以下は、BBSに載せた『瑠璃の島SP 2007~初恋』の感想です。
今年もよろしくお願い致します 投稿日:2007年 1月15日(月)
実は、ちょっと、重い内容のドラマを観る元気がなくて、
ずっと観ないままだったのですが、
今日は、久しぶりに仕事が休み、ということもあって、ようやく先ほど観ました。
いや、これがねぇ、私には、ズンズン響く内容でした!
脚本は、寺田敏雄さん。
『R-17』の脚本を手がけた人でもあります。
あの時も、今回も、田辺さんが演じた役としては好きじゃないんだけど、
でも、どちらも、
「魂が漂流している感じ」を田辺さんに託してくれようとした、
偶然じゃなく、どちらも田辺さんに演じさせたい(田辺さんでなければならない)
と思ってくれた、と考えると、
そこに何か、私が考える「俳優・田辺誠一像」の断面みたいなものも
浮かび上がって来るような気もするのです。
もちろん、それはただ、
いつものように、私個人の夢想癖の産物に過ぎないのかもしれませんが。(笑)
『瑠璃の島スペシャル2007~初恋』(物語編) 投稿日: 1月19日(金)
欲張っていろいろな要素を詰め込みすぎて、
全体として薄くて軽い印象になってしまった感は否めなかったけれど、
少なくとも、離島ゆえの問題点や、そこに生きることの意味、という部分は、
しっかりと掘り下げて描こうとしていた気がする。
ゴミ処理施設の建設問題が持ち上がった時、
自分の土地を提供したいと申し出たカマドおばぁ(吉田妙子)は言った、
「自分たちはお国に要求ばかりしている。自分たちがお国に出来ることはないのか」と。
多くの身近な人々を戦争で失ったであろうおばぁの言葉だからこそ、
そこに刻まれた深い想いが、胸に刺さる。
「国のために」と言って死んでいった人々の犠牲の上に建つ平和なこの国で、
今、自分たちは、何かを誰かに与えてもらうことばかりを
考えるようになってはいないか。
国や人との繋がりも、自然との繋がりも、どんどん希薄に、あるいは貪欲になって行く。
人のために出来ること、自然のために出来ること、を、
みんなが、何かを欲するよりもほんの少しだけ多く考えることが出来たら、
きっと、もっとずっと幸せになれるはずなのに。
宮原聖一郎(田辺誠一)・詩音(神木隆之介)親子については、
正直、脚本や演出の段階で、くっきりと描き切れていなかった感があった。
さなえ先生(小西真奈美)が詩音に言う
「きみはきみ自身の未来を考えていいんだよ」という言葉は、
この親子にとって深い意味を持つ。
その大きな結論に辿り着くまでに詩音が越えなければならなかった父親との葛藤が、
もっともっと重く深く鮮明であったら、
その言葉に込められた意味が、さらに確実にストレートに伝わったのではないか。
父親の弱さや矛盾やエゴと正面からぶつかってしまった詩音が、
ついに島を出て行こうと決断する、その必然性が弱く、
孤独な詩音と、島の開発をめぐって傷ついた瑠璃(成海璃子)の心が惹かれ合う、
という大事なシーンも、強くこちらの心には響かない。
だから、「初恋」というメインタイトルも、どこかぼやけてしまった感じがする。
生徒を自殺に追い込んでしまった、という傷を抱えた宮原が、
何を求めてこの島にやって来たのか、
真剣に悩み、考え、行動した結果としての移住ではなく、
どこか、逃げ場を探して、後ろ向きな気持ちでやって来たことは、すぐに読み取れる。
彼は、言うことも、やることも、ことごとく薄っぺらで、建前の域を出ない。
けれども、すべてを「ちゃんと見ていない」「ちゃんと受け取らない」ことで、
自分自身の心の傷の痛みを、何とかしてやわらげようとしているようにも思える。
そういうふうにしか、自分を救ってやれない人間のようにも見える。
しかし、どう言い繕ってみても、
それは結局、他人から見れば「逃げている」に過ぎない。
彼が、短い島の生活で何を得たのか、の答えを探すのは難しい。
都会に戻っても、同じような間違いを犯す可能性だってある。
それでも彼は生きて行かなければならない。
しかも、彼にはもう逃げ場はないのだ。
夢のように美しい、自然豊かな小さな島(=理想郷)にも、
人々の暮らしはちゃんとあって、
