今さら『刑事7人』(シーズン7)感想

昨年(2021年)7月からTV朝日系で放送された「シーズン7」の 今さらながらの感想となります。

全9話のうち7人が揃ったのは1・2・9話のみ。
これで「刑事7人」と言っていいのかどうなのか‥はともかく、メンバー一人一人に焦点が当てられた回には それぞれの個性や持ち味がうまく出ていて、人数を絞ったことによって醸し出された味わい深さのようなものも あったように思います。

2021年4月、警視庁内に保存されていたすべての捜査資料のデータべース化が完了、それに伴い専従捜査班及び刑事資料係が解散した、というのが今回のプロローグ。
1・2話で描かれる最初の事件(デス山殺助の殺人ゲーム)に絡めて、まず、次代を担うエリートが所属すると言われる捜査一課7係に配属された野々村拓海(白洲迅)の目線で、新しい部署で仕事をするメンバーが描かれます。
海老沢(田辺誠一)は地域課で交番勤務、片桐(吉田鋼太郎)は交通課で颯爽と白バイにまたがり、水田環(倉科カナ)は暴力団対策課、青山(塚本高史)が少年課、堂本(北大路欣也)は教壇に立つ、という、何となくそれぞれのカラーに合った部署に配属されているのが興味深かった。
そして天樹(東山紀之)は‥
拓海が、事件をすべてデータ処理してしまう7係のやり方に戸惑い、勝手に足で捜査して行くと、不審な男の目撃情報に出会います。実はそれが天樹なのですが、どんなに不穏な動きであっても、それが天樹なら何か理由があるはず、という盤石の信頼があるし、実はSAT隊員になっていた、というのも説得力がありました。

事件は、雨宮(宇梶剛士)の逮捕によって進展したかのように見えたものの、デス山に撃たれ雨宮は死亡し、振り出しに。片桐がバラバラだったメンバーを「刑事部特別捜査係」として再結集させ、7係とは別動で引き続き捜査することに。(‥って、そんな簡単に好みのメンバーを再び集められる片桐の手腕ってどんだけ凄いのよ!‥とつっこみたかったですが、まぁ言わばこれは「お約束の再結成」でもあるのでw)
その際、水田と青山がルームシェアしていることが判明。この衝撃の新事実wが今シーズン通しての程良いスパイスになって行きます。(二人が最後までベタベタした関係にならないのがモロ私好みでした)

改めて「警視庁第七分庁舎」と名付けられた年季の入った建物に移ったメンバー。(この建物がなかなか魅力的)
「青梅一家殺人事件」の資料を倉庫から持ち出してきた天樹。端末から見られると言われますが「紙じゃないと気分が出ない」と、事件を洗い直し。データには入っていなかった一枚の絵をきっかけに事件は解決に向かうことに。
「いつの時代も最後に勝つのは地べたを這いずり回るアナログの捜査ってことだな」と片桐。ガラパゴス刑事の面目躍如、ってところですね。もっとも、このメンバーだとあまり古臭い感じはしないですが。
最初に疑われていた悟(今井悠貴)が、結局は事件を解くヒントをくれたことや、紙おむつを買って恋人のもとに帰った時の彼の笑顔に、観ているこちらもようやくフッと柔らかい息を吐くことが出来ました。

3話は堂本がメイン。
堂本が「あとは君たちの仕事だ」いつもそう言って捜査に深入りしないのはなぜか。その謎が20年前の事件を通して紐解かれます。
事件を追って海老沢が天樹と一緒に宮城へ。珍しいコンビですが、「俺も行こう。宮城には行ったことがない。お互い義理の父親には頭が上がらない同士だ」って、そういう理由で?w ってか、エビちゃんって義理のお父さんいたのね。もしかして四世代同居?(私の脳裏に唐突に浮かぶ橋爪功さん‥『モコミ』の残像が残っているせいか?w)
でも、天樹と海老沢のこの意外な共通点(?)は、今後に繋がって行く感じもして、楽しみです。
あと、出来れば一度、海老沢・水田環コンビっていうのも観てみたいですね。今回、シーズン6より距離がちょっと縮まって来たような気もするので。

