今さら『青天を衝け』感想(その1/第1回~12回)

2021年2月14日 - 12月26日NHKで放送された大河ドラマ『青天を衝け』(第1回~12回/血洗島・青春編)の、今さらながらの感想です。

▶第1回~12回(血洗島・青春編)
初回、まず最初に登場したのが徳川家康北大路欣也)で、幕末の話なのに何で!?と おおいに面食らったけどw 彼が歴史上の出来事をかいつまんで分かりやすく話してくれるので、歴史に疎(うと)い私でも 栄一たちが生きた時代がどんなものだったのか入り込みやすかった気がします。考えてみれば、徳川の終焉を語るのに、これほどふさわしい人もいないのかもしれない。

物語の冒頭は、栄一が生まれ育った血洗島村をメインに描かれるのですが、何と言っても 画面いっぱいに広がる農村風景が素晴らしくて、すごく心地良かった!
土の匂い、風の香り、空の広さ‥そこで生き 働く人たちの 土地に根付いた姿を、ドローンなどを使って巧みに見せる。家の中から外を見ると洗濯物を干す人の姿、一面に広がる畑、そびえるほどの大木、遠くに見える山並み‥画面を通して伝わる圧倒的な「本物感」。ロケ最高!と改めて思いました。

序盤、その高く広がる青い空の下で思い切り駆け回る栄一の 限りなく澄んだ輝く瞳と、ドクンドクンと高鳴る心臓の鼓動までもが伝わるような好奇心旺盛な行動力の、なんと魅力的なこと!
一家の中心となる父・市郎右衛門(小林薫)は栄一に言います、「上に立つ者は下の者への責任がある。大事なものを守る務めだ」と。家族を支える母・ゑい(和久井映見)は言います、「あんたが嬉しいだけじゃなくて、み~んなが嬉しいのが一番なんだで」と。
栄一の姉・妹、従兄弟、伯父・伯母、村の人々‥家族・村という単位でのそれぞれの役割をきっちりと描いて、栄一の人格が形作られて行く様子が生き生きと描かれます。 (そりゃあ、お蚕様だってダンス踊っちゃうよね~かわいかった~w)

そんな中、栄一は罪人・高島秋帆玉木宏)に出会います。「このままではこの国は終わる」と言う高島に、その言葉の深い意味を知らぬまま「俺が守ってやんべぇこの国を」と言う幼い栄一‥

一方、英明(えいめい)との評判ながら、籠の中に閉じ込められて自由に身動き出来ず、心が満たされない寂しさや虚しさ、さらには、強烈な父親(斉昭/竹中直人)のもとで本当の自分を解放しきれない鬱屈を抱えていた慶喜には、本人の気持ちをなおざりにしたまま、次期将軍候補とすべく御三卿の一橋家に迎え入れる話が進んでいて‥

広い世界に押し出されて行く二人の船出が、それぞれの少年時代(栄一/小林優仁、慶喜/笠松基生)から青年期の演者(栄一/吉沢亮慶喜/草彅剛)へと見事に継承されていて、ワクワクさせられました。
 ――――――
数年が経ち、家の手伝いを積極的にやるようになる栄一。幼馴染の喜作(高良健吾)と共に、兄のように慕う従兄(いとこ)の尾高惇忠(田辺誠一)のもとで武術を学びつつ、尊王攘夷天皇を尊び、開国を迫る夷狄(外国)から日の本を守る)という思想を教えられます。

ここで、ちょっと寄り道。
あまり歴史に詳しくない私、尊王攘夷公武合体は『IZO』(2008年/劇団☆新感線)の時にそれなりに勉強したけれど、なぜ尊王攘夷が水戸から生まれたのか、なぜ攘夷派だった薩摩や長州が開国派になったのか、が、このドラマを観て何となく理解出来たような気がします。(家康様の解説が、すごくわかりやすくて、面白かった)
天皇との繋がりがもともと深く、天子さまを守る意識が強かった水戸家。斉昭が作った弘道館から、尊王攘夷を唱えた水戸学が広められます。そして、この考えが、水戸に近い血洗島の若者たちにも広がって行く、ということなのですね。

ある時、代官から多額の御用金を申し渡された栄一は、あまりの理不尽さに「承服出来ねえ!」と強い怒りを覚えながら村に帰って来ます。そこに惇忠がいて、栄一に「話を聞こうか」と声をかける。もうここがすごく良かった!(田辺ファンとしては、こういうシーンを見せられると、惇忠を田辺さんが演じる格別な意味、みたいなものが感じられて、嬉しくなります)
一足先に世の中の大きなうねりを感じていた惇忠は、この世の中に憤る=悲憤慷慨、という言葉を栄一に教えます。
支配する側の武士と支配される側のその他(農工商)の間に厳重に線を引いた家康だが、その線に疑問を持った人々が多く出始め、その線が揺らぎ始める←う~んなるほど!と、あいかわらず分かりやすい家康の解説に頷く私。

そのころ、慶喜の小姓として仕えるようになった平岡円四郎(堤真一)は、慶喜から「諍臣になって欲しい。私に驕(おご)りがあれば必ず諌めて欲しい」と言われます。(「諍臣は必ずその漸を諌む」=手の施しようがなくなってから意見しても、何の効果もない。「漸」のうちにしてこそ意味がある)
この、慶喜と平岡の出会いも、すごく良かったです。身の回りの世話をする小姓なんてやりたくない気持ち満々の平岡が、慶喜と出会って給仕の作法を教えてもらううち、どんどん好きになって行くのが伝わって来て、やっと慶喜が心を開ける相手が見つかったことがなんだか嬉しかった。

血洗島では、惇忠の弟・長七郎(満島真之介)が江戸へ武者修行に行くことに。
「弟よ旅に出ろ」と長七郎にはなむけの詩を贈る惇忠。この時の彼の気持ちはどんなものだったのか。栄一のように、自分が、ではなくて、自分と同じ志を持った誰かが行動を起こせばそれでいい、と本当に思っていたのか、彼なりの葛藤があったのではないか‥と、つい深読みしたくなる私。
惇忠の本意というのは読み取れないけれども、父がいない尾高家の長男としての責任もあり、栄一の父が言うように「大事なものを守る務め」を果たそうとすることも大切なことだと思っていたのかもしれない。
そんな兄の想いを長七郎も身に沁みて分かっていたんですよね、きっと。彼はいろんなものを背負って村を出て行く。見たもの聞いたもの、体験を、惇忠や栄一たちにしっかりと伝えなければ、と思っているから、いつも真剣だったし、必死だった。
想像だけではない、江戸から京都へ‥尊王攘夷の現場を目の当たりにした長七郎は悩み続ける、自分にはいったい何が出来るのか、何をどうすべきなのか、と。
 
13代将軍・徳川家定渡辺大知)の孤独。周囲は、子がなく病弱でもあった彼の頭越しにあからさまに次の将軍の話をする。さらに、正室となった篤君(上白石萌音)が、慶喜を将軍後継に認めさせるという密命を負っていた、と告白‥「わしを支えてくれるものはおらんか!」という家定の切実な訴えに応えたのが、井伊直弼岸谷五朗)でした。何だかこの登場の仕方に、背筋がゾクゾクしました。
「斉昭は自分の息子を世継にして公儀を我が物にしようとしておる。慶喜を世継にするのは嫌じゃ」と訴える家定。単なるわがままではない、彼なりの苦しさ、辛さが滲み出ています。家定からその強い思いを託された井伊によって、一橋派の弾圧(安政の大獄)が始まります。

家康の解説。「孝明天皇が外国嫌いで、将軍ではなく水戸を頼りにされたことで、井伊ら開国派が攘夷派を徹底的に処分した」とのこと。

栄一は、惇忠の妹・千代(橋本愛)を嫁にもらい、ますます商いに精を出しますが、理不尽なことばかりの世の中に唇を嚙み締めます。「百姓だからってこんなにも軽くみられるってぇのは、この世自体がおかしいのかもしんねえ。生まれつき身分の違いがあるっていうのは、この世の中が、つまりは幕府がおかしいのかもしんねえ。だとしたら俺はどうしたらいい、幕府を変えるにはこの世を変えるには‥」

慶喜には隠居謹慎が、斉昭には永蟄居が申し渡され、一橋派は、井伊によって、まったく身動きの取れない状態に追い込まれてしまいます。
井伊を中心とした幕府が朝廷を軽んじる扱いを繰り返したことで、尊王攘夷の志士たちが過激化、外国人を襲う事件が起き、井伊は、家定の死後14代将軍となった家茂(磯村勇斗)から、ほとぼりがさめるまで大老職を退いてはどうかと言われます。
しかし、井伊にはまったく引く気配はなく、弾圧は強まるばかり。
そして、ついに井伊は桜田門外の変水戸藩脱藩者らによって暗殺され、これで水戸は仇(かたき)持ちになってしまった、と憂えた斉昭も突然の病死。父の死を知らされた慶喜は、慟哭します。

京では和宮深川麻衣)を徳川に降嫁させる話が進みます。
尊王論者・大橋訥庵(山崎銀之丞)は、長七郎に、和宮降家を画策した老中・安藤を斬れ、と命じます。
江戸から血洗島に戻り、安藤を斬って武士らしく腹を切る、と、気持ちが昂(たかぶ)ってしまっている長七郎(満島真之介)に、惇忠は、安藤一人を斬ったところで何も変わらない、と説得。栄一も、井伊や安藤を動かしていたのは幕府で、武士は武士、百姓は百姓と決めつけている幕府がある限り、何も変わらない、と熱く語ります。
彼らの説得を受け入れた長七郎は京に逃れ、惇忠は、「家が国、国が家のようにしてはじめて攘夷がなる。大騒動を起こして世間を目覚めさせる!」と、横浜焼き討ち計画を栄一たちに語り、おおいに盛り上がります。

