今さら『37歳で医者になった僕』(第1話)感想

放送は2012年4月〜6月。
諸々の事情で私がブログを一時お休みしていた時の作品です。
8話以後の感想は初見時にupしていましたが、
1〜7話の感想を書いていなかったので、
今さらですが、1話から順を追って書きたいと思います。

 

今さら『37歳で医者になった僕』(第1話)感想

このところ医療系ドラマが多くて、
それぞれの視点も切り口もさまざまで、
それぞれに面白いところも物足りないところもあったりするのですが、
このドラマは、登場人物の設定やセリフに共感出来るところが多くて、
一人一人のリアルな心情に身につまされるものがあったり、
何かしら響くものがあったりして、毎回とても惹きつけられました。

病気を治すこと=身体を治すこと、ばかりじゃない、
患者が何を求めているのかの見極めや配慮、患者の心のケア、
患者が十分に納得した上での治療、を、
果たして医師たちは、ぎりぎり突き詰めて考えてくれているのか・・

 

第1話の患者・多田(北村総一朗)は
実はかすかに意思の疎通が出来るのだけれど、
担当医の新見(斎藤工)はそれに気づいていない。
胃瘻(いろう)の手術を控えているけれども、
普通の食事がしたい、という希望を捨てられないでいる。

37歳の研修医・紺野祐太(草彅剛/草なぎ剛)は、
そんな彼に、誤嚥(ごえん)性肺炎の危険性を説明したうえで、
やわらかいものを食べてみるテストを提案、
新見や他の医師たちに無断で多田にゼリーを食べさせてしまいます。
結果、多田はゼリーを嚥下(えんげ)することが出来、
胃瘻手術は一時見送られることに。

正直、この時は、紺野の行動をかなり危なっかしく感じたし、
助かることが前提の‘ドラマ(というフィクション)’ だから出来たこと
だとも思ったのですが、
でも、こんなふうに医師のほうから患者に歩み寄って、
患者の希望や本音を受け止め、
何とかしてそれを叶えようとする姿勢って、
本当はとても大事なことなんじゃないか、という気がするのですよね、
治療に関して患者を納得させ安心させる力を持つのは医師しかいない、
ということを考えても。

「医者は接客業じゃない」と新見は言ったけれど、
会社勤めの経験があり、しかも営業を担当していた紺野にとっては、
患者=お客様と捉えるのは自然なことで、
その紺野の視点が、すごく新鮮に感じられました。

 

内容の深まらないカンファレンス、
回診で「もう少し様子を見ましょう」としか言わない教授(松平健)・・

医師にとっては何百人といる患者の一人に過ぎないけれど、
患者にとって、その家族にとっては、
掛け替えのないただ一つの命なのだ、と。
病気の恋人を持つ紺野にとって、
医師としての視点だけではない、患者の家族という立場にいることが、
とても重要であるように思いました。
だからこそ、
今も これからも 見えるものがたくさんあるのではないか、と。

 

それにしても・・
「納得していないのに同意書にサインしたのなら
それは患者がバカだから。
インフォームドコンセントセカンドオピニオン
患者が自分の身を守るためにある。
医療訴訟がこれだけニュースになってるのに
いまだに医者の言うことが全部正しいと思ってるなら
バカとしか言いようがないでしょ。
医者に判断を丸投げした時点で患者の負けなんですよ」
という沢村瑞希水川あさみ)の言葉には、グサッと来たなぁ。
患者や家族もまた、医師としっかり対峙(たいじ)して、
病気に立ち向かう態勢を整えなければならない。
あたりまえのことを忘れがちになってしまっている自分にも、
ちょっと反省させられました。

 

さて田辺誠一さん。
研修開始早々カンファレンスで無駄を指摘した紺野へのまなざし・・
最後に紺野を見送った時のほんのかすかな笑み・・
その表情に含まれるものの深さ・複雑さに、
やっぱり一筋縄じゃ行かない俳優さんだ、と再認識。
初見の時、そんな 万事‘大人’ な森下が好きだったのを思い出しました。
2話以降の再見が楽しみです。

 

37歳で医者になった僕     
放送日時:2012年4月-毎週火曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:古家和尚 演出:三宅喜重 プロデュース:木村淳
原作:川渕圭一「研修医純情物語〜先生と呼ばないで」
「ふり返るなドクター〜研修医純情物語」
音楽:菅野祐悟 主題歌:「僕と花」サカナクション 制作著作:関西テレビ放送
キャスト:草彅剛 水川あさみ ミムラ 八乙女光 桐山漣
志賀廣太郎 藤吉久美子 鈴木浩介 でんでん 甲本雅裕
斎藤工  真飛聖 田辺誠一 松平健  
ゲスト:北村総一朗 岩本多代  『37歳で医者になった僕』紹介サイト