4話は海老沢らしい、子供がらみの事件。
昇進試験までのカウントダウンの中、託児施設に閉じ込められながらも 子供が捕まえたカナブンに付箋を付けて飛ばして捜査のヒントを天樹たちに届ける、というアイデアが海老沢らしくて面白かったです。
「とことんついてなかった」と言う犯人に、「俺はツイてないってのはポイントカードみたいなもんだと思ってる。きっと君の未来には 悲しい思いをした分楽しい出来事が待ってると俺は思う」と、これも海老沢らしい応え。
事件が解決し、昇進試験にギリギリ間に合いそう、とホッとする海老沢ですが‥彼はさらにもう一つの問題に気付き、子供を救うために試験を反故(ほご)にしてしまいます。
海老沢って、こんなふうに毎年何かしら自分から事件に足を突っ込んでしまって、試験を受けられずにここまで来てしまったんじゃないか、という気がしました。

5話は、恒例・刑事たちの休日の回。片桐メイン。
月一回のデート中に、急に用事が出来たと帰ってしまう娘・美央(茅島みずき)。片桐は不審な手紙が家に来ていることを知り、事件性を感じて調査を開始します。
居酒屋でのんびり昼飲み中に無理やり調査に引き込まれる青山、女子高生行方不明事件を独自に調べていた天樹、釣りに行く途中 行方不明の犬を探してあげたおばあさんから怪しげな訪問販売員の話を聞く拓海、婚活の相手の投資詐欺を見抜いた環、が、まったく違った角度から事件に絡んで来るのが、このドラマらしくて良かった。
片桐の日常というものも興味深かったし、何より片桐の奥さんのキャラ最高!でした。(私が安藤玉恵さんが好きだからかもしれないけどw)来シーズンもぜひ出て欲しいです。

6話は青山がメイン。
男性の遺体が発見され、青山が初めて手錠をかけ、出所後も何かと面倒を見てきた笹井(佐藤祐基)が出頭して来ます。
彼が更生していたと信じ、事件を洗い直す青山。
心配する環に、片桐は、「はんぺん(半片)っていいですよね。半分の片方ですけど、いろんな具材の味をしみ込ませてとってもおいしくなる」と、奥深い言葉。(なぜか環に対して敬語になってるのが興味深い)
捜査に行き詰って、「自分は間違ってるんですかね。天樹さんは間違わないじゃないですか」と言う青山に対し、天樹は「まっすぐに進むならそれは暴走じゃないと思う。僕は嫌いじゃない青山君のやりかた」と答えるのですが、この「天樹は間違わない」というフレーズが、最終回の天樹の らしからぬ言動や、そんな彼を心配する青山の行動に繋がって行くのですよね。
笹井が、目の不自由な小村理乃(小島藤子)をかばうために自分が犯人だと名乗り出たこの事件は、実は、犯人は別にいて、理乃に濡れ衣を着せようとしていたということが判明し、笹井の無実も証明されます。
小島さんの演技が自然でとても良かった、『淋しい狩人』の加藤あいさんを思い出しました。

7話。
実はシーズン7の中でもっとも好きだったのがこの回。コンゲーム的面白さ、と言ったらいいか。
5・6回で出番のなかった海老沢が、ちょっとウザい人間として最初に登場し、しつこく犯人たちに絡みます。天樹・片桐・拓海も唐突に登場して、彼らを別方向から追い詰める。最初に犯人(近藤公園水崎綾女)が明らかにされていて、その犯行を隠蔽しようとするのをメンバーがことごとく止めに入り犯人たちを右往左往させる小気味よさ、みたいなものがあるし、程良いブラックユーモアみたいなところもあって楽しめました。
死体をスマホ経由で堂本が検死する、というのも、なるほど、うまい使われ方だな、と思いました。
それと、玄関のブザーが いい仕事してましたねw
このお話も最後にもう一捻りあって、実は殺されたおんな主人も含め、全部がたくらみを抱えてこの屋敷に棲んでいた、というところが、オチとして面白かった。解決に天樹の過去データの記憶が役に立つのですが、それも自然で良かったです。
家政婦・鈴木幸子を演じた中田喜子さん、こういう役は珍しいんじゃないかと思うのですが、結果的にメルヘンチックな終わり方になった今回の風味に合っていたように思います。

