『37歳で医者になった僕』(第8話)感想

第1~7話の感想は、最終回の感想の後に載せています。

37歳で医者になった僕』(第8話)感想
毎回、何かしら心に響くものがあるドラマですが、
今回のエピソードは特に、身につまされました。
歳を取って行くことで失ってしまうものが間違いなくある。
その寂しさ、くやしさ、むなしさ、を、どう受け入れて行けばいいのか・・
頑固者の伊達(竜雷太)を、若い下田(八乙女光)が懸命に助けようとし、
その下田をさりげなくフォローするように、紺野佑太(草彅剛草なぎ剛が、
(もう若くない)37歳の目線で伊達に接していたのが、
とても印象的でした。

 

医療ドラマというと、普通、外科が舞台になることが多く、
派手な大手術、なんていう‘見所’を作れない内科のドラマは、
面白味に欠けるんじゃないか、などと最初は思っていたのですが、
ひとりひとりの患者の気持ちを丁寧に追い、
医者それぞれがそれぞれの感情を持って接する・・
人間がやることだから、そこには間違いも失敗もあるけれど、
医者と患者がしっかり向き合うことで、
より正しく病気に立ち向かう姿勢が出来上がって行く・・
地味ではあるけれど、非常に伝わるものの多いドラマだな、と思いました。

 

これで、佑太の立ち位置が定まってくれるといいのだけど、
どうやら、そう簡単には事が進みそうもなく・・

佐伯(松平健)の恩師である伊達の急変の裏で、
これまであちこちに張られていた伏線が、
ラスト数分、一気に表面に浮き上がって来た時には、
思わず「えーっ!?」と声を出すほどびっくりしてしまった。
森下准教授(田辺誠一)〜、あなたはいったい何考えてるんだー!

 

・・でも、きっとこれは、
「善い人間」VS「悪い人間」などという単純な話じゃない気がする。
誰が正しくて、誰が間違っているか、なんて、簡単には線引き出来ない。
誰にも その人なりの夢があり、誰にも その人なりの正義があり、
誰にも その人なりの名分(めいぶん)があるから。

 

佐伯を観ていて、ふと、『空飛ぶタイヤ』の狩野(國村準)を思い出しました。
狩野がそうだったように、佐伯もまた悪役とは言い切れない気がするのは
なぜでしょうか。

 

病院を存続させるためには、
より高い医療技術を提供すると同時に、順当な利益を得なければならない。
大病院になれば、医者同士の政治的な駆け引きも必要になる。
佑太のようにきれいごとばかり言っていては、
実際問題として、病院の経営は成り立たない。
今までの医療ドラマは、利益の追求や政治的駆け引きを
「悪」とみなすことが多かったように思うけれど、
医療現場を取り巻く環境を考える時、
実はそのどちらも大切な問題なのは確かで。
このドラマは、それを、
より俯瞰的(ふかんてき)に捉えようとしている気がしてなりません。

良くも悪くもKY(空気読めない)で、
決して正しい選択だけをしているわけではない佑太が・・
すでに医者としての確固たる意志を持つ沢村瑞希水川あさみ)が・・
そこにどんな形で絡んで行くのか・・が、大いに楽しみです。

 

さて、田辺誠一さん。
森下准教授、ここに来て一気に暗躍開始!ですね。
うわ〜、そう来たか!って驚かされると同時に、
瑞希と話す横顔を見ていて、不謹慎にも惹かれてしまった。

森下って、良きアドバイザーに終始した藤田みたいな役なんだろう、
(@ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
と決め込んでたんですが、
いやいや、そんな生易(なまやさ)しい人間じゃなかったですわ!w

 

一気にボスキャラの空気さえ漂うようになった森下ですが、
田辺さんが「いかにもワル」という演技をしていないのが逆にそそられます。
そこに何があるのか・・その意味は何なのか・・
今のところ明らかにはなっていませんが、
おそらく森下は、清濁併せ呑むような人なんじゃないか・・
沢田(@空飛ぶタイヤ)や清川(@ジーンワルツ)なんかより
ずっと‘大人’なんじゃないか・・という気がするし、
今まで巡って来そうでなかなか巡って来なかったそういう役を、
田辺さんが今後どんなふうに演じてくれるのか、
それを観るのもまた楽しみです。