一方、慶喜は、薩摩の島津久光池田成志)らの強い推挙により家茂の後見人となりますが、薩摩が自らの利権のために自分たちを利用しようとしていることを知ります。

京では、過激な志士たちが、和宮降家に力を貸した者や開国に賛成の者を天誅と称して抹殺。その先鋒に立ったのが長州と三条実美でしたが、慶喜松平春嶽要潤)が、攘夷が容易いものではないこと、まず公武の融和で人心をまとめるべきと主張、長州や薩摩が外国との戦いに敗れ、攘夷が無謀であることを知るようになったこともあって、徐々に公武合体へと動いていきます。

血洗島では、密かに決起する時が近づき、栄一は父に勘当して欲しいと申し出ます。「家を出て天下のために働きてぇと思う。俺一人満足でも、この家の商いがうまくいっても、世の中みぃんなが幸せでなかったら俺は嬉しいとは思えねえ。みんなが幸せなのが一番なんだ。この国が間違った方向に行こうとしてるのに見て見ぬふりして何でもねえような顔して生きて行くことは出来ねえ」
千代もまた、栄一の決意を理解してくれていました。
「栄一さんはこの日の本を己の家のように一家のように大事に思ってらっしゃるんです。家のことに励むみてぇにこの日の本のために懸命に励みてぇって。どっちもに栄一さんの道はあるんです」
父は、「俺は政がどんなに悪かろうが、百姓の分は守り通す。それが俺の道だ。お前はお前の道を行け」と跡継ぎである栄一が家を出ることを許します。

江戸に出た栄一と喜作は、幕府に追われ、襲われそうになったところを平岡に助けられ、「百姓の志がお武家様のそれより下だとは思っていない。百姓だろうが商い人だろうが立派な志を持つものはいくらでもいる。生まれつきの身分だけでものが言えねえのがこの世なら、俺はこの世をぶっつぶさねばなんねえ」と息巻き、「やりたいことがあるなら武士になっちまったほうがいい。いつか気が変わったら来な、悪いようにはしねぇから」と、平岡から、何かあったら自分を頼るように、と言われます。二人に、侍(さむらい)にも引けを取らないほどの歯ごたえや気概のようなものを感じ取ったのかもしれません。

一橋派であったことから勘定奉行を解かれ左遷されていた川路聖謨平田満)が外国奉行に任ぜられ幕政に復帰、懇意だった平岡に、「水戸烈公や東湖先生(渡辺いっけい)が生み出した攘夷って思想が、長い時を経ているいちにとんでもねえ流行り病(はやりやまいになっちまった気がしてる」と話すのですが、流行り病の熱は、血洗島にも。
尊王攘夷の志を持った若者が続々と惇忠の元に集まり、武器を調達し、いよいよ横浜焼き討ちに向かおうとする時、長七郎が戻ります。京での混乱をその目で見てきた長七郎は、「これはただの暴挙だ。70やそこらじゃ百姓一揆にもならねえ!」と惇忠たちに訴え、焼き討ちはギリギリのところで取りやめになります。

攘夷の熱に浮かされたあげく、その熱の正しい在り処(ありか)を見失ってしまった長七郎の苦悩する姿が、横浜焼き討ちに突っ走る惇忠や、浮足立つ栄一や喜作たちを諌(いさ)めるような、ある種の「重石(おもし)」にもなって行った気がします。一人、異質な空気感を纏(まと)うようになる長七郎を、そんなふうに作り上げた満島さんが素晴らしかったです。

悲憤慷慨の想いを強く持ち、仲間と共に尊王攘夷を唱えながら突っ走って来た栄一は 行く道を断たれ、生まれてから一度も触れなかった娘・うたを初めて抱き、「とっつぁまは臆病者だ‥死なねえでよかった」と涙を流します。
このシーン、観ていてすごく心に響きました。世の中の不条理に向かって拳を上げそこなった栄一が、やっとうたを抱く、自分が一番守らなければならない存在がこんなに身近にあった、この命をこそ守らなければならないのだと栄一は気づいたのかもしれません。流行り病から辛うじて生還した瞬間だったように思いました。

栄一は、京に向かう、と父に告げます。父は、「ものの道理だけは踏みはずすなよ。誠を貫いたと胸張って生きたなら、俺はそれが幸か不幸か死ぬか生きるかにかかわらず満足することにすべえ」と栄一を送り出します。
何だかこの両親もすごいですよね。腹の括(くく)り方が半端じゃありません。

そして、慶喜・平岡も京へ。
ここから本格的に慶喜と栄一が相まみえることになります。
今後、慶喜の空虚(そのあたり草彅さんには独特の空気感がある)を栄一(吉沢さんの突き抜けるようにまっすぐな瞳・口跡・ふるまいが清々しい)たちがどう埋めて行くのか、楽しみです。


大河ドラマ『青天を衝け』
放送:2021年2月14日 - 12月26日 NHK総合 毎週日曜 20:00 - 20:45
脚本:大森美香 音楽:佐藤直紀
演出:黒崎博 村橋直樹 松木健祐  制作統括:菓子浩 福岡利武
プロデューサー:板垣麻衣子  制作:日本放送協会
出演:吉沢亮 高良健吾 橋本愛 
草彅剛 堤真一 竹中直人 木村佳乃 渡辺大地 上白石萌音 磯村勇斗 大谷亮平 岸谷五朗
小林薫 和久井映見 田辺誠一 満島真之介 玉木宏北大路欣也 他
公式サイト

今さら『婚姻届に判を捺しただけですが』感想

昨年(2021年)10月19日 - 12月21日TBS系で放送された連続ドラマ。今さらながらの感想です。

いや~このドラマも楽しかったなぁ!
一方は不毛な恋の隠れみのとして、一方は500万円の借金のために、偽装結婚した二人。 漫画原作らしく 突拍子もない設定ですが、ネチネチしてなくて、カラッとしていて、かと言って 深みがないわけではなく、観ていて上滑りすることがほとんどなくて、楽しかったです。

中学時代に好きになった同級生の美晴(倉科カナ)が自分の兄・旭(前野朋哉)と結婚してしまい、以来 彼女への想いを誰にも悟られまいとして「既婚者」という肩書を求めて結婚相手を探す百瀬柊(坂口健太郎)と、海外滞在の長い自由人の両親(ルー大柴杉本彩)の代わりに自分を育ててくれたおばあちゃん(木野花)の小料理屋が借金の担保にされ、売り払われる危機を救うために500万円を貸してくれる相手を探す大加戸明葉(清野彩名)の利害が一致し、二人が一緒に住み始め、揉め事を起こしながらも婚姻届けを出すまでが、1話でテンポよく描かれます。

その後、目覚まし時計の電池を預けてくれたり、ハンバーガーのチラシを褒めてくれたり、仕事のピンチを救ってくれたり、次第に柊のことを好もしく思うようになる明葉。
しかし、結婚祝いにと美晴が幹事をしてくれた柊の中学時代の同級生とのバーベキュー、酔った美晴を「おぶって帰れば?」とやっかみ半分で柊に言ってしまい、家に戻った後 柊から「(美晴と距離が縮まることを)僕自身が望んでいない。僕は誰にも悟られることなく美晴を思っていたい。この結婚は外野から余計な干渉や詮索をされないためのもの。僕にとって、結婚相手であるあなたも外野の一人」と がっつり心のシャッターを下ろされ、落ち込みます。

不毛な恋にどっぷり浸かっている柊に、「百瀬さん言ってましたよね、自分はこれ以上不幸になることはないって。じゃ幸せは?百瀬さんはこの先1ミリも幸せにならないんですか?」と疑問をぶつける明葉。
この言葉が心に刺さった柊は、中学時代の出会いからずっと、美晴の存在にどれほど救われてきたか、人付き合いの苦手な自分を全肯定して世界を広げてくれた美晴に対してどれほど真剣な想いでいたか、を初めて素直に話し、柊が 傷つきながらもピュアな気持ちを抱き続けていることに心動かされた明葉は、「私は百瀬さんの味方です」と彼を抱きしめます。
「これが友情のハグですか」と勘違いする柊ですが、明葉にしてみたら友情のハグじゃない、もう恋のフラグが立ってしまってるんですが‥

今まであまり友達のいなかった柊が、勝手に明葉に対して友達モードになって喜ぶのが可愛いかったです。美晴に対する想いも、うわべだけじゃないことが伝わってきました。

一方、好きという想いが芽生えたものの、偽装結婚を始めた時の「決して相手を好きにならない」という二人で交わした掟のため、気持ちを抑え込もうとする明葉。 好きになってもいけないし、好きになってももらえない、彼女もまた不毛の地に足を踏み入れた模様。

友達だからと、どんどん距離を詰めてくる柊。これ以上好きになっちゃいけないと、離れようとする明葉。
もともと友達が少なく、まして女友達は初めてで距離感が掴めない柊から「馴れ馴れしくしてごめんなさい」と謝られ、「この不毛な恋をやめるために、私は今日から百瀬さんの友達になる」と決心する明葉が、何だかちょっと気の毒ではあるけど、展開としては面白かったです。

