『斉藤さん2』(第10話=最終回)感想

『斉藤さん2』(第10話=最終回)感想
二分の一成人式」で読むはずの親への手紙を先生に添削され、
書き直しを命じられた子どもたちは、
添削前の自分たちの手紙を読ませて欲しい、と、教室に立てこもります。
しかし、大和(玉元風海人)たちレスキュー9の想いとはウラハラに、
メンバー以外の生徒たちが暴走しはじめ、
けんかしたり、ガラスを割ったり・・手に負えない状態になります。


事態を収めようと、斉藤さん(観月ありさ)がはしごをかけて
外から教室に入ろうとしますが、
「悪いことは悪いって教えてあげないと」という斉藤さんの言葉に、
摩耶(桐谷美玲)が、「子どもたちが自分で出て来るまで待とう。
聞いてあげないと、見てあげないと、じゃダメ。
あの子たちは聞いて欲しいんだよ。対等に相手して欲しいんだよ」
と訴え、結局 4年3組だけの「二分の一成人式」をやることに・・


やむにやまれず教室に立てこもる、
そこまで追い込まれてしまった子どもたちの気持ちは、
前回までの流れの中で、ある程度描かれていたわけですが、
その行動に もう少し説得力があれば、なお良かったんじゃないか、と。


ただ、立てこもりが 子どもたちの思惑通りには行かず、
思わぬ展開を招いてしまう、というところは興味深かったです。
自分たちが正しいと思って起こした行動の意味が、
同じ仲間(同級生)にさえうまく伝わらないジレンマ・・
自分が信じる正義を貫くことは、とても難しい。


立てこもりによって子どもたちが得たものは、それを知ったことと、
大人たちが、自分の間違いを正し、子どもたちと対等に接しようとする、
そういう存在であろうとし始めたこと、なんじゃないでしょうか。
斉藤さんや摩耶、玉井さん(南果歩)たち父兄もそうだし、
小杉先生(瀬戸康史)も・・


そして、この騒動で親たちが得たものは、
子どもはいつまでも親の所有物で収まっていてはくれない、
子どもの人格を認め、心を開いて、一対一として対等に向き合い、
自分が間違っていればきちんと子どもに謝らなければならない、
そのことを、身をもって知ったことなのかもしれません。


子どもであれ、大人であれ、
自分が悪いと思ったら「ごめんなさい」ときちんと謝ること・・
それは、最初から、このドラマが伝えたかった大切なことのひとつ
だったような気がします。


ひとつだけ引っ掛かったのは、
子どもたちを止めようとした時の斉藤さんの
「大人をなめんなよ。大人の力を見せつけてやる」というセリフ。
斉藤さんって、そんなこと言うような人だろうか。
その後の摩耶のセリフを引き出す呼び水の意味があったとはいえ、
何となく斉藤さんの性格やスタンスとは合わない気がして、
ちょっと残念でした。



最終回まで観終わって。
「4年生の親子問題」や「若い母親の育児」等々のテーマについては、
毎回ポイントを上手く掴んでいたように、私には思われました。
ただ、斉藤さん以外のキャラクター造形とか、
物語の流れとか、山場の見せ方とか、そのあたりが、
ところどころ大袈裟過ぎたり、上滑りしたり、チグハグだったりして、
そのせいで全体の空気感が一定せず、
気持ち良く本題に乗り切れないこともあった(あくまで私個人の印象)
のが、すごくもったいない気がしました。



出演者について。


観月ありささん(斉藤全子)
斉藤さんが、何でも出来る「スーパー斉藤さん」じゃなく、
迷ったり悩んだりすることもあったことで、親近感が湧きました。
斉藤さんという役に観月さんの温かさや明るさがうまく溶け込んでいて、
観ていてすごく安心感があったし、心地良かったです。
私が今まで観た観月さんのキャラの中で一番好きかもしれません。


南果歩さん(玉井眞美)
斉藤さんの対極としての玉井さん、
リーダーとしての人心掌握のうまさと 心の弱さのアンバランスさが絶妙で、
分かる分かる〜と思いながら観ていましたw
スカッと気持ちよく主人公にやっつけられる明快な敵役ではなく、
すぐに斉藤さんと仲良くなってしまったので、
何となくすっきりしない、という人も多いかもしれませんが、
私は、いろいろな感情を内包させている玉井さんが好きだったし、
南さんはそのあたりをすごくリアルなものとして演じていたように思いました。


