激しい季節(talk)

1998・8・1公開
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

  夢:翔は、さっきから言葉がないね。
  翔:・・・・・何か言わなきゃいけない?
  夢:そんなに、突き放さないで~!
  翔:だって、私は・・・私は・・・・・「バイオレンスが、大ーーーーっ嫌い!」 なんだよぉ!
  夢:という事で、それでは皆さんさようなら。・・・ってわけに行かないでしょうが、翔ってば!
  翔:・・・・・正直に言います。このビデオ、今までの中で、一番観るのが辛(つら)かった・・・です。
  夢:そう? どこがそんなに嫌だったの?
  翔:暴力・暴行・強姦etc、すべてひっくるめた「VIOLENCE(バイオレンス)」って奴が、私は大嫌いなの!
  夢:でも、普通のサラリーマン(田辺誠一)が、ヤクザの組長の女(高橋理奈)に手を出して・・・っていう、大まかなストーリーは 分かってた訳だから、多少バイオレンスが入っちゃうのは、覚悟の上、だったんじゃない?
  翔:そりゃあ、ね。 だけど、そういう意味では、『BLUES HARP』の方が、覚悟が出来ていた。
  夢:ああ、なるほど。
  翔:『BLUES HARP』がソフトだったから、多分こっちも、という油断があったのも確かなんだけど。
  夢:あたしも、基本的には暴力反対ですが、翔ほど嫌悪感がなかったけど。 田辺さんが出てたせいかなぁ?
  翔:あのね、私だって、何が何でもバイオレンスを入れるな、と言うほど、頭は硬くないつもりだよ。 だけど、この映画で、傷つかなかったのは、結局、井上英樹(田辺)だけ、なんだよね。 一番問題起こした張本人が、精神的にも肉体的にも何の傷も負わないって、なんか納得出来ないと思わない?
  夢:確かに、最初から最後まで、きれいなままだったよね、そう言えば。
  翔:元婚約者なんか、一番悲惨だよ。 あの状態の彼女を見たら、しばらく 立ち直れないんじゃないか、って。 ああいう目に遭わせた相手を憎む事も もちろんだけど、まず、自分を許せなくなるんじゃないか、って。
  夢:・・・・うーん。
  翔:そういう周りの物が、何も見えなくなる程の、激しい恋だった、と言うんなら、それはそれでいい。 でも、それなら、前半、どんな障害が立ちはだかっても 貫き通すんだ、というぐらい、一気に燃え上がるような恋愛を、英樹と京子に、して欲しかった、と思う。
  夢:この映画のふたりは、そうじゃなかった、と?
  翔:ただ、肩を並べて歩く、キスする、SEXする、っていうだけじゃない、もっともっと、どうしようもないくらいお互いが必要なのだ、という、決定的な繋がりが、希薄だったような気がする。
  夢:うん。
  翔:若いんだから、そういう、初々しい恋もいいじゃないか、と言うには犠牲が大きすぎたし、傷つけた人達に対する呵責(かしゃく)すらない。
  「悪いのは、みんなあいつらで、自分達は何も悪い事をしていない」と言われたら、「確かにそうだよね」と返すしかないんだけど、ただ「京子と一緒になりたい」という想いがあれば、たとえ相手が、ヤクザの組長(黒沢年男)であろうが誰であろうが、頭を下げれば何とかなるだろう、なんて考えてる・・・その英樹の読みの甘さ、が、私にはとても腹立たしく思えてしまったんだよね。
  夢:・・・なんか、これ以上聞くの、辛くなってきた。
  翔:いや、でも、もしかして、「井上英樹は、タケシ(金山一彦)と対比させるために、わざとそういう役にしたんだ」と言われたら、「暴言吐いて、誠に申し訳ございません」と言うしかありませんが。
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  夢:なにか、いいところ捜しましょうよ。
  翔:私、タケシが良かったな。 本当は英樹がやらなければならなかった事を、彼が、全部引き受けてくれて。 もしかして、タケシをこういう形で描きたかったから、英樹が、ああいうキャラになってしまったんだろうか。
  夢:うーん・・・・
  翔:タケシのどこが良かったか、と言うと、京子の息子の鉄平を預かって、一緒にうたた寝しちゃったところとか、組長に、京子を叩くように言われて、途中でやめてしまうところ。
  京子に指一本触れた事もないのに、英樹に負けないくらい京子が好きだったんだという想いが、観てるこちらにも、伝わってきたから。
  夢:あたしも、タケシは なんていい奴だ、と思った。 英樹と京子の幸せはもちろん、鉄平の事まで心配してくれて、結局、命張って3人を守ってくれて。 あれで死んじゃうのは、あまりにもかわいそうだよね。誰の為の人生だったのか、って。
  翔:高校時代、英樹とタケシはバッテリーを組んでいた、ということだけど。
  夢:そのエピソード、ふたりの生き方に影響してた?
  翔:ピッチャーは、球を投げてしまえば それでおしまいだけど、キャッチャーは、それ以後の責任を背負って、ホームベースを死守しなければならない。 そう考えると、自分の想いを押し通した英樹と、迷惑しながらも、結局はそれを受け入れて、何とかしてやろうとしたタケシ、という事が言えるのかな、と。
  夢:ふーん。
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  夢:ストーリー的には、不満だったという事だけど、ビジュアル的にはどうだった?
  翔:それは良かったと思う。 落ち葉散る並木道を、英樹と京子が歩いて来るところなんか、すごくきれいだったし、いつも気になる、田辺さんが着ている服とか、髪とかも、似合っていたし。
  夢:その、田辺さんだけど。
  翔:英樹という役に対しては、私は、どうしても気持ちを添わせる事が出来ないんだけど、演じていた田辺さんは、それほど悪くなかったと思う。 まっすぐに突っ走る若さみたいなものが、良く出ていたし。
  夢:あと、あたし、宅配便のユニフォーム、けっこう好きだった。(笑)
  翔:ああ、私も。 田辺さんって、ああいう格好も似合うんだね。(笑)
  夢:・・・・・良かったぁ。
  翔:・・・・なに?
  夢:翔、少し立ち直ってくれたみたいで。
  翔:・・・・ごめんね。苦手分野(バイオレンス)とはいえ、まったく冷静になれなくて。
  夢:でも、ENDマークが出た時に感じた想いが、一番正直なものだと思うし、建て前できれい事並べるより、ずっと良かったと思うけど。
  翔:私も、その思いがあったから、あえて、正直に話したわけです。 不愉快に思った方、すみません。
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  夢:「私の一番」ですが、選ぶの辛い?
  翔:今回は、ビジュアル的に気に入ったシーンにします。 英樹が、京子に「結婚しよう」と迫って、強引(って言う程でもない?)にキスするところ。
  夢:あたしは、宅配荷物を運んでる田辺さん。