妊活中の旭と美晴。自然妊娠は難しいと診断された美晴は、離婚届を置いていなくなってしまいます。
「美晴のこと愛してるけど、美晴が笑っててくれれば それが俺の隣じゃなくても‥」と言う旭に、「誰かの隣で笑ってる美晴見て、兄貴は満足なの?それでいいの?」と思いをぶつける柊。
その言葉がそのまま自分にも当てはまる、と気づき、柊は熱を出してしまいます。離婚して欲しくない気持ちも、その逆の気持ちも本当、という板挟みの感情を持て余して、苦しむ柊の姿がつらい。

結局、旭と美晴は元のさやに納まったのですが‥
「百瀬さんの不毛はもはや不動。私がすがれるのはこの偽装結婚だけ。でもこうして一緒にいられるだけで、好きでいられるだけで嬉しかったり」と、こちらもまた不毛一直線の明葉。

借金のことで頭を悩ませていた明菜を励まし、以後友人として相談相手になってくれていた牧原唯人(高杉真宙)は、「アッキーのこと好きになっていい?そうしたら励ましてあげられる」と、まっすぐにアプローチしてくる。
合コンで、「アッキーとは友達っていうより親友」という唯人と、それを聞いた柊が、何となくライバルっぽい空気になって行くのが面白かった。

この頃、私はすっかり唯人に肩入れしてて、柊早いとこ目を覚ませ~!って思ってました。w
まぁ、ラストは明葉と柊がうまくいくんだろうな、と最初から思っていたので、事あるごとに柊に揺さぶりをかける唯人を安心して見ていられた、ということもあるだろうけど。(結局、鈍感極まってる柊が好きなのよね、私w)

そんな時、明葉の両親が帰国。母・葉子の絵が売れて、500万円が明葉の手元に。柊に借金していることに気づいた葉子から、ちゃんと返すように、と言われてしまいます。

一方、唯人が勤めている動物病院で、「友達としてなら(明葉に)キスしてもいい?」と挑発され、明葉に励ましのキスをするも、頬を叩かれる柊。
ほんと不器用というか、空気読めないというか、乙女心わかんない、というか‥「友達だったらこれ以上ザワつかせないで、ほっといてください」と突っぱねられる柊。何だかちょっと可哀そうになって来た。

明葉の父母がまた外国へ行くことになり、柊が見送りに来ます。
どうしたらいいか分からなくて前に進めない柊ですが、「あなたたちなりでいいのよ、どんな選択でも、柊君と明葉の人生 あなたたちなりに決めればいい」と葉子に言われて、何か感じるものがあった様子。

柊は明葉の好きなガチャガチャをたくさん買って帰ります。
明葉は、尊敬する丸園先生(西尾まり)から「うわのそらで仕事してる、集中して」と言われ落ち込んでいることを素直に話します。
「僕はうまく明葉さんを励ませないかもしれないし、また怒らせてしまうかもしれません。でも僕たちなりの夫婦の形を作っていけたらと‥」二人の間に穏やかな空気が流れるのもつかのま、500万の札束が柊に見つかってしまい、勢いでキスする明葉。

翌朝、「そんなに離婚したがってたとは思わなかった」って、なんでそういう考えになっちゃうかな~柊!と突っ込みまくる私。
彼にしてみれば、明葉が500万円集めたというのは早く離婚したいからで、まさか自分を好きだなんて考えもしないことで。まあ、ここまでの流れを見れば、それも仕方ないことではあるのかもしれないんだけど。
「不自然にならないよう(離婚するまで)2か月ほど不仲を演出したい」と提案され、もはや反論する気も失せる明葉が不憫(ふびん)だ‥

仕事で美晴そっくりな女性・野上香菜と出会う柊。柊の偽装結婚を知った香菜から「愛してないならいくらでも替えがきく。あなたより私の方がはまると思う」と敵対心をぶつけられ、弱気になってしまう明葉。
香菜は、百瀬にも、「私の方が割り切った関係になれる。百瀬さんの理想のパートナーになれると思う」と言いますが、「明葉さんと一緒にいられることが楽しい。煩(わずら)わしくなんかないです。香菜さんに言われて気づいた、僕は明葉さんじゃないとだめなんだって」
香菜のおかげで、やっと自分の気持ちに気づく柊。

「私、百瀬さんのことが好き。離婚したくない」「僕もです。明葉さんこれからも一緒にいてください」やっといい雰囲気になった二人。
「結婚2か月にして、私は今さいっこーに幸せ!」絶対王者・美晴に負けないように、そしていつか百瀬さんと本当の夫婦に‥と夢想する明葉でしたが‥

「これからも偽装夫婦でやっていく。僕たち気が合いますよね、もう親友ですよね」 柊のその言葉を聞いて思いっきり引く明葉。「ラブじゃなくライクだと思ってるパターン?ハグしてもキスしても告白しても伝わらないって、なんでそんなに鈍感なんですか。この人に何を言ってもダメだ‥」

そんな折、唯人と元カノが鉢合わせ。「あんたみたいなちゃらちゃらした男、誰も相手にしない」と言われるも、居合わせた柊が「勉強も仕事もしっかりやってる」と唯人をかばいます。
「お礼は言わない。誰かに分かってもらおうなんて思ってない」「僕も同じ。不毛な恋を、偽装結婚を、誰かに理解してもらおうとは思わなかった。でも明葉さんに出会って初めて気づいた、自分の気持ちを理解してくれる人がいるってこんなに嬉しいことだって」素直に話す柊に、「いい加減に気づけよ、アッキーが好きだって」といらつく唯人。
まだ認めたくない柊は、「僕が好きなのは美晴です」と言いますが、唯人が「なら俺、告りますよ、今度アッキーに会ったら好きって言いますから」と宣戦布告。
出勤時間遅いはずなのに、毎朝6:50にめざましセットして柊を起こしてくれた明葉‥熱を出した時 看病してくれた明葉‥唯人に指摘され、改めて明葉への気持ちを考える柊。
(めざましの電池とか、いい小道具になっていて、こういうところうまいです)
「明葉さんと出会って僕は独りぼっちじゃなくなった。これは友情じゃないのかもしれない」そして‥

「明葉さんハグさせてください」おお、やっと自分の気持ち言えたか、と思ったら、その後よりによって「今すぐ僕と離婚して下さい」って、おい~柊っ!観てるこっちはいったい何回突っ込めばいいのよっ!
「好きな人に正直な気持ちを伝えたいと思うようになった、けじめをつけたい」
でも、この言い方じゃ、明葉が その‘好きな人’とは美晴のことだ、と思ってしまうのも仕方ないよな~。
離婚届に判を捺し、一度関係をリセットして、改めて一から始めたかった、その気持ちは明葉に伝わっていない。

何かと相談に乗ってくれていた麻宮祥子(深川麻衣)から「ちゃんと言わなきゃ伝わらない」と言われる柊。
「明葉さんが幸せならそれでいい、今は遠くから見ているだけで‥」「また不毛かよ。それビビッて告白できない言い訳でしょ。一生不毛な恋してろ、バーカ!」と唯人。
いつまでたっても自分の本当の気持ちをうまく伝えられない柊。
このあたりからの、唯人と麻宮の、柊の胸倉掴んで思いっきり揺さぶってるような強烈な後押しが本当に心地よかった。

柊は、仕事が忙しい明葉に差し入れ攻撃。明葉の自信作を提出したコンペがデキレースだと知って、せめて丸園先生に明葉の作品を見てもらいたい、と頭を下げる。
丸園先生はわざわざ事務所に来てくれて、明葉に「素敵なロゴデザインだった。ちゃんと見て良かった。頼まれたのよ、あなたのだんなさんに。でも感謝してる。いつかまた一緒に仕事しましょう」と言ってくれる。

「本当に好きになったら しんどいことの方が多くない?でも、しんどいって好きだからなんだよね。会いたいなら会えばいいし、好きなら好きでい続ければいいじゃん。アッキーが泣きたくなったら俺いつでも付き合うからさ」ほんと唯人はいい人だ!

麻宮の家でようやく心通い合う二人。「僕から言います。僕は明葉さんが好きです。これはライクじゃないです、ラブです」「私も百瀬さんのことがラブです」
いや~やっとここまで来たかぁ!とホッとして、あとは結婚届にもう一度判捺して・・って考えてたら(私ったら柊と同じ思考だわ)

今度は、明葉が、「よりをもどしても再婚する気はない。偽装で籍を入れたのであって、そうじゃなかったら結婚とか夫婦とかよく意味わかんないし、もっとちゃんと百瀬さんのこと知ってからじゃないとそういう気にはなれない」と。
新しい仕事を見つけてあげたり、結婚式場を仮予約したり、勝手に舞い上がってる柊に、「夫婦ってなんですか。一緒にいるだけじゃダメなんですか。とにかく外で妻アピール夫アピールはやめて下さい」とクギを刺す明葉。

明葉の気持ちが分からず、戸惑う柊は、麻宮に「自分が好きだって言ったらそれがゴールだと思ってません?好きと結婚は別物ですよ」と言われ、また考える。

家を貸してくれていた社長の都合で、引っ越さなければならなくなる二人。
「結婚してないのに一緒に住むのはまずいですよね」と言う柊に、「なんで勝手に決めるんですか。私のこと分かってくれてますか、私のことどれだけ知ってるんですか。仕事も、大加戸明葉という一人の人間として勝負したい。結婚という安定を求めたくない」一度距離置いた方がいい、と、おばあちゃんちに行くことを決める明葉。お気に入りの大事なソファーも売り払う、と。

