『853〜刑事・加茂伸之介』(第6話)感想

『853〜刑事・加茂伸之介』(第6話)感想
これが1時間刑事ドラマの鉄板の流れ、と言ったらいいんでしょうか。
ご都合主義なところはあいかわらず多いんだけど、
そこを細かく詰めて描いてたら、事件解決まで1時間じゃ収まらない、
そのあたりは視聴者との暗黙の了解のうちにサクサクッと流し、
ストーリーの軸になる部分に時間を掛ける・・
ということで、今回の芯は「情」と「カン」。


いや、いつもこのふたつが軸になってる、って気もしないではないですがw、
今回は、それが、さらにいい形で、観る側に伝わってたんじゃないか、と。
何より、キムラ緑子さん(好き♪)の演技と佇(たたず)まいが、
観る側に、多くのものを伝えてくれていたように思います。


佐々木雪子(富田靖子)が、前回あたりから本当にやわらかくなって来て、
人としての感情を素直に出して来るようになったので、
何だかすごくホッとしました。
特に、武藤(田辺誠一)に対して、
「(貴子の取調べに)もっと時間が欲しい」と食い下がった時の雪子には、
貴子(キムラ)のことを思いやる他に、
武藤のドライな心を何とかして揺り動かして融(と)かしたい!という、
秘めた想いも込められていたように思われて、ついつい感情移入。
(いや、ただの妄想かもしれないけどw)


その雪子が、自供した人間の思い詰めた表情を見て、
真犯人が他にいるのではないか、と考える、
それが、結果的に犯人を見つけ出すきっかけになる、というあたり、
「カン」が捜査に役立つ、という具体的な良い一例にもなっていました。


いつもの自分のパート(人情とカン)を、雪子に取られたこともあり、
今回の加茂(寺脇康文)はワキにまわり、
しかも、きちんと貴子に事実を伝える、という、
ある意味、情に流されない役どころになっていて(でも話し方がやさしい)
いつもは、加茂と武藤の間に雪子がいる、って感じなのに、
今回は、武藤と雪子の間に加茂がいる、という感じで、
その、それぞれの立ち位置もまた、なかなか興味深かったです。


さて、武藤さん。
いや〜、ほんとにジワジワ〜ゆっくり〜ですよねぇ。
でも、確実に変わって来てる。
眉間の縦ジワも5本じゃなくなって来たしw、
話し方も、ガチガチじゃなく、だいぶ普通になって来たし、
時々フッと気を抜いて、やわらかい表情を見せるようになって来たし。
(課長(金田明夫)との会話の後の一瞬の微笑みとか)


6話まで費やして、ようやくここまで来た、って感じですからねぇ。
あと2話で、武藤の性格が劇的に変わる、なんてことはなさそうだし、
加茂と武藤の関係にしても、雪子の武藤への想いにしても、
ほのかにいい兆しが見えて来る、
ってところで終わってしまいそうで、サビシイ。


ん〜、ひょっとしたら、以下、続編に続く、ってことになったりして?
・・いや、そんな予定があるかどうか知らないけどw、
どう考えても、後2回で伏線すべて回収、って形には、なりそうもないし。


そうだよ、加茂の10年前の事件とか、娘や奥さんとのこととか、
愛口のふたり(有薗芳記平田裕香)の過去とか、
まだ、いくらでも膨らませられる要素(ネタ)がいっぱいあるんだから。
なぜ武藤があんなにガチガチになっちゃったのか、ってのも、
ぜひ知りたいところだしw。


何より、加茂と武藤が、反発し合いながらもお互いを認め、
中合わせに突っ張り合ったまま相棒になって行く・・
みたいなところまで話が続かないとつまらないです、田辺ファンとしては。


ところで・・
武藤って、一見、憂いを含んだいい男 に見えるけれど、
実は、決してそうじゃない、ってことでいいんですよね、田辺さん。
今回観ていて、
こりゃ、田辺さんは、武藤をかっこよく演じるつもりはないな、
生真面目さが何となく笑える、みたいなところに持って行こうとしてるんだな
と確信しましたw。
(何らかの暗い過去がある・・なんてことにはならない様子だし)
武藤の場合、むしろ、そうする(複雑な過去を背負わない)ことで、
逆に、二枚目ぶりがストレートに伝わる気もするので、
(そうなって欲しい、という願望が込ってますw)
あと2回、徐々に変幻自在な田辺色に染まって行く武藤を、
私なりに楽しみたいと思います。