したキリストの言葉
「他人から何を得るかではなく何を与えられるかを考えなさい」が
とても大切な意味のあるものに思える。

「宗教というのは政治や権力と結び付けられることが多いけれども、
マケドニアの教会はすべて質素で、
純粋な祈りの場所なんだなと思いました」という田辺さんの言葉からも、
そして、
「混在する多様な文化や宗教を受け入れる寛容さは、
争いや差別の絶えない現代社会に生きる私たちに必要な精神だと
教えてくれているようです」と語るナレーションからも、
混迷を極め続ける中東に、そして世界に、
ひとつの慎ましやかな答えが提示されているような気がしました。


旅人・田辺誠一さん。
ある程度ベースになる台本はあったかもしれませんが、
気負わず自然に自分の感じたことを自分の言葉で話してくれていたようで、
すんなりとこちらの心に届くものがあって良かったです。
私は、田辺さんが以前HP(@tanave.com)に書いていた旅日記が
とても好きなのだけれど、
今回の旅の中での田辺さんの言葉が、
旅日記の文章に近いものだったように私には感じられたし、
映し出された画面の中に滲み出ていた、
何事にも寄り添って理解しようとする田辺さんの
旅に対する気構えのないナチュラルなスタンスにも好感が持てました。


田辺誠一マケドニア紀行 〜ビザンティンとオスマンの遺産を訪ねて〜』     
放送日時:2015年2月21日(土)19:00-20:55 (BSフジ)
旅人:田辺誠一 制作・ナレーション:大村尚子 
ディレクター:Yoshihiro Onodera プロデュース:西村政道 制作著作:BSフジ
『田辺誠一のマケドニア紀行』公式サイト