私自身、二人の心が通じ合った後、柊が籍を入れて結婚したいと思う流れは自然に感じられたのだけど、そこに明葉が待ったをかける、という最後の一捻りが効いていると思いました。
結婚というものに囚(とら)われすぎない、もっと自由は発想があってもいい、という考え方が、明葉や森田の妻など 特に女性側から生まれている、というのが興味深かったです。それだけ、女性の方が結婚に対するしがらみが多い、ということが伝わって来ました。

「仕事、百瀬さんの妻だから指名してきたみたいで。この案件お断りした方がいい?」と、悩んで舛田(岡田圭祐)に相談する明葉。
「俺ら代理店の仕事いうんは、しがらみで出来た織物みたいな現場ばっかりや。けどな、ええもん作りたいねん。だから、そのしがらみの隙間でクリエーターさんは根性みせてもらわんと。先方の期待以上のもん作って、クライアントに、むしろ良かったわと思わせるぐらいの気概、これは大切や思う」
うん、舛田さん、いいこと言う。

奥さんと別れてパートナーとして距離を置くようになった森田(田辺誠一)。柊に「抵抗はなかったか」と聞かれ、「妻は自分の力で生きたがっていたんだと思います。夫婦にはいろんな形がある。あたりまえのことなのに、いざ自分の身に起こると受け入れられなかった。でも今はこれが自分たちの理想の関係なのかもと思えるようになってきました」
うん、森田もいいこと言う。

明葉は、おばあちゃんに「もう一度って素敵なことよ。会えなくなってしまったら「もう一度」は「もう二度と」になっちゃうからね」と言われ、考え込む。

明葉が処分した赤いソファーを取り戻した柊。 
「僕は明葉さんが好きです。明葉さんは、こんなに感情表現がへたくそな僕のことをいつも受け入れてくれた。婚姻届けに判を捺しただけですが、変わったんです。明葉さんが僕を変えてくれた。これ以上不幸になることなんてないと思っていた僕が、幸せになりたい、ってそう思うようになったんです。
あのソファーが運ばれ行く時に気づいた、僕の幸せは明葉さんと一緒にあのソファーでビールを飲んでる時間なんだって。僕は明葉さんと幸せになりたいです」
「私もです。百瀬さん結婚しましょっか。私たち、判を捺してこうして出会えたんだから、もう一度判を捺したらもっといいことあるんじゃないですかね」

私たちは私たちなりの夫婦になればいいんだ、歩み寄って、私たちの形を。
そうして、改めて婚姻届けに判を捺す二人なのでした~  ——めでたしめでたし。

明葉と柊の、お互いに対する想いが最初からズレていて、お互いを知る→好意を持つ→好きになる→結婚する、という流れがなかなか噛み合わなくて、そのすれ違いの中に、お互いの立ち位置や、こだわりや、秘めた想いなどが少しずつ練り込まれて行って、軽いだけでない、ポップなだけでない、本音がちゃんと描かれていたのが良かった。楽しみながらも、いろいろと考えさせられるところも多かったです。


登場人物について。
漫画原作独特の楽しく明るい世界観がきちんと伝わった、そのもっとも大きな要因は、明葉役の清野菜名さんが実にキュートだったこと。
まぁとにかく、彼女が生み出す表情の一つ一つが実に豊かで瑞々しくて、観ていてすごく惹かれてしまった。(そのあたり『消えた初恋』の道枝くんにも通じるところのような気がします)
彼女の演技だけでなく、身に着けているもの、住まいや仕事場、カフェなどの居場所等々、全体に彼女を取り巻く明るい空気感がとても自然で、安心して観ていられました。そのあたり、漫画原作ということを考えても、とても大切なことだったように思います。

対する柊役の坂口健太郎さんは、漫画的なオーバーアクションがほぼ皆無でナチュラル、それでいて そこはかとなく 愛嬌があって、2人の正反対と言ってもいい色味がうまく混じり合ってコンビネーションの妙が生まれて行くあたり、すごく魅力的で、見応えもあって、楽しかったです。
漫画的アクションにすっかりなじんでフワ~ンと舞い上がりそうな全体の空気を落ち着かせ、物語に引き込ませてくれたのは坂口さんのチカラが大きい。万事しっかり堅物な柊と、万事おおざっぱでズボラな明葉のコントラストがとても良かった。

明葉の両親を演じたルー大柴さんと杉本彩さん。
通常のドラマなら浮いてしまうようなキャラなんだけど、ドラマ全体の色味にうまく交わって、違和感がなかった。明葉がうまいこと中和させてくれていた気もします。

そんな両親とは真逆の純日本的おばあちゃんに木野花さん。
とってもいい味出してました。「僕らあまりお互いのこと知らずに結婚した」という柊に「相手のこと何でも分かってたら結婚なんて出来ないわよ。夫婦なんて分かんないからいいんじゃない?」とか、示唆に富んだ言葉をかけてくれて前に進ませてくれた、好きな役でした。

柊の家族(父・小倉久寛、母・朝加真由美、兄・前野朋哉、兄嫁・倉科カナ)は、明葉の両親に比べれば真っ当で地道な感じですが、それが大加戸家との良いコントラストになっていたようにも思います。お弁当屋さんというのも、ほっこりして良かった。
肝心な兄夫婦については、もうちょっと突っ込んで描いて欲しかった気もしますが、柊との関係をあまり重く出来ない、という配慮もあったのかもしれない。
不毛な恋の相手である美晴に対する、柊の中学時代からの気持ちの積み重ねがちゃんと描かれているので、ある程度の説得力はあったし、倉科さんが少しだけぶりっ子風味を加えつつ、会った人みんなが好きになってしまいそうなキャラをうまく作っていた気がします。
だからこそ、柊の美晴への秘めた想いが、より明葉の心を揺り動かすことにもなったんだろうと思いました。

明葉が働くデザイン事務所(中川翔子笠原秀幸小林涼子長見玲亜)は個性豊か。漫画寄りだけど、森田社長(田辺誠一)が落ち着いていて、ゆるやかに締めている感じ。
脇役ではあっても、森田自身にも妻との離婚という物語があり、それが明葉・柊との対比としても使われ、二人の道標のような位置づけのひとつになっていたのも、田辺さんのファンとしては楽しめました。

明葉の事務所に比べれば地味になりがちな柊の会社(岡田圭右森永悠希)ですが、上司の舛田役の岡田さんに関西のノリの良さがあり、いい意味で柊の周囲の空気感を明葉寄りにしてくれていた気がします。

そして、何といっても、このドラマで非常に良いスパイスになっていたのが、牧原唯人(高杉真宙)と麻宮祥子(深川麻衣)。
お願い上手で、誰の懐にもスーッと入って来る唯人と、思ってることをズバッと切り出せる麻宮が、とてもいい仕事をしていました。

唯人は、二人の気持ちを前に進めてくれてるとても大事な役どころ。彼を観ていて、つい『きみはペット』を思い出してしまった。
好きなポジションだし、自分の気持ちを隠すこともなく二人にぶつける、けど結果、二人を結び付けることになる、そのあたりの複雑な感情を、高杉さんが、しっかり、しかも魅力的に演じてくれていて、単純な当て馬じゃなくて、とても良かったです。
2人がそれぞれ明葉や柊にとっての恋のライバルとまで行かない、最後にはよきアドバイザーみたいな、二人の隠れたキューピットみたいな感じになっていて、観ていて楽しかったり感心したり。
それだけに、ラスト、他の人たちがそれぞれカップルになる、という落としどころがあったのはいいとしても(一番うけたのは丸園先生(西園まり)と舛田さんだわ)、唯人が安易に麻宮とくっつくみたいな展開にはしないで欲しかった。
あの流れとしてはそれほど不自然ではなかったとしても、特に唯人は明葉に対してちょっと危険な感じのままでいて欲しかった‥というのは、きみぺで蓮實さん押しだった私のワガママなのかな~‥う~ん、ワガママなんだろね~‥(自分でも分かってるのさ。苦笑)


『婚姻届に判を捺しただけですが』
放送:2021年10月19日 - 12月21日 毎週火曜 22:00 - 22:57
原作:有生青春 『婚姻届に判を捺しただけですが』
脚本:田辺茂範 おかざきさとこ  監督:金子文紀 竹村謙太郎 井村太一 濱野大輝
音楽:末廣健一郎 MAYUKO エンディング:あいみょん「ハート」
プロデューサー:松本明子 那須田淳  製作:TBSスパークル TBSテレビ
出演:清野菜名 坂口健太郎
倉科カナ 高杉真宙 深川麻衣 前野朋哉
中川翔子 笠原秀幸 小林涼子 森永悠希 長見玲亜
杉本彩 ルー大柴 小倉久寛 朝加真由美
岡田圭右 木野花 田辺誠一 他
公式サイト

今さら『消えた初恋』感想

昨年(2021年)10月9日 - 12月18日テレビ朝日系で放送されたドラマ。今さらながらの感想です。

いや これ すご~く楽しかった!そしていろいろと考えさせられました。

一番最初に感じたのは、これはまさに「ドラマによって描かれた少女漫画だな」ということ。
漫画を原作にしたドラマは数えきれないくらいたくさんあるけれど、その空気感だったり世界観だったりをきちんと実写の中に落とし込むことに成功している作品はそれほど多くない。薄っぺらい背景(バックグラウンド)しか表現出来なかったり、ナマの人間臭さみたいなものが画面から伝わって来てしまったりして、心地よく「(ドラマが作り出す)漫画の世界」に浸ることが出来ない、ということも多くて。
数か月前(2022.5-NHKに放送された『17才の帝国』というドラマで、アニメ原作ではなかったにもかかわらず「これはアニメだ!」と強く感じさせられたことがあって、そのことにいたく感動してしまったことがあったけれど、この『消えた初恋』もまた「少女漫画でしか描けない‘嘘’を三次元化すること」におおいに成功していて「これは少女漫画だ!」と自然に思うことが出来て、そのことが何だかすごく嬉しかったです。

