シネマ歌舞伎 『阿弖流為』 感想

シネマ歌舞伎阿弖流為』 感想

いや〜映画になっても面白かった!『阿弖流為アテルイ)』。
シネマ歌舞伎は二次元の世界、
当然 自分の目の前に本物の役者たちがいるわけじゃないんだけど、
それでも、生で舞台を観ているのと同じような、
ほとばしる程の半端ない熱量がバンバン伝わってくる‥
カメラを通して観てもその熱気が弱まらない‥のは 何故だろう。

私は、この芝居を一度生で観ています。
だから、ストーリー展開も、登場人物たちの行動や感情も、
すでに自分の眼や頭に刷り込み済みです。
それでも、改めて新鮮な気持ちで「面白い!」と感じられる、
ここはこうで、だからこうなって‥などといった(観劇した時の)記憶を
呼び覚ますことを許さないぐらい、
展開が速く、物語として面白く、人間たちの魅力に溢れている、
それは、やはり元々の『阿弖流為』という作品自体が、
大きな魅力に溢れているから、なんでしょうね。

その上に、一体何台カメラを使ってるの?というぐらい、
客席からでは味わえないような
様々な場所から捉えたカメラアングルの楽しさや、
VFX等を駆使した迫力あるシーン、等々、
生の舞台では味わえない「映像」としての面白さも加わって、
観る側を 阿弖流為の世界 にどんどん引きずり込んで行きます。

登場人物から伝わってくるものも、
実際の舞台とはまたちょっと違っていて。
間近で表情を見ると、さらに受け取るものが多くて
役者たちがどれだけ気合を入れて演じているかが如実に伝わってくる。
うわーこんな繊細な表情してたのか!とか、
こんなに神々しかったのか!とか、こんなに憎々しかったのか!とか、
また、衣装にこんな手の込んだ細工が施されていたんだ!とか、
そんな驚きやら感激やら感動やらてんこ盛りで、まったく飽きない。
すごいなぁシネマ歌舞伎!すごいなぁ阿弖流為
  (個人的には、阿弖流為と田村麻呂が名乗り合うシーン、
  舞台では、両花道を使っていて、
  どっちも観たい私は 右観たり左観たりで忙しかったんだけど、
  映画では、二人の立ち姿が一つの画面の左右に収まっていて、
  じっくり見られたのが嬉しかった)
  (あと、終盤セリ(スッポン)から上がって来る鈴鹿
  人外の儚(はかな)げな美しさったら!)

以前は、舞台中継やゲキ×シネ等を観ていて
演者の汗がすごく気になる時があったのだけど、
今回はあまり気にならなかった。
逆に、激しい動きがもたらすその汗のきらめきによって、
彼らが 一瞬 研ぎ澄まされたアスリートのようにも見えて、
何だかジンと来てしまった‥のは、
惚れた弱みで 私の眼が眩(くら)んだせい なのかなぁ。w

ともかく、舞台を観た人にも十分楽しめる、
舞台とはまた違った、映画ならではの魅力満載の
シネマ歌舞伎阿弖流為』でした。

ところで‥
映画向けのパンフレット(プログラム)はなかったのでしょうか。
劇場版とはまた違った視点でのキャストスタッフの言葉や裏話など、
ゲキ×シネ並みの読み応えあるパンフ、見てみたかったです。

 

6月30日(木)福島フォーラム

シネマ歌舞伎阿弖流為     
作:中島かずき 舞台演出:いのうえひでのり
出演:市川染五郎 中村勘九郎 中村七之助
坂東新悟 大谷廣太郎 中村鶴松 市村橘太郎 澤村宗之助
片岡亀蔵 市村萬次郎 坂東彌十郎 他
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