『あべ一座 旗揚げ公演〜あべ上がりの夜空に』感想

『あべ一座 旗揚げ公演〜あべ上がりの夜空に』感想
う〜ん、これはねぇ、ライブで観ちゃった人の勝ち!ですね。
たとえ3階の一番てっぺんの席で、
ステージの人が豆粒のようにしか見えなくても、
あの空気の中にいた、という体験は、何にも代えがたいもの。
収録の半分は削られた、なんてことを聞くと、なおさら、
本当に、自分が あのホールにいなかったことが、
悔しくてしょうがない!w
(削られた分も含めて、DVD化、切に希望!!)


とはいえ、さすがはクドカン
普段のキャパ(本多劇場)の7倍という、どでかいNHKホールにも関わらず
満員のお客さんをしっかり味方に引き入れてのお祭り騒ぎは、
TVのこちら側から観ていても、十分楽しめるものになっていました。
阿波踊りを観覧席で観てるみたいな気分、と言ったらいいかw。


全体を観て感じたのは、
歌の力、音楽の力というのは大きいなぁ、ということ。
これだけの大ホールになると、
正直、お芝居では、細かいニュアンスが伝わらないんじゃないかと思うけど
例えば、オープニングで出演者がメドレーで歌ったり、
あべ静江さんが「みずいろの手紙」を歌ったり、
みんなでサンバを歌ったりすると、一気にあの広い空間が満たされる、
それはやはり、音楽の力の凄さなんじゃないかと思います。


じゃあ、芝居はまったく歯が立たないのか、というと、そんなことはない。
台詞自体の面白さ、演者の動きで、3000人を笑わすことが出来る。
そう・・・「笑わす」。
確かに、この大きなステージでは、
真面目な芝居をして登場人物の繊細な心の機微(きび)を伝えるのは
難しいかもしれないけれど、
「お笑い」なら、音楽のように、ストレートに伝わるものがある・・
ような気がするw。


カメラは、音楽の楽しさや、お笑い芝居の楽しさを、
3000人の熱気やワクワク感と一緒に、
TVのこちら側で観てる私たちに、伝えてくれる。
それは確かに、ライブの感動に勝るものではないかもしれないけれど、
一人一人の細かな表情や動きを、きっちりと拾ってみせることで、
TVを観てる私たちに、
ライブで観た人たちとは違う喜びや楽しさを、運んでくれる。

舞台も、TVも、数多くこなして来たクドカンの、
そのあたりは、天性の勘、とでも言おうか、
観客も、視聴者も、どっちも楽しませちゃえ!というサービス精神というかw
だから、音楽だけでなく、芝居だけでなく、観客参加番組だけでもない、
「歌謡バラエティショー」になったのかなぁ、なんてことを思ったり。


こういう 思い切ったバクチを打ってる作品には、
全身火の玉小僧wみたいな、阿部サダヲという存在は、必要不可欠で。
歌って良し!踊って良し!芝居して良し!素人をいじって良し!
この人に怖いものは何にもないんじゃないか、と思えるほど、縦横無尽!!
この「あべ一座」は、当然、
阿部サダヲがいなかったら生まれてなかっただろう、と、
誰にもそう納得させてしまうだけの、見事な千両役者ぶり、でありました。
満員のNHKホール、3000人収容の舞台に負けてない・・どころか、
きっちりと舞台を背負って立って、ほんっとに かっこよかったです。


メインとなったふたつの芝居(コント?)は、
たとえば『七人の恋人』などのクドカン脚本・演出の舞台を知ってる人には
お馴染みのカラーで、これがまさにクドカン、とも言えるんだけど、
木更津キャッツアイ』や『流星の絆』等の脚本家、としての宮藤官九郎
しか知らない人は、ビックリしたかも。(特に『ABBE』w)


『あべ一家のなんでもない一日』は、
もちろん阿部サダヲが中心なんだけど、
あべ静江や、阿部力や、阿部渉アナウンサーや、他の出演者が、
NHKっぽく、適度に上品に、いい感じで絡んでました。


そんな中、いちいち美味しいところをさらって行くのは、
我らが田辺誠一で。
いやもう、すっかりコメディアンですね!(爆)
だけど、やっぱり、真ん中には俳優としての芯がしっかりあって。
ハゲヅラ・パッチ姿の田辺のじいさんが、ファンの間で人気があるのは、
じいさんとしての気骨と品があるからだ、と思うんだけど・・
私、眼が曇ってる??(爆)
・・いーの!ファンの欲目だと どーぞ笑って!w


阿部寛がまたいい味出していましたねー!
浮浪者風 阿部寛と、ハゲヅラ・ハラマキの田辺誠一が、
ステージの真ん中で相撲を取る、なんて、
クドカンでもなけりゃ思いつかないし、
万が一思いついたとしても、やって下さいとは言えないよね、怖くてw。
でも、メンノン出身の二人には抵抗なかったみたいで。
ちゃんと真面目に(?)絡んでたのがおかしかったですw。


あと、田辺じいさんの孫の誠一も好きだったな。
キャラが私好みだったし、阿部サダヲとの絡みがあったから。
オープニングで「あべじゃない人が混じってる」ってサダヲに突っ込まれ、
「こんにちは〜」ってフワッと返した時もそうだけど、
基本的に、私は「突っ込むサダヲと、それを変化球で返す田辺」
のやりとりが大好きなのでw。
しかも、誠一、余裕でサラッと返してるし。えらい進歩じゃないかw。


ひょっとすると、田辺誠一は、阿部サダヲの天敵なんじゃないか、と思う。
『ABBE』のあべこうじのように丁々発止とは行かない、
天才サダヲのペースを乱すことの出来る、数少ないアクターの一人
なんじゃないか、と。(いや、あくまで妄想)

ああもうっ!この二人をメインに1時間コントやってくれ!ってぐらい、
サダヲ×誠一コンビの醸し出す空気が大好きだっ!!
・・・・う〜!あ〜!・・・・(すみません、妄想の世界に跳んでますw)


―――まぁとにかく、1時間半、本当に楽しかったです。
フィナーレの歌(宮藤官九郎作詞:阿部義晴作曲)も素晴らしかったし。
その歌の中でも突っ込まれて、ジタバタしてた田辺誠一
つやつやほっぺとピンクのシャツが可愛かった。w


「旗揚げ公演」なら、次もあるんでしょうか。
ぜひぜひ続編をお願いしたいもんです。
宮藤さん、その時にはまた、サダヲ×誠一をひとつよろしく!(爆)


(文中思いっきり敬称略しっぱなしですみませんw)


                            thanks to M


      **


田辺誠一さん、今は、しばしの休息中、でしょうか。
来年公開の映画(詳細は来年発表)に続き、
10月からは、連続ドラマに出る、という情報もあります。
ファンにとっては、また楽しい日々が始まりますが・・
今年は本当に休みなしですね。