なぜそれが出来たのか。
原作を読んでいないので、どこまで原作の持ち味を練り込んだかは分からないけれど、
少なくともこのドラマにおいては、脚本の巧(たく)みさ、演出の誠実さ、演じ手の素直さ、が、いい意味で、(生身の人間が演じることによる)漫画的嘘っぽさの破綻(はたん)を免(まぬが)れていて、安心して観ていられたからではないか、という気がします。

登場人物がみんなピュアで素朴で一途で純粋で‥いやいや実際の高校生はこんなもんじゃない、と言われればそれまで。でも、最初からそんなリアリティを目指していない。男だとか女だとか、そういうものに囚(とら)われることから解放されていて、なんだかみんな妖精みたいで、そういう世界観がドラマの中でちゃんと成立していて、観る側をすんなりその世界の中に引き込んでくれる、その無理のなさが心地良くて。

まず第一に、脚本が良いのだなぁ、と思う。
消しゴムの勘違いは、青木が橋下さんは井田を好きだと思い込み、井田は青木が自分を好きだと思い込み、橋本さんは青木が自分の好きな人(あっくん)を好きなんだと思い込む、という、超複雑な感情のもつれを生むんだけど、そんな中、彼らやその周りにいる人たちのセリフひとつひとつが優しさや思いやりに溢(あふ)れ、どれもこれもキラキラしていて、心に沁みて。

以下、翔厳選、心に響いたセリフ集。ちょっと長くなりますが、お付き合いください。

1話▶「気持ちはちゃんと自分で伝えないと意味ねえから。いいかげんなことはしたくないんだ」
2話▶「お前は優しいな。だから‘俺なんか’って言うなよ」
3話▶「恋愛とか分かんねえし、こういうの初めてだし、まさかの男だし‥でもおまえいい奴だから、忘れたんじゃなくて、どう接すればいいのかって考えてた。不安にさせてごめん」
▶「人を好きになるのにやばいなんてことないよ。その気持ち大事にしなきゃだめだよ。だからいっしょにがんばろうね」
4話▶「俺、青木にひでえこといっぱい言った。友達失格じゃん・・そりゃあ青木もなんも言わねぇわ」 「違うよ、大事だから友達だから言えなかったんだよきっと」
▶「つまりおまえに本当のことを言えなくした犯人は‥俺だ。青木‥ごめんな」 「普通にやばいって思うでしょ。俺が井田のことそう思ってたら」「じゃあその“普通”が間違ってるだろ‥別におまえが誰を好きだろうと、青木は青木だろ」
5話▶「真剣に好きだって言われて、応えたいって思ったんだ。そういう理由でおまえとつきあうのはだめなのか?」
7話▶「俺は誰かの為に頑張ってる青木のこと、すげえいいと思ってるから」
▶「橋下さんと付き合うって正直あんまイメージ出来ない‥ごめん。でも俺、橋下さんのこと友達として好きだよ。もったいないことしたな、今まで俺ら‥」 「これからもっと知ってもらえるように頑張っていい?」 「おう、かかってこい」
▶「これからは困ったことがあったらなんでも相談しろよ。つきあうってよくわかんねえけど、ふたりでよく話し合ったり助け合ったりするんじゃないのか。少なくともおれはお前が困ってたら助けたい」
8話▶「青木のこと気持ち悪いなんて思うわけないだろ」
▶「何十年もこの仕事してると、いろんな生徒に出会うんだよね。みんなそれぞれいろんな個性を持っている。教師っていうのは、そういった個性を見守って行くことが仕事なんじゃないかって‥」
▶「そうやって線引きされたくねえんだよ。ただ教えてもらって嬉しかったんだ、初めて出来た先輩っていうか兄ちゃんみたいで‥」 「それは‥知らなかったから‥だって最初は‥」 「俺、最初から変わってないよ」
▶「正直青木くんのこと簡単には理解出来ないけど、でも約束破る理由じゃなかった、ごめん」 「俺だって誰でもいいわけじゃない。井田が好きなんだ」
▶「見事にバラバラだな。ここは味噌がうまいんだぞ。‥ま、いいか。何が好きだろうと人の自由だしな」
9話▶「こっちは真剣なんだ。おまえ俺と本気で付き合う気ねえだろ。だからそんなこと出来るんだ」
▶「ちゃんと自分の気持ち青木に伝えたのか?浩介のほっとけない病じゃないよな。おまえ困ってる人に弱いから。向こうはおまえのこと好きなんだから、同情だったら青木に失礼だろ」 「同情‥ではないな、俺も青木といて楽しいし」 「それって、青木の‘好き’と同じか?お前の‘楽しい’は、俺とかバレー部のみんなと一緒にいる時の‘楽しい’と一緒じゃないのか。ちゃんと自分の気持ち考えた方がいいって。中途半端な気持ちだったら青木も浩介も辛くなるだけだと思うよ」
最終話▶「井田だけ試合の時パスもらえなかったらどうしようって‥そんでめちゃくちゃ部費払わされて部費のために週7でバイトしてグレて退学になったらどうしようって‥とにかく井田の周りがいい奴でほんとによかった。ありがとう」
▶「やっぱり青木はすごいな、自分の気持ちがちゃんとわかって正直に言えて。おまえが照れたりあせったりしてるの可愛いから‥青木のそういう顔見るといつも胸が苦しくなる‥ただの友達とは思えない」
▶「板チョコ‥しかも食べかけだし。普通はみんなケーキとかもっとクリスマスっぽいの用意すんのに‥」 「いいだろ、みんなと一緒じゃなくたって」 「そうだな」

‥これでもだいぶ削ったんだけど、長かったですねw
で、文章起こししていて思ったのだけど、「ありがとう」とか「ごめん」とか、そういう言葉がどの登場人物からも自然と出てくるんですよね。相手を理解しようとする気持ち、リスペクトする気持ちがちゃんとある。
その上で、男が男を好きになる、という展開以前に、恋とは何か、好きになるってどういうことか、友情とは何か、その、人間対人間の基本的な繋がりを、漫画独特の嘘っぽさ(ありえなさ)のオブラートに包んで、甘酸っぱく、しかししっかりと描き出しているから、いい意味でナマっぽさがない、いやらしさがない関係性を生み出すことが出来ている気がします。
マイノリティ(少数派)に対する容認・肯定に無理がないのは、登場人物のほとんどが、
相手がどんな人間であっても否定をしていないから‥誰が何をしようと、その人の持つ本質(本来の姿)を好もしく思い、認めているから‥なんだと思います。異色のカップルやら、一直線の委員長やら、しっかり者の副委員長やら、ああいう個性満載のクラスなら、なるほど、どんな人でもどんと来いだよなぁ、と。w
みんなまっすぐで、おおらかで、グチグチしてなくて、悩みや疑問にきちんとぶつかって行く。生徒たちがみんな役にストンとハマって、絶妙な軽さを醸し出していて、悪人が出てこないせいか雑味がなくて屈託なく笑える。そんな空間に入り込んだ居心地の良さに存分に浸れるドラマ。それが一種の爽快感にも繋がり、癒しにもなっている、というのが、このドラマの心地良さの所以(ゆえん)なのではないか、と。
それは、もちろん俳優さんたちが役を掴むのがうまかったということもあるけれど、演出側が、そういう世界に彼らをうまく導いて作り上げた空気感でもあった気がします。


キャストについて。
いやあ、これはまた、うまいことキャスティングがハマったなぁ!と感嘆符つけたいくらい。
青木(道枝駿佑)×井田(目黒蓮)×橋下(福本莉子)×相多(鈴木仁)というカルテットが本当に魅力的で、彼らのことがどんどん好きになってしまって困ったw

青木想太(道枝駿佑
道枝くんは、漫画的感情の出し方、みたいなものをちゃんと心得ていたように思えたし、全体を引っ張って行く主役としての底上げ力みたいなものも感じられて、すごく安心感がありました。フワ~ンとした優しい空気感が独特で、甘さもあって、これからもこういう役で使われて行くことが多いんでしょうが、いずれ、ちょっと陰のある役も観てみたい気がします。
(以後、何となく「なにわ男子」への興味が湧いて来た翔なのであったw)

井田浩介(目黒蓮
青木が「普通じゃない自分」にジタバタするのに対して、井田は万事おおらか‥と言うか、いい意味で鈍感w。感情を大っぴらに表現出来る青木役の道枝くんと違って、あまり自分の気持ちをストレートに出せない受け身の役なんですが、目黒くん演じる井田は 青木への視線がいつもまっすぐで、何があっても動揺しなくて、すべてを包み込む懐の大きさみたいなものがあって、とても良かったです。
(以後、何となく「Snow Man」への興味も湧いて来た翔なのであったww)

二人の関係が、甘過ぎずベタつかずスキッとしていたのは、青木(道枝)と井田(目黒)の立ち位置が、“恋愛”という重さに引きずられないところに絶妙に留(とど)まっていたから。それは、脚本と演出の上手さはもちろん、道枝×目黒という演じ手の味わいが、役の中にうまく溶け込んだからでもある、という気がします。

