『五右衛門ロック』感想

五右衛門ロック』(DVD)感想
『鋼鉄番長』の予習もかねて、
IZO』に引き続き『五右衛門ロック』をDVD鑑賞。
ここんとこ新感線にどっぷり浸かってます。


さて『五右衛門ロック』。
無駄なシーン、ゆるいシーンがまったくなく、
新宿コマ劇場の広〜い半円形のステージを目一杯使って、
3時間あまり、出演者全員がノンストップで走り続け、
魅力をふりまき続けた!という印象を受けました。

中でも、主役・古田新太さんは、最初の1時間近くを出ずっぱりで、
重そうな衣装と重そうなかつらで、ひたすら殺陣のし通しで、
観ていてこっちが酸欠になりそうなぐらい、
本当によく動いていました。


他の出演者の役の嵌まり具合も半端ではなく、
あたりまえですが、特に劇団員の皆さんは、
新感線の舞台慣れしているなぁ、と。
だって、どんな役の人でも安心感があって、
いちいち納得させられてしまうんだもん、観ていてw。
橋本じゅんさんや粟根まことさんは磐石だし、
前田悟さんや川原正嗣さんの殺陣はかっこいいし、
そしてそして、今回は何と言っても高田聖子さんに惚れました!
好きだわ〜、ああいう役も、ああいう演じ方も♪
(『鋼鉄番長』が楽しみだ〜)


客演の皆さんも、本当によくついて行ってるなぁ、と。
北大路欣也さんの存在感はさすが!
この人の持つスケールの大きさが、
そのまま、このお芝居の奥行きの深さに繋がったように思います。

松雪泰子さんも、よく動いて歌ってましたね〜。
こういう役をやらせると本当に魅力的で惚れ惚れします。

濱田マリさんや川平慈英さんもよかった。
川平さんは、ああいう うっとうしいぐらい騒々しい役がピッタリ。
(褒めてますw)


江口洋介さんは、最初ちょっと浮いてる感じがしたけど、
ギター侍あたりから急速に場に溶け込んで、
(あのシーンの強引な展開は、思い出すたび笑えるw)
最後には、ルパン三世を追いかける銭形警部のごとく、
古田さんとの追いつ追われつ、でもどこかに共感抱いてる、
みたいな、いい雰囲気になってました。


森山未來くんを観ると、いつも、
どこか人に馴染み切れないところがあるように感じられます。
ポーンと思い切りよく前に飛び出せなくて、
周りから、ほら前に出なさいよ、と言われて、ようやく少しだけ出る、
みたいな。(そこが私は好きなんですが)
だけど、そういうところが、今回の、
ちょっとハムレット色が入ったような孤独な王子役にはぴったりだったし、
人に馴染めずにいる歯がゆさを、
踊ることで粉々に砕いてしまおう!と思ってでもいるような、
ダンスへの気持ちの注入の仕方には、すごく惹かれるものがありました。
(この人が以蔵@龍馬伝をやったらどんなだっただろう・・とふと思った)


森山くんに限らず、この舞台では、
出演者各々が、自分の持ってるエンタテインメントな才能を
出し切っている・・というか、
いのうえさんに、すべて引っ張り出させられている、というかw
歌える人、踊れる人、殺陣の出来る人、
タップの出来る人から、ギターの弾ける人まで(爆)
とにかく出来ることはみんなやってもらいましょう、という、
ショー的要素もたっぷりで、いかにも新宿コマ、って感じ・・
ってのは こじつけかもしれないけどw
でも、観ている側としては、お得感いっぱい、おなか満杯、
もうこれ以上な〜んにも食べられません〜状態。


で、これはもう、基本チャンバラごっこなので(暴言多謝)
物語自体に確たる芯はなく、
観終わった後に、何かしらの人生訓を得る、
なんてシロモノではないのだけど、
それでも、沈む島と運命を共にしようとする人たちには、
何だかじ〜んとさせられもして。


3時間あまり、ロックの激しい音楽と、ノンストップアクションとを、
息つくヒマもないほどたっぷりと浴びせられて、
楽しんで楽しんで、ちょっとほろりとして、
最後に頭に浮かんだのは・・



「一期は夢よ ただ狂え」 という閑吟集の一節でした。


何ともなやのう 何ともなやのう うき世は風波の一葉よ
何ともなやのう 何ともなやのう 人生七十古来稀なり
ただ何事もかごとも 夢幻や水の泡
笹の葉に置く露の間に あじきなき世や
夢幻や 南無三宝
くすむ人は見られぬ 夢の夢の夢の世を うつつ顔して
何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ


閑吟集 小歌>