相手をちゃんと見つめて、相手からちゃんと受け取って、そして相手にちゃんと与えて、
そういう「見えない襷(たすき)」を繋いで生きているのだ、
ということを知ってしまったから。
けれども、また、それを知ってしまったことこそが、宮原の糧になって行くのだろう。
それは、他人から見れば、ほんのちっぽけな変化でしかないのかもしれないけれど。
さなえ先生から受け取った襷に、自分の汗を染み込ませて、宮原は息子に託す。
そうして「想い」は繋がって行く。
「また強くて優しい父さんになってくれるって信じてるから、僕の夢も信じてよ」
息子・詩音の、この言葉に込められた想いは深い。
「ここは、そんなに特別な島なんだろうか」と、瑠璃の里親(緒形拳)は言う。
都会であれ、島であれ、そこが自分にとって宝物だと信じること。
その場所と、そこに住む人たちを、宝物のように愛すること。
―――自然豊かな<瑠璃の島>は、はからずも、
「人間にとって、環境こそが一番大切なのだろうか」
というひとつの問いかけをしているようにも思えた。
(俳優編) 投稿日:2007年 1月19日(金)
☆瑠璃/成海璃子
眼に独特の強さがあって、すごく魅力的。
今どきの若い女優さんにはめずらしく、ダイナミックな雰囲気を持っているので、
その魅力を壊さないよう、急がないでじっくり育てて欲しいなぁ、と思う。
☆詩音/神木隆之介
父親役の田辺さんとは、それほど違和感を感じなかったのだけれど、
瑠璃役の成海さんと並ぶと、いかにも線が細くて、
いい演技をしているのに、こちらにガツンとぶつかって来るものが弱くて、
すごくもったいない感じがした。
わがままを言わせてもらえば、成海璃子さんは今のまま、
1~2年後の神木くんに、同じ役を演じて欲しかった、という気がする。
☆瑠璃の里親/緒形拳
本当にいつもいいポジションにいるなぁ、と思う。(笑)
未熟な人間を脇からそっと嫌味なく支える感じが、なんとも大好き。
余談になるけれど、終盤、宮原役の田辺さんと並んで話しているシーンで、
勝手に感無量になってウルウルしてしまったことを告白しておきます。(笑)
☆宮原/田辺誠一
シリアスはシリアスなりに、コメディはコメディなりに、
このところずっと「強さ」が感じられる役が続いていた田辺さんが、
久しぶりに「彷徨(さまよ)ったまま着地点を見つけられない」役を演じていた。
『ベルナのしっぽ』で、あれだけ揺るぎない父親像を作り上げた後に、
宮原のような、性根のすわっていないどうしようもない父親を演じてしまうところが、
田辺誠一の面白いところなんだよなぁ、
そこもまた、どうしようもなく好きなんだよなぁ、
と、へそまがりの翔は思ふ。(笑)
それにしても‥‥
神木くんと親子、というのが、まったく違和感なくて、びっくり。
そうかぁ、田辺さんもついに中学生の父親かぁ!
で、いきなりこんな難しい親子関係に突入しちゃうのかぁ!
いや、好きだけどね、彼の父親役。
今回みたいにへタレな親でも、というか、
こういう役こそ、彼の真骨頂だろう、とさえ思う。
なんだか、どんどん、私の大好きな「田辺誠一の切なさ、痛々しさ」が、
より人間味を帯びて迫って来ているような‥
どんどん、私の大好きな「田辺誠一のかっこよさ」が、
より中身を深めて来ているような‥
そうして――私は、また、強引に納得させられてしまうのだ、
過去の いつどこ よりも、今の田辺誠一が、一番じゃないか、と。
こうなると、ますます、小学生の娘相手に、甘々なお父さん、ってのも
観てみたい!と思ってしまう。
もっとも、そういう役をやる俳優さんは、他にいくらでもいるんだろうけれど。(笑)
このドラマには、
田辺さんが今まで共演した俳優さんがたくさん出演されていた。
緒形さん(あつもの)を始め、岸部一徳さん(夢のカリフォルニア・ラブドガン)、
塩見三省さん(走れノボセモン!・さよなら、クロ)、平泉成さん(大奥~華の乱)、
市毛良枝さん(ベルナのしっぽ)‥‥
田辺さんも、俳優として15年近いキャリアになる。
いろいろな俳優さんから、たくさんのものを受け取っているんだろうなぁ、
そしてきっと、ちゃんと別な何かを、彼らに、ではなくとも、
誰かに、返しているんだろうな、
と、改めて思う。