橋下美緒(福本莉子
実はこの役がとても大事だったように思います。
青木がいて、井田がいて、そこに女子が絡む、というドラマだと、橋下さんが三角関係の一角を担う、という形になるのが普通なんじゃないか、と思うのですが、序盤で青木が橋下さんにあっさり振られ、以後、二人の関係が片想い同士の友情に発展して行く、その過程がとても自然で、可愛かった。
このドラマを、窮屈なBLというジャンルに押し込めてしまわず、もっと自由な世界のお話に出来たのは、道枝くん、目黒くんの持ち味のおかげでもあると思うのですが、福本さんが橋下さんを超絶前向きでシャキシャキした女の子として演じ、観ている側に嫌われないキャラになっていたことも大きかったんじゃないでしょうか。

相多颯人(鈴木仁)
相多くん、好きだったなぁ。この人がいたから、青木は青木のままでいられたような気がします。青木が井田を好きだと知る前も、知った後も、まったく変わらず自然体で青木の友達で居続ける。かと言って、二人を心配し過ぎて先回りして手を差し伸べたり、余計な口出しをすることもない。
橋下さんが自分のことを好きだと全然気づいてなくて、まったくの無反応で、それでもめげずにアタックし続ける一途な橋下さんがとっても可愛かったです。

周囲にいる同級生やバレー部の生徒たちも、皆キャラが立って面白く、魅力的。
豊田(望月歩
井田と同じバレー部員で、井田のことを何くれとなく心配してくれている。最初、彼も井田が好きなのか、と思ったのですが、他校に彼女がいるということは、そうじゃなかったのね。望月くん、『17才の帝国』や『元彼の遺言状』で印象的な役をやっているのを観て、最近気になってる俳優さんです。
(望月くんや鈴木くんは『3年A組~今から皆さんは、人質です』にも出てたんだなぁ。改めて、あのクラスって、若手俳優の宝庫だったなぁ!と思う)
2年3組の学級委員長(西垣匠)、副委員長(倉島颯良)、万事芝居がかったカップル(前原瑞樹・平田玲奈)、井田と青木を応援してくれたバレー部部長・鈴木(石田泰誠)と部員たち(渡邉甚平・長谷部光祐)‥
練習試合に来た他校のマネージャー・ココミちゃん(大原優乃)の意中の人が、井田じゃなくて谷口先生だった、というのも、いいエピソードだったなぁ。(私と好みが一緒だわ、と一方的に親近感が湧いたw)
とにかくもう出てくる生徒たちみんな可愛くて可愛くて、思い出すだけでニヤケてしまう(←あぶないおばさんw)

そんな可愛い生徒たちに対する大人たちがどういう立ち位置にいるか‥というのも、なかなか重要だったんじゃないかと思います。この漫画的世界観を壊さないためには、大人たちもちゃんとその空間に息づいていないといけないわけで。

クラス担任・谷口先生には、こういう見守り系の役はお手のもの(最近では『雪の華』とか『あんのリリック』とか)と言ってもいい田辺誠一さん。ココミちゃんから告白され、彼女の想いをやんわりと退(しりぞ)けたり、青木と井田のことを知っても態度を変えずにいたり、生徒たちを理解しているけれども、距離感はちゃんと保たれている、いい先生なんだろうな、というのが伝わってきました。

林間学校の鬼教官(丸山智己)が実はスパルタ嫌いだったり、井田の母(松下由樹)がシンデレラを演じた青木のファンになっちゃってたり、と、大人たちが生徒たちと敵対する立場になっていない、というのも嬉しかった。

このドラマの中で、唯一、ちょっとトゲのある感じだったのが、谷口の教え子で教育実習に来た岡野(白洲迅)。青木と井田の関係に驚き、色眼鏡で見てしまうような、常識にあてはめて考えてしまうような役で、彼を兄のように思っていた青木が彼の言葉に傷ついてしまったりもするのですが、結局は、自分の偏見を素直に認めて、二人を理解しようとする、とてもいい人で、岡野・青木・井田が並んでラーメンを食べるシーンは、ほっこりしました。
(田辺ファンとしては、白洲くんと一緒だと『刑事7人』って感じなのですが、職員室でのやりとりなど ちょっとそんなイメージを残しながらも良い師弟関係になっていて微笑ましかったです)


エピローグ。新学期、恒例の席替えで、4人はまた近くの席に。テストの時消しゴムを忘れた青木が井田に借りるとそこには‥「アオキ♡」。 ——うん、いいオチでしたw

毎回30分、観やすくて面白かったですが、この続きはどうなるんだろう、このタッチのまま、もっと二人の関係が深まって行ったら、脚本は、演出は、そして若き俳優たちはどういう表現をするんだろう、という興味が湧いてしまって止められない‥w
これはもう、ぜひ続編を!


『消えた初恋』
放送:2021年10月9日-12月18日 毎週土曜23:30 - 0:00(オシドラサタデー)
原作:ひねくれ渡 作画:アルコ 『消えた初恋』
脚本:黒岩勉 監督:草野翔吾 宝来忠昭 音楽:富貴晴美
主題歌:Snow Man「Secret Touch」 なにわ男子「初心LOVE」
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子テレビ朝日
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日) 尾花典子ジェイ・ストーム) 伊藤 学(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ 製作著作:テレビ朝日ジェイ・ストーム
出演:道枝駿佑(なにわ男子) 目黒蓮Snow Man
福本莉子 鈴木仁 望月歩 大原優乃 
西垣匠 倉島颯良 前原瑞樹 平田玲奈 石田泰誠 渡邉甚平 長谷部光祐
白洲迅 丸山智己 松下由樹 田辺誠一 他
公式サイト

今さら『女王の法医学~屍活師~』感想

昨年(2021年)5月31日にTV東京系で放送されたドラマ。今さらながらの感想です。

2時間ドラマですが、なかなか密度が濃くて、誘拐と心中という二つの事件を解きながら、登場人物それぞれの性格や持ち味、事件への関連性、法医学の現在の立ち位置までしっかり描いていて、面白かったです。

医大生・犬飼一(松村北斗)は、バイトと兄弟の世話に明け暮れ、脳外科志望なのに 一人だけ法医学研究室配属となってしまいます。
研究室のメンバーは、教授の丹羽(石坂浩二)、助教の高嶺(新実芹菜)、検査技師の林田(小松利昌)、そして准教授の桐山ユキ(仲間由紀恵)。
大学内で「女王」と称されるユキに「救助犬のほうがよっぽどマシ」としょっぱなから悪態をつかれ、ワンコ呼ばわりされる犬飼。

そんな折、シートベルト不着用が原因でパトカーに追われていた車が 駐車中の車に激突し、運転していた男が死亡するという事件が。
パトカーの過剰追跡ではないことを証明したい警察から解剖を依頼されたユキは、遺体の手に小さな歯形を見つけて解剖するのをやめ、車の中にインスリン注射器があったことを県警の村上刑事(田辺誠一)から聞いて、子供が関わる事件性を指摘します。
やがて、身代金の受け渡しに犯人が現れなかった誘拐事件の発生と、誘拐された子供が見つかっていないこと、その子が小児糖尿病であることを知らされると、ユキは改めて遺体と向き合い、事件の手掛かりを求めて解剖を始め、頭の擦過傷が不自然なことに気づきます。
そこから、被害者・警察・解剖医それぞれの事件解決までの姿がポンポンとテンポ良く描かれるのですが、中でも、誘拐された病気の息子を案じて憔悴する母親・坂木菜々美(梅舟惟永)の姿は、観る側に事件の重みを感じさせてくれたし、それが、次の心中事件の、自分の娘が心中することが信じられない(理屈じゃなくて感覚的にそんなことをする娘じゃないと知っている)藍田早智恵 (山下容莉枝)の わが子を深く信じ愛する姿に重なって、この二人の存在が、それぞれの事件における真実性(ドラマとしてのリアリティ)の深まりに繋がっているように思われました。

大学教授の川越克久(湯江タケユキ)とその秘書である藍田満里(中田クルミ)の心中事件。
娘が心中などするはずがないと訴える早智恵が、事件性がない死亡なので司法解剖は出来ないが 死因究明のための承諾解剖としてなら行える、とユキに言われた後の、「解剖すれば本当のことが分かりますか?」という問い、それに対して「やってみなければわかりません。でも、やらなければ何もわかりません」と答えるユキとのやりとりが重かった。解剖というのは遺体を傷つけること、亡くなってなおメスを入れられることに対する重いためらい、それでも真実を知りたいという母親の一途な願い‥
結局、解剖では一酸化炭素中毒ということまでしか分からず、睡眠剤を注射して眠ったまま亡くなったと思われる、という結果になり、やはり心中なのか、と自分を何とか納得させ、あきらめようとする早智恵。
ユキは、「心中とは断定出来ない。私が分かるのは死因だけで、ここからは警察の捜査ですから」と言い、その言葉につられるように、村上は、念のため関係者に当たってみる、と早智恵に約束します。

とは言え、すでに心中として収まりかけている事件を掘り返すのは 簡単なことじゃない。
苦肉の策で、課長(阿南健治)をしれっとダシに使っちゃう村上と、それにホイホイ便乗するユキがなかなかおちゃめで、いいコンビぶりでしたw

