『志の輔らくご in PARCO 2012』(WOWOW)感想
落語はあまり詳しくないのですが、
『アシタスイッチ』に出た時の志の輔さんのお話が興味深かったし、
PARCOで落語、というミスマッチにも惹かれて、観ました。
「タイムトラブル」
本題に入るまでのマクラがすごく面白かった。
リニアモーターカーが走る原理など、
めちゃくちゃ簡単で面白くて、とても分かりやすくて、
こういう先生がいたら授業が楽しいだろうなぁ・・
なんてことを考えているうちに、スルッと本編へ。
30年間無遅刻無欠勤だった先生が、
授業に40分遅刻して来た理由を、生徒たちに話して聞かせます。
それがなんと、タイムマシンで飛んで来た宮本武蔵に会った、というもので、
信じない生徒たちは、次々と教室を出て行ってしまうんだけど、
最後まで聞いてくれる生徒が一人だけいて、
その生徒が実は・・というお話。
先生の話を聞いている生徒たちは、言葉を発しない、
落語ですから、彼らの姿も見えない、
なのに、すごく臨場感があって、惹き込まれました。
ある程度オチが読めましたが、
落語のあとの影絵までがストーリーとして繋がっていて、
そこにもちゃんとオチが用意されていたのが面白かったです。
「メルシーひな祭り」
普段落語を聴き慣れないせいか、
導入部から中盤までは ちょっと長過ぎる気がしましたが、
多数決あたりから終盤への展開がテンポ良く、
神社の石段に並んだ商店街の連中の姿を想像しながら、
クスクス笑いつつ(位牌=仏 ってあたりが最高w)
笑いながら、思いがけず泣かされてしまいました。
「あ〜面白かった」で終わっても、もちろんいいんだけど、
案外深いところで「伝えたいこと」をしっかり持っているのかな、
という気がして。
商店街の人たちの不器用な気持ちをしっかり受け止めた
フランス特使の奥さんが素晴らしいです。
噺が終わった暗転後に、バックにひな壇が出て来たのが微笑ましく、
「5分休憩」の脇に、志の輔さんが「1」のカードを持って来て立って、
「15分」にしちゃうところがまた何とも可愛らしかった。
「紺屋高尾」
古典落語だそうですが、
途中から、私の頭の中で自動的に
高尾太夫が野風(中谷美紀@JIN〜仁〜)に脳内変換されてしまって、
そのせいか、ドラマを観ているような気分になって、
久蔵は松坂桃李くんがいいかな・・などと、
勝手にキャスティングして、楽しんでしまいましたw。
太夫言葉には「・・ありんす」「・・ざんす」等の他に
「・・ざます」というのもあったそうです。
私は今まで、ドラマ等で太夫がその言葉を使ったところを
聞いた覚えがなかったのですが、
志の輔さんが落語中にさりげなく説明してくれたせいか、
あまり引っ掛かることなく、物語に乗ることが出来ました。
観終わってから、ちょっと調べたのですが、
古典落語は、全体の骨子は同じでも、
私が思っていた以上に、落語家それぞれによって、
あちこち手を加えられたり削られたりしながら変化しているようです。
新作も大事にしつつ、
古典の中に「自由な発想と創造力」を注入し続けることもまた、
落語の、伝統に埋もれない面白さ、を
保ち続けて行くことになるのかもしれない、歌舞伎のように・・
などということを考えました。
たとえば、志の輔さんの師匠の談志さんは、
この「紺屋高尾」をどういう噺にして行ったのだろうか、と、
興味がわきました。