『恋の門』感想:1

 『恋の門』観てまいりました。
何だかねぇ・・・またも「松尾スズキ」にやられてしまいましたよ。
『熊沢パンキース』の五十嵐みたいに、
やばい、やばい、と思いながら、
いつのまにか「滝さんワールド」に引き込まれてる、というか、
パンキースのメンバーみたいに、
俺死ぬかも、と思いながら、ついつい滝さんに入れ込んじゃう、というか、
何か、力づくで、「何もかも捨てて、あなたに付いて行きます!」
と言わされちゃうみたいな、
そういう、磁力みたいなものが、松尾スズキにはある。
そう、たぶん、
パンキースでクドカン宮藤官九郎)が描いてみせた「滝」は、
松尾スズキその人、の、ある種のカリスマ性みたいなものを、
ものの見事に具現化していたんだ。

 

で、『恋の門』。
とびきり上等のナンセンス、ではあるんだけど、
その中を貫いてるのは、ものすごく繊細な「痛みやすく傷つきやすい心」
だったりする。

誰も彼も、ちっぽけな自分の世界を壊せないでもがく。壊したいとあがく。
だけど、そうやって行くうちに、
人と交われない「自分だけの世界」にも、
ちゃんと「真実」が存在していることを知る。
その、壊して行く過程と、壊されずに残った「もの」の正体とを、
何でもあり、の、ごった煮ナンセンス、問答無用の力技(ちからわざ)、
の中に、ごくごく控え目に、さりげなく描いてみせる、その繊細さに、
気づいたら、何だか眩暈がしそうなほど、
松尾スズキへの「絶対の信頼」が、
さらに加速してしまってる自分がいました。

 

余談。
松田龍平くん。今までどうも好きになれなかったんだけど、
今回は、すごーーく良かった。
彼が松田優作の子供なのだということを、これほど証明してみせた役を、
私は他に知らない。

 

そして。
ブラボー!平泉成大竹しのぶ
ブラボー!尾美としのり小島聖

 

あ、田辺誠一さんを忘れてた。(笑)
うん、田辺さんも良かった。でも、出来るなら、
コミケの会場か、魑魅魍魎の棲む門のアパートでお会いしたかった、
ってのが、正直な気持ち。
せっかく松尾スズキにいじられるんなら、
とことんいじられて欲しかったなぁ、と。(爆)