そこから、改めて、村上(と彼にくっついて行動するユキ)による事件の洗い出しが リスタート、夫と距離があって冷め切っているように見える川越塔子(かとうかず子)や、川越に代わって学部長有力候補になった本郷(利重剛)など、いかにも怪しい人たちが出て来たり、不倫の証拠写真の存在、SNSへのリークなど、ざわつく出来事が事件に絡んで来たり。
それらが、ただ、視聴者を欺(あざむ)(真犯人=新井(松澤匠)を見つけ難くする)役割を担っていただけでなく、直接二人の死に手を下したわけではない人間たちの、罪とは言えない程の悪意や猜疑が、事件の引き金となり、解明を困難なものにし、間違った方向に向かわせようとする、という深みもあって、必死で踏みとどまりながら、何とかして正しい解決に繋げようとするユキたちの懸命の努力に、観ているこちらも彼らの背中を押したい気持ちになりました。

一方で、ミステリーとして観た場合、殺人の動機はともかく、その実際の手口に、ちょっと甘いんじゃないか、緩(ゆる)いんじゃないか、う~んこれでいいのか?と考えてしまう部分もあって、そこがとても残念でしたが。

「真実が分かって救われました。これからは前を向いて生きていきます」早智恵が、犬飼に頭を下げる。見送るワンコに、ユキが言います、「解剖して真実が分かっても確かに誰も生き返らない。でも、法医学は死んだ人のための医学じゃない。死んだ人の最後の想いを聞くことで生きてる人を救うことも出来る」と。
事件の正しい解決とともに、法医学への理解を一歩深めたであろう犬飼の 今後の成長を予見させるようなシーンになっていたように思います。

エピローグ。ユキと村上の間に横たわる近寄りがたい距離、その鍵を握るであろう村上の弟の存在‥いったい何があったのか?すごく興味を惹かれるところです。
今年3月に続編が放送されていますが、その辺は明らかになったのだろうか。
未見の私、それを確認するのを楽しみにしています。


登場人物について。
桐山ユキ(仲間由紀恵
「女王」と呼ばれ、誰にも心を許さない、ちょっと近寄り難い、カチッとした、でも奥に熱いものを抱えている、といった独特の空気感。そこに、・・なんだけどね~という話し方とか、辛いもの好き(ワサビチョコバーがツボでした)の理由とか、ユキという人間の味付けが魅力的で、仲間さんの持ち味にぴったり。それだけでも見ごたえがありました。

犬飼一(松村北斗
ドラマにたまに出てくるワンコ系癒しキャラとは一線を画す、自立した芯を持ってる青年、という感じがしました。動き過ぎない、はしゃぎ過ぎない、キャピキャピしない、落ち着いている、この空気感は魅力的。
ドラマ的には、ユキとのバディ感を出したいのかな、二人をそういう立ち位置にさせたいのかな、という意図も感じられましたが、私は、あまりベタベタしない このくらいの距離感のほうが好きです。
欲を言えば、もう一色(ひといろ)、犬飼一というキャラクターに差し色が欲しかった気がしますが、それは今後に期待したいところです。

丹羽嗣仁(石坂浩二
法医学研究室の教授ですが、車椅子で、その理由は何なのか、も知りたかった。
部下を信頼していて、一歩下がったところから全体を見ている感じ、困った時には手を差し伸べてくれる感じが、なんとも素敵でした。

高嶺霞(新実芹菜)・林田匡(小松利昌)
誤解されやすいユキの良き理解者。林田は崇拝者とも言えるのかな。ユキとワンコの距離感を縮めてくれるクッションの役割もあり、しかも有能。二人とも使えるキャラで、いい味出してました。

安村泰介(西村元貴)
村上の部下ですが、キビキビ動いて、村上の信頼厚い右腕、という感じ。で、ユキに乗せられて暴走気味になる村上のことを心配している‥って言うより、大事な村上を使い放題してるユキにやきもち焼いてるように見えなくもない。(いや、もちろん勝手な妄想ですがw)
村上・安村、二人のシーンをもっとくれ~、と心の中でつぶやいていたことを告白しておきますw

村上衛(田辺誠一
何やらユキと因縁があるらしいですが、今回はそのあたりは詳しく描かれず。
短髪無精ひげがやたら似合って、最近ちょっとビジュアル枯渇気味の田辺オシにうるおいを与えてくれた。(同じ刑事なのにエビちゃん(海老沢芳樹@刑事7人)とえらい違いで、それもまた田辺ファンの醍醐味なのだよね~)
仲間さんとの相性も良し。これは絶対続編来るだろ、と思ったら、案の定‥で嬉しかったです。

ユキと村上の距離感。
安易に恋愛に発展しそうもない、村上の弟をめぐる何かが二人の距離を縮めることを許さない、そのもどかしさが私にはとても魅力的に感じられました。
冷め切っている、というより、それぞれが持つ熱をこれまでさんざんぶつけ合って、少し凪(なぎ)な今の状態に辿り着いた、という感じ。(でもまたいつ爆発するか分かんない危なっかしさがある)

田辺さん、それでもまだ村上のキャラをきちんと掴んでいない感じがします。少しずつ村上の芯が出来上がって行く様子を見たいので、続編‥は叶ったのでw、さらに3・4・5‥と続いて行ってほしいです。
エビちゃんも、参加4年目にして本当にしっくりして来て、揺らがない芯が出来た感がある。時間をかけて作り上げて行くタイプの俳優さんだと思うので、村上もぜひ大事に育てていって欲しいものです。


『女王の法医学〜屍活師〜』
放送2021年5月31日 20:00 - 21:54 月曜プレミア8
原作:杜野亜希「屍活師」 脚本:香坂隆史 演出:村上牧人
チーフプロデューサー:中川順平(テレビ東京
プロデューサー:黒沢淳(テレパック)、雫石瑞穂(テレパック
制作:テレパック 製作:テレビ東京 BSテレ東 テレパック
出演:仲間由紀恵 松村北斗SixTONES
小松利昌 新実芹菜 阿南健治 西村元貴
山下容莉枝 中田クルミ 利重剛 松澤匠 梅舟惟永 湯江タケユキ かとうかず子
石坂浩二 田辺誠一 他
公式サイト

今さら『刑事7人』(シーズン7)感想

昨年(2021年)7月からTV朝日系で放送された「シーズン7」の 今さらながらの感想となります。

全9話のうち7人が揃ったのは1・2・9話のみ。
これで「刑事7人」と言っていいのかどうなのか‥はともかく、メンバー一人一人に焦点が当てられた回には それぞれの個性や持ち味がうまく出ていて、人数を絞ったことによって醸し出された味わい深さのようなものも あったように思います。

2021年4月、警視庁内に保存されていたすべての捜査資料のデータべース化が完了、それに伴い専従捜査班及び刑事資料係が解散した、というのが今回のプロローグ。
1・2話で描かれる最初の事件(デス山殺助の殺人ゲーム)に絡めて、まず、次代を担うエリートが所属すると言われる捜査一課7係に配属された野々村拓海(白洲迅)の目線で、新しい部署で仕事をするメンバーが描かれます。
海老沢(田辺誠一)は地域課で交番勤務、片桐(吉田鋼太郎)は交通課で颯爽と白バイにまたがり、水田環(倉科カナ)は暴力団対策課、青山(塚本高史)が少年課、堂本(北大路欣也)は教壇に立つ、という、何となくそれぞれのカラーに合った部署に配属されているのが興味深かった。
そして天樹(東山紀之)は‥
拓海が、事件をすべてデータ処理してしまう7係のやり方に戸惑い、勝手に足で捜査して行くと、不審な男の目撃情報に出会います。実はそれが天樹なのですが、どんなに不穏な動きであっても、それが天樹なら何か理由があるはず、という盤石の信頼があるし、実はSAT隊員になっていた、というのも説得力がありました。

事件は、雨宮(宇梶剛士)の逮捕によって進展したかのように見えたものの、デス山に撃たれ雨宮は死亡し、振り出しに。片桐がバラバラだったメンバーを「刑事部特別捜査係」として再結集させ、7係とは別動で引き続き捜査することに。(‥って、そんな簡単に好みのメンバーを再び集められる片桐の手腕ってどんだけ凄いのよ!‥とつっこみたかったですが、まぁ言わばこれは「お約束の再結成」でもあるのでw)
その際、水田と青山がルームシェアしていることが判明。この衝撃の新事実wが今シーズン通しての程良いスパイスになって行きます。(二人が最後までベタベタした関係にならないのがモロ私好みでした)

改めて「警視庁第七分庁舎」と名付けられた年季の入った建物に移ったメンバー。(この建物がなかなか魅力的)
「青梅一家殺人事件」の資料を倉庫から持ち出してきた天樹。端末から見られると言われますが「紙じゃないと気分が出ない」と、事件を洗い直し。データには入っていなかった一枚の絵をきっかけに事件は解決に向かうことに。
「いつの時代も最後に勝つのは地べたを這いずり回るアナログの捜査ってことだな」と片桐。ガラパゴス刑事の面目躍如、ってところですね。もっとも、このメンバーだとあまり古臭い感じはしないですが。
最初に疑われていた悟(今井悠貴)が、結局は事件を解くヒントをくれたことや、紙おむつを買って恋人のもとに帰った時の彼の笑顔に、観ているこちらもようやくフッと柔らかい息を吐くことが出来ました。