酒井若菜さん(立花知佐子)
演じているのが酒井さんということもあり、
この人が玉井さん以上にトラブルメーカーになるんじゃないか、
と最初の頃は思っていたのですがw
案外すんなりと斉藤さんや摩耶に馴染んで、
以後、突出もせず穏やかに 親たちの喧騒の中にいる、という・・
実は、このあたりのポジションが、私には一番しっくり来ました。


猫背椿さん(大庭麻衣)/★音尾琢真さん(播磨大三郎)
ふたりとも上手すぎですw
途中から大庭や播磨があんまり好きになれなくなったせいで、
演じている猫背さんや音尾さんまで嫌いになりそうになってしまった。
あぶないあぶないw
最終回になって、ようやく可愛らしいと思えて、ホッとしました。


瀬戸康史(小杉大造)
中盤から演じ方に落ち着きが出て、
観ていて不安定な感じがしなくなりました。
こういう役も出来るんだなぁ。案外振り幅が広いのかもしれない。
今後も興味を持って観続けたい俳優さん。
可愛らしい顔立ちなので、不利なところもあるかもしれないけれど、
今後は、(同じくベビーフェイスの)小池徹平くんみたいに、
徐々に大人の役がつくようになって欲しいです。


★きたろう(教頭)
最後の表情が素晴らしかったなぁ。
日和見な教頭だったけど、結局はいい人でよかった。
ちょこっとしか出てこなかったけど、
こういう役をやらせたら間違いない、という安定感がありましたね。


勝村政信(岩田巡査)
難しい役だったですね。
頼りなくていつも逃げ腰なんだけど、
巡査としての仕事に誇りを持っていて、やる時はやるんだ、というところを、
何か具体的なエピソードで見せて欲しかった気がしていましたが、
今回、「私はいつもあなたたちを見ている」と言って、
高校生たちの先生の誤解を解いてやった、というところで、
やっと少し納得出来た気がします。


千葉雅子さん(横田睦美
逆に、最初はどうなっちゃうんだろうと思っていたら、
終盤に何とな〜くキャラが出来上がって来たのが、この人と、
間谷文明を演じた金替康博さん。
キャラとしてのバックボーンが見えて来たからでしょうか。


ん〜、こうして考えると、コメディって本当に難しいんだな、
(笑いの配分と質が大事)、と思う。


桐谷美玲さん(山内摩耶)
最初は、この人が斉藤さんと出逢って成長して行く、
というのがドラマの芯になるのかなぁ、と思ったら、
早い段階で斉藤さんに感化され、
以後、彼女の言動によって事態が収集することもしばしばで、
なかなかしっかりしたキャラになっていたのが印象的でした。


金星の姫(@荒川アンダーザブリッジ)を観て思ったのですが、
桐谷さんには、ファンタジーが似合う気がします。
今回はコメディでしたけど、ファンタジー系の役もまた観たいです。


田辺誠一さん(山内弘高)
出番はあまりなかったのですが、
摩耶が案外しっかりしていると感じられたのは、
この人が夫だったせいもあるのかな、なんてことも、ちょっと思いました。
そのあたり、年の差夫婦という設定にも意味があった、ということでしょうか。
前にも書きましたが、
出来れば、摩耶と弘高の出逢いのシーンを、回想で入れて欲しかった。
弘高が摩耶のどこに惚れたのか、というあたりを知りたかったです。


ともあれ、こういう役もまったく違和感なく、
ますます役の幅は広がって、ワキとしての独特の存在感を増して行く。
次回の出演は『夫のカノジョ』。
コメディにも しっくり馴染む40代、需要は多い、ということでしょうか。



そういうのもいいけど、違ったキャラも味わいたい、と思っていたら、
2時間ドラマ『淋しい狩人』で刑事役をしっかりこなしていました。
はい、喜んでゴチになりますw ・・ということで、次回の感想はこれで。



『斉藤さん2』
放送日時:7月13日より 毎週土曜 21:00- 日本テレビ
脚本:土田英生/演出:久保田みつる/原作:小田ゆうあ「斉藤さん」
キャスト:観月ありさ桐谷美玲 田辺誠一 瀬戸康史
猫背椿 音尾琢真酒井若菜松岡茉優 岡山智樹 早見あかり
橋本涼(ジャニーズJr.) 玉元風海人(ジャニーズJr.) 谷端奏人
勝村政信 きたろう/南果歩  他 

『斉藤さん2』公式サイト