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『風林火山』(第27回/最強の敵)感想
今回は、板垣(千葉真一)と甘利(竜雷太)に
持っていかれてしまいましたね〜。
来週「両雄死す」という展開になる、ということもあり、
そのプロローグ的な回になっていた気がします。
でも、実は、強く私の心に残ったのは、
その二人によって炙(あぶ)り出された、
晴信と勘助の「欠落部分」だったりするのですが。
晴信(市川亀治郎)がね〜、
MAXで自分をコントロール出来なくなってる、というのが、
観ていて本当に辛いです。
本当にこのドラマには、完璧な人間が出て来ない‥
皆どこかに欠点を持ち合わせている‥
それを端的に現しているのが晴信なんでしょうが、
ここまで憎々しく演じられると、
こちらの胸まで締め付けられるような気がしてしまいます。
守役でもあった板垣の気持ちが、本当によく分かる。
暴走する晴信を何とかして諌めようとする板垣の「父性」に対し、
一方の甘利は「軍師」として、勘助(内野聖陽)を糾弾する。
「ひとつの負けが百の勝利を生む」という勘助の
一見正当とも言える考え方が、
実際に負ける人間の痛みや辛さに至っていないことへの苛立ち。
板垣が晴信に‥甘利が勘助に‥伝えたかったものは、
「人間には‘情’というものがある」ということだったのかなぁ、と・・・「戦(いくさ)」は、木偶(でく)がするのではない、人間がするもの、
そのことを忘れ、まるで人間を駒のように扱えば、いつか人心は離れて行く、と・・・
彼らはそう言いたかったのかなぁ、と勝手に推察したのですが、
果たして本当のところはどうだったのでしょうか。
板垣が、晴信を諌めるシーンも、とても好きでしたが、
甘利が、勘助を呼び止めて、負ける戦の意味を説くシーンは、
勘助のうしろに控えていた
真田(佐々木蔵之介)や相木(近藤芳正)の表情とも相まって
今回、私が一番好きな場面でした。
山本勘助、である以上、
たとえ主役であっても、ある程度身を引いた演技をしなければならない、
という考え方が正しいのかどうかは分かりませんが、
少なくとも私は、この、内野さんの勘助の作り方、というのが、
とても好きです。
そして、評定の席で自説を堂々と述べる自信たっぷりの勘助より、
今回のように、相手への感情にどこか戸惑いや動揺を含んでいる方が、
ずっと好きです。
表情、特に眼の演技は、本当に素晴らしいと思う。
晴信に対する視線と、由布姫に対する視線が、まったく違っていて、
どういう気持ちを込めているのか、を、無性に読みたくなってしまう(笑)
改めて魅力的な俳優さんだな〜、と思う。
***
さて、今週の小山田信有(田辺誠一)―――
うーん、うーん・・・・今回、レビューupに時間がかかったのは、
実は、小山田と美瑠姫(真木よう子)とのシーンで、
こちらの気持ちが引っ掛かってしまったのが大きな原因だったのですが。
前回の小山田の高笑いがまだ耳に残っている状態だったので、
今回、いきなり美瑠姫に対して紳士的(笑)になっている小山田、
というものに、どうも違和感があって、
あの懐(ふところ)の深さ、というものが、
私が、これまで小山田を観て来た中には感じられなかった部分
でもあったので、
え?え?――と、戸惑っているうちに、どんどん場面が進んでしまった、
というのが、私の正直な気持ちです。
え〜と、うまく言えないのですが、
こういう「純愛体質」を持っている小山田ならば、
そういう部分を、過去のどこかで匂わせておいてくれないと、
観ている側は混乱するんじゃないかと思うのですよね。
政略のために結ばれたのではない、
初めて「惚れた」相手だったから、だとしても、
あるいは、その懐の深さというのは、本来、小山田が持っていた資質で、
それが、美瑠姫という相手を得たことで、
初めて表に出て来たものである、のだとしても、
やはり、いつものエロトークや、あの高笑いと結びつけることは、
私には難しく思えてしまった。
せめて、前回、高笑いで勘助をやり込めるのではなく、
もっと真剣でまっすぐな気持ちを勘助にぶつけていたら・・・
せめて、相手を受け止め 支える度量があることを、
過去のどこかで見せられていたら・・・
少しは納得出来たでしょうかね〜 ――うーん、分かんないけど。
ただ、それらが仮にどうにも出来なかったものだとしても、
最後に、役を演じる田辺さんが、
私の違和感を弱めてくれることは可能だった、
(過去、何度もそういうことがあったように)という気もするのです。
自分が過去に経験してきたからこそ生じたのかもしれない、
美瑠姫への理解。
その思い‥その心‥を顕(あら)わにするのであれば、
「晴信(=お屋形)の影」を追い続けているいつもの自分ではない、
素の、あるいは真の「小山田信有」が、
そこに、初めて鮮やかに描き出されるはず。
だとすれば、いつもの時代劇的な口調を思い切ってやめて、
普通の、自然な話し方で、美瑠姫に語りかける、ぐらいのことを、
してもよかったのではないか。
美瑠姫役の真木さんが、時代劇に染まらない口調だったので、
なおさら小山田と美瑠姫の距離感、というのを感じてしまいました。
もうひとつは、演出への違和感。
美瑠姫が、小山田に身を許す場面、もうちょっと色をつけることは
出来なかったものか。
布団の中で、二人並んで語り合うのではなく、せめて上下で(!)
小山田がいとおしげに美瑠姫の髪に触れるとか、
美瑠姫の伸ばした腕が小山田の肩にかかり、
白い二の腕が露わになるとか、
ゴールデンタイムの大河でも、そのくらいのシーンは、
許されるのではないかと思うのですが。
あまりにもお行儀良過ぎて、
普段の小山田の言動と結びつかなかったです。(笑)
―――と、あれこれ苦言を呈しましたが、
基本的に、田辺さんの小山田の作り方、というのは、
すごく面白く感じながら観ています。
「わしはそなたに惚れたのじゃ!」なんてセリフを、
あんなふうにストレートに、気負いなく、しかも熱〜く!
観る側に何の抵抗も感じさせずに言えるあなたに
「私も惚れたのじゃ」(爆)
「己の命」と語った美瑠姫への、ふとした疑念の表情も、
細やかでとても好き。
だから・・・
今回感じた私の「違和感」も、きっと、今後、
どこかで払拭してくれるだろう、
という期待を、持ち続けている自分がいるのも事実なんです。
なぜ、って――「田辺誠一」だから、ね。(笑)
以前は、田辺さんに対して棘のあることを言ってしまった後には、
こちらの心が痛んだり疼いたりしたものですが、
今はすっかり「ごまめの歯ぎしり」。(笑)
小山田だけじゃない、緒方総支配人(@ホテリアー)とか、
柿崎(@肩ごしの恋人)とか、長年追いかけてると、
いろんな嬉しい「敗北感」(≒満足感)も味わえるわけで。
だから、以前にも増して、本当に好き勝手言ってます。
あちこちで盛り上がってるキャラなのにねぇ〜>小山田くん。(笑)
読んでいて不愉快に思われた方がいたら、ごめんなさい!です。