恋人はスナイパー(talk)

2001・10・11放送(テレビ朝日系)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

  夢:これを観た時、翔とも話したんだけど、日本でもこういうドラマを作れるようになったんだ、という、喜びというか感動というか、そういうものがあったよね。
  翔:スナイパー・王役の内村光良さん(ウッチャン)、刑事・きなこ役の水野美紀さん、このふたりが、スタントなしでアクションシーンを撮る、と聞いた時は、どうなることか、と思ったけど、これほど本格的なワイヤーアクションが観られるとは思わなかったし、ウッチャンが身体の利(き)く人なのは知っていたけど、水野さんがこれだけ動けるとは、正直思っていなかったから、びっくりした。
  夢:水野さん、ものすごく魅力的だった。
  翔:本当に! もう、あの水野さんを観られただけで、満足している自分がいました。(笑)
  夢:ウッチャンも、普段の気の弱そうな感じと、銃を構えた時の冷静な感じのギャップがすごくて。
  翔:それが、無理に替えているんじゃなくて、すごく自然に使い分けていて、「あ、うまいなぁ」 と。
  夢:ただ、ふたりの熱演は別として、スナイパーというのが、今の日本にそぐわない・・現実的じゃない・・という気もしたし、母を捜して何千里、みたいな お涙頂戴も、中国でオリンピック選手として育てられた、という過去も、正直、あたしは、「うーん・・」という部分があったんだけど。
  翔:そうだね、私も最初観た時、そういう気持ちがあった。 でも、今回観直して思ったんだけど、始めに「ウッチャン・水野コンビでアクションドラマを作りたい」というところからスタートしたわけだから、そこからふたりの状況設定をして行った時に、こういう形になった、というのは、まぁ、それほど無茶な発想ではなかったんじゃないか、と。
  夢:まあね、王が養成所から脱走した理由というのが、オリンピック開催が名古屋じゃなくなったから、なんて、うまいなと思ったけど。
  翔:母を訪ねて、というあたりも、日本内で育てられたなら、そういう感情は育たなかったかもしれないけれど、中国で生まれ育った、ということで、家族を思う気持ちの強さ、のようなものが、すんなり納得出来たし。
  夢:ああ、そうか。 その辺は、やっぱり君塚良一脚本のうまさ、かな。
  翔:それはすごく感じる。 王やきなこだけじゃなく、田辺さんがやった船木国際捜査二課長にしても、きなこの家族(いかりや長介赤座美代子ら)にしても、王の母親(八千草薫)にしても、「その環境にいる理由」というのが、きっちりと描かれていて、無理なく、その性格や行動に納得が行ったし。
  夢:ああ、うん。
  翔:その人らしさ、みたいなものを表現するのに、くどくど説明しないで、ちょっとしたセリフとか動きとかで理解させてしまう、みたいな。
  夢:うんうん。
  翔:あと、人の居場所を描くのがうまいな、と。
  夢:?
  翔:君塚さんで刑事ものと言うと、『踊る大捜査線』が思い浮かぶんだけど、今回も『踊る・・』の時みたいにモブシーンがふんだんに使われていて、特に捜査二課周辺のゴタゴタした感じというのが、すごくリアルだった。
  夢:きなこの家も、ちゃぶ台をぐるっと囲んで座ってたり、物干し場もごちゃっとしたとこにあったりして、すごく居心地良さそうだったよね。
  翔:その辺は、君塚さんだけじゃなく、演出の羽住さんのうまさでもあるのかもしれないけど。
  夢:あの独特のスピード感、みたいなものも、『踊る・・』ファンには懐かしい、という気もした。
  翔:緩急の使い分け、みたいなところね。 どうしても『踊る・・』と重ねてしまうけれど。
  夢:音楽も松本晃彦さんだし?
  翔:音楽、良かった・・・さすが、という感じだった。
★    ★    ★
  夢:『踊る・・』で思い出したけど、翔、船木捜査二課長を観て、「『踊る・・』のユースケ・サンタマリアのその後、という感じがした」とBBSに書いてたけど?(笑)
  翔:ユースケさんの役って、警視庁のお偉いさんの息子で、エリートで、でも、そういうのをちっとも鼻にかけてなくて、素直に青島刑事(織田裕二)に傾倒していて・・・・あのイヤミのなさ、というか、七光りをしっかり利用しつつ、すくすく成長している感じというか、が、何となく、今回の船木さんと重なったので。(笑)
  夢:田辺さん、無理なくヒューマンな感じがしたんだけど。
  翔:無理なく・・ね。(笑)  
  どう言ったらいいか分からないんだけど、以前は、距離を置いて役を見つめ、その上で役に斬り込んで行く、みたいなところがあったような気がするんだけど、最近、もっと違う・・・役の中に自然に入り込んで、「役の型」にすんなり自分を変化させる、って言ったらいいのかな、そういう「弾力性」みたいなものを感じるようになった・・・と、こんなこと考えてるの、また、私だけかもしれないんだけど。(笑)
  夢:あ、でも、なんとなく分かるような気がする。
  翔:そもそも、この船木課長が、「なんにも背負っていない人間」として描かれているせいもあるんだけど、苦悩も翳(かげ)りもない人間を、そういうものとして、すんなりと演じている(あるいはそう見せている)・・・その、肩から力が抜けた自然さ、気負いのなさ、みたいなものを感じた時、何とも言えない感慨があった。    
  夢:・・・・・・・・
  翔:船木さんは、きなこにプロポーズしている、ということになってるけど、きれいな奥さんと、ちっちゃなかわいいひとり娘がいて、新しいマンションかなんかに住んでいる・・・・という設定でも、まったく無理がない、と思ったし。 田辺さんの背景に、家庭的な雰囲気を初めて感じた、と言うか。
  夢:あ、翔、それも最初から言ってたね。
  翔:周りに家族がいる風景、というのが、すんなり思い浮かべられる、そういう、ほのぼのとした温かさ、その人間の背景に広がるやさしさ、みたいなものを、田辺さんの演技から味わえたことが、ひょっとしたら、このドラマの最大の収穫だったかな、という気がする。
  夢:うーん・・・なるほど。
  翔:もっとも、そういう感じは『からくり事件帖』でも薄々あって(と、少なくとも私はそう感じていて)、だから逆に、あの兵四郎に納得行かなかった、という、皮肉な部分もあるわけで。
  夢:ほのぼのやさしすぎて?
  翔:そう。 兵四郎には、その部分は少なくてよかった。 まったくなくても困るけど。
  夢:・・・・うん。
  翔:むしろ、怒りや熱さが、もっともっと出てきても良かったのに・・・と、まだ引きずっていますが。(苦笑)
  夢:船木課長だからOKだった、ということも言えるわけだよね。
  翔:そうだね。