3話は堂本がメイン。
堂本が「あとは君たちの仕事だ」いつもそう言って捜査に深入りしないのはなぜか。その謎が20年前の事件を通して紐解かれます。
事件を追って海老沢が天樹と一緒に宮城へ。珍しいコンビですが、「俺も行こう。宮城には行ったことがない。お互い義理の父親には頭が上がらない同士だ」って、そういう理由で?w ってか、エビちゃんって義理のお父さんいたのね。もしかして四世代同居?(私の脳裏に唐突に浮かぶ橋爪功さん‥『モコミ』の残像が残っているせいか?w)
でも、天樹と海老沢のこの意外な共通点(?)は、今後に繋がって行く感じもして、楽しみです。
あと、出来れば一度、海老沢・水田環コンビっていうのも観てみたいですね。今回、シーズン6より距離がちょっと縮まって来たような気もするので。

4話は海老沢らしい、子供がらみの事件。
昇進試験までのカウントダウンの中、託児施設に閉じ込められながらも 子供が捕まえたカナブンに付箋を付けて飛ばして捜査のヒントを天樹たちに届ける、というアイデアが海老沢らしくて面白かったです。
「とことんついてなかった」と言う犯人に、「俺はツイてないってのはポイントカードみたいなもんだと思ってる。きっと君の未来には 悲しい思いをした分楽しい出来事が待ってると俺は思う」と、これも海老沢らしい応え。
事件が解決し、昇進試験にギリギリ間に合いそう、とホッとする海老沢ですが‥彼はさらにもう一つの問題に気付き、子供を救うために試験を反故(ほご)にしてしまいます。
海老沢って、こんなふうに毎年何かしら自分から事件に足を突っ込んでしまって、試験を受けられずにここまで来てしまったんじゃないか、という気がしました。

5話は、恒例・刑事たちの休日の回。片桐メイン。
月一回のデート中に、急に用事が出来たと帰ってしまう娘・美央(茅島みずき)。片桐は不審な手紙が家に来ていることを知り、事件性を感じて調査を開始します。
居酒屋でのんびり昼飲み中に無理やり調査に引き込まれる青山、女子高生行方不明事件を独自に調べていた天樹、釣りに行く途中 行方不明の犬を探してあげたおばあさんから怪しげな訪問販売員の話を聞く拓海、婚活の相手の投資詐欺を見抜いた環、が、まったく違った角度から事件に絡んで来るのが、このドラマらしくて良かった。
片桐の日常というものも興味深かったし、何より片桐の奥さんのキャラ最高!でした。(私が安藤玉恵さんが好きだからかもしれないけどw)来シーズンもぜひ出て欲しいです。

6話は青山がメイン。
男性の遺体が発見され、青山が初めて手錠をかけ、出所後も何かと面倒を見てきた笹井(佐藤祐基)が出頭して来ます。
彼が更生していたと信じ、事件を洗い直す青山。
心配する環に、片桐は、「はんぺん(半片)っていいですよね。半分の片方ですけど、いろんな具材の味をしみ込ませてとってもおいしくなる」と、奥深い言葉。(なぜか環に対して敬語になってるのが興味深い)
捜査に行き詰って、「自分は間違ってるんですかね。天樹さんは間違わないじゃないですか」と言う青山に対し、天樹は「まっすぐに進むならそれは暴走じゃないと思う。僕は嫌いじゃない青山君のやりかた」と答えるのですが、この「天樹は間違わない」というフレーズが、最終回の天樹の らしからぬ言動や、そんな彼を心配する青山の行動に繋がって行くのですよね。
笹井が、目の不自由な小村理乃(小島藤子)をかばうために自分が犯人だと名乗り出たこの事件は、実は、犯人は別にいて、理乃に濡れ衣を着せようとしていたということが判明し、笹井の無実も証明されます。
小島さんの演技が自然でとても良かった、『淋しい狩人』の加藤あいさんを思い出しました。

7話。
実はシーズン7の中でもっとも好きだったのがこの回。コンゲーム的面白さ、と言ったらいいか。
5・6回で出番のなかった海老沢が、ちょっとウザい人間として最初に登場し、しつこく犯人たちに絡みます。天樹・片桐・拓海も唐突に登場して、彼らを別方向から追い詰める。最初に犯人(近藤公園水崎綾女)が明らかにされていて、その犯行を隠蔽しようとするのをメンバーがことごとく止めに入り犯人たちを右往左往させる小気味よさ、みたいなものがあるし、程良いブラックユーモアみたいなところもあって楽しめました。
死体をスマホ経由で堂本が検死する、というのも、なるほど、うまい使われ方だな、と思いました。
それと、玄関のブザーが いい仕事してましたねw
このお話も最後にもう一捻りあって、実は殺されたおんな主人も含め、全部がたくらみを抱えてこの屋敷に棲んでいた、というところが、オチとして面白かった。解決に天樹の過去データの記憶が役に立つのですが、それも自然で良かったです。
家政婦・鈴木幸子を演じた中田喜子さん、こういう役は珍しいんじゃないかと思うのですが、結果的にメルヘンチックな終わり方になった今回の風味に合っていたように思います。

8話。拓海メイン。
拓海とルームシェアしている友人・伊藤優(松倉海斗)。14年前 彼の妹がスーパーから転落し、以後ずっと意識不明のままだったが、一瞬だけ意識が戻る、そのことをきっかけに当時容疑者だった矢吹(山内圭哉)を探し出そうとする優。
警察学校時、崖から足をすべらせて優に救われたものの、その時のけがで彼が警察学校をやめる羽目になって、そのことを負い目に感じている拓海。
その二人の関係性みたいなものが濃く描かれていて、惹かれるものがありました。
冷静さを失って「矢吹が間違いなく犯人だ」という拓海に、片桐や天樹が「証拠はあるのか」「僕たちは地道に捜査して証拠を積み上げるしかない」と諭します。彼らが必死に捜査する姿を目の当たりにして、優のために証拠を捏造しようとした拓海が一歩手前で思い留まる姿が切なかった。
拓海に対する優の立ち位置が好きでした。彼もまた機会があったら出て欲しいキャラです。なぜ一人だけ新しい父親の籍に入らなかったのか。ちょっと引っかかってます。そこに新たなドラマがあるんじゃないか、なんて、つい妄想膨らませたりして。

9話。天樹メイン。
25年前の「かみつきジャッカル事件」、誤認逮捕で捜査を遅れさせた天樹は責任を痛感、その時の真犯人・春日部(村井國夫)は後に逮捕され刑期を全うし出所しますが、再び同じ手口の事件が起き、天樹は春日部を疑います。ジャッカル=春日部を演じる村井さんの表情にはゾクッとしました。その表情だけで、天樹がしつこく彼を疑う理由が分かる気がしました。
しかし、先入観にとらわれ過ぎて春日部に疑いの目を向ける天樹を青山は心配。
春日部の行動を追っていた天樹は、息子・伊織(福士誠治)が刺そうとするのを目撃して止めに入りますが、彼をかばった青山があやまって伊織に刺され 瀕死の状態となってしまいます。
手術室の前で、すべて自分の責任だ、と環に頭を下げる天樹。
雨の中、泥臭く這いつくばって証拠品を探すメンバーに環も加わり、やがて事件は意外な方向から解決に向かいます。
天樹でも間違うことがある、というのは、新鮮な感じでしたね。
「天樹悠唯一の弱点は敗北の経験が少ないことだった。どんな刑事だって数々の失敗を経て己の弱さを知り成長するもんだ」という堂本の、仕事仲間というより父親寄りとしての言葉も良かった。

青山退院祝い&専従捜査班解散式。
もはや解散は恒例みたいになってますがw
「おまえさんたちのことだ、夏ごろになったらまた集合するんだろ」って、堂本先生がこちらの言いたいこと言ってくれて笑った。
片桐が「いや今回こそ本当に解散らしいですよ」と言ってみんなに配った辞令の中身、見たかったです。

ーーー書き終わってみれば、今回の感想は、ほとんど事件そのものには言及していないことに気づきました。事件としては、捻(ひね)った視点も意外な展開もあって面白いと思う一方で、甘いところも緩いところもあったようにも思うので、そのあたりを掘り下げることも出来たと思うのですが、私にとっては、正直それ(事件の中身)よりもメンバー7人のチームとしての魅力を探り出すことの方が楽しかった、ということなのかもしれません。
(このドラマに関しては、今後もそういう傾向の感想になって行きそうな予感‥)

最後に。シーズン7における私的エビちゃん押しポイント。
3話。第七分庁舎。拓海が「シン」を後書きしたらしい「シン専従捜査班」というプレートを見て、「おれは嫌いじゃないけどね」と言う海老沢。
この「俺は嫌いじゃない」というのが、海老沢の口癖のようにシーズン中何度か使われていたのが印象的でした。
4話。事件直前、天樹や環や青山から「昇任試験受かったらお祝いしましょう」「何が欲しいですか」と尋ねられた海老沢が「‥お米券かな」って答えるのですが、この「‥」の時の表情がものすごく雄弁に感じられてファンとしてめちゃくちゃ萌えました。w
7話におけるエビちゃん全般。
9話。青山の手術中、海老沢がふと手術室に視線を向けるところ。


『刑事7人』(シーズン6)    
放送:2021年7月7日-毎週水曜 全9話 TV朝日系
脚本:森ハヤシ 吉本昌弘 吉高寿男 小峯裕之 他  
監督:兼﨑涼介 塚本連平 安養寺工 大山晃一郎 他
音楽:奈良悠樹
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子テレビ朝日
プロデューサー:山川秀樹(テレビ朝日) 秋山貴人(テレビ朝日
和佐野健一(東映) 井元隆佑(東映
制作:テレビ朝日 東映
出演:東山紀之 田辺誠一 倉科カナ 白洲迅 塚本高史
吉田鋼太郎 北大路欣也 他
公式サイト