8話。拓海メイン。
拓海とルームシェアしている友人・伊藤優(松倉海斗)。14年前 彼の妹がスーパーから転落し、以後ずっと意識不明のままだったが、一瞬だけ意識が戻る、そのことをきっかけに当時容疑者だった矢吹(山内圭哉)を探し出そうとする優。
警察学校時、崖から足をすべらせて優に救われたものの、その時のけがで彼が警察学校をやめる羽目になって、そのことを負い目に感じている拓海。
その二人の関係性みたいなものが濃く描かれていて、惹かれるものがありました。
冷静さを失って「矢吹が間違いなく犯人だ」という拓海に、片桐や天樹が「証拠はあるのか」「僕たちは地道に捜査して証拠を積み上げるしかない」と諭します。彼らが必死に捜査する姿を目の当たりにして、優のために証拠を捏造しようとした拓海が一歩手前で思い留まる姿が切なかった。
拓海に対する優の立ち位置が好きでした。彼もまた機会があったら出て欲しいキャラです。なぜ一人だけ新しい父親の籍に入らなかったのか。ちょっと引っかかってます。そこに新たなドラマがあるんじゃないか、なんて、つい妄想膨らませたりして。

9話。天樹メイン。
25年前の「かみつきジャッカル事件」、誤認逮捕で捜査を遅れさせた天樹は責任を痛感、その時の真犯人・春日部(村井國夫)は後に逮捕され刑期を全うし出所しますが、再び同じ手口の事件が起き、天樹は春日部を疑います。ジャッカル=春日部を演じる村井さんの表情にはゾクッとしました。その表情だけで、天樹がしつこく彼を疑う理由が分かる気がしました。
しかし、先入観にとらわれ過ぎて春日部に疑いの目を向ける天樹を青山は心配。
春日部の行動を追っていた天樹は、息子・伊織(福士誠治)が刺そうとするのを目撃して止めに入りますが、彼をかばった青山があやまって伊織に刺され 瀕死の状態となってしまいます。
手術室の前で、すべて自分の責任だ、と環に頭を下げる天樹。
雨の中、泥臭く這いつくばって証拠品を探すメンバーに環も加わり、やがて事件は意外な方向から解決に向かいます。
天樹でも間違うことがある、というのは、新鮮な感じでしたね。
「天樹悠唯一の弱点は敗北の経験が少ないことだった。どんな刑事だって数々の失敗を経て己の弱さを知り成長するもんだ」という堂本の、仕事仲間というより父親寄りとしての言葉も良かった。

青山退院祝い&専従捜査班解散式。
もはや解散は恒例みたいになってますがw
「おまえさんたちのことだ、夏ごろになったらまた集合するんだろ」って、堂本先生がこちらの言いたいこと言ってくれて笑った。
片桐が「いや今回こそ本当に解散らしいですよ」と言ってみんなに配った辞令の中身、見たかったです。

ーーー書き終わってみれば、今回の感想は、ほとんど事件そのものには言及していないことに気づきました。事件としては、捻(ひね)った視点も意外な展開もあって面白いと思う一方で、甘いところも緩いところもあったようにも思うので、そのあたりを掘り下げることも出来たと思うのですが、私にとっては、正直それ(事件の中身)よりもメンバー7人のチームとしての魅力を探り出すことの方が楽しかった、ということなのかもしれません。
(このドラマに関しては、今後もそういう傾向の感想になって行きそうな予感‥)

最後に。シーズン7における私的エビちゃん押しポイント。
3話。第七分庁舎。拓海が「シン」を後書きしたらしい「シン専従捜査班」というプレートを見て、「おれは嫌いじゃないけどね」と言う海老沢。
この「俺は嫌いじゃない」というのが、海老沢の口癖のようにシーズン中何度か使われていたのが印象的でした。
4話。事件直前、天樹や環や青山から「昇任試験受かったらお祝いしましょう」「何が欲しいですか」と尋ねられた海老沢が「‥お米券かな」って答えるのですが、この「‥」の時の表情がものすごく雄弁に感じられてファンとしてめちゃくちゃ萌えました。w
7話におけるエビちゃん全般。
9話。青山の手術中、海老沢がふと手術室に視線を向けるところ。


『刑事7人』(シーズン6)    
放送:2021年7月7日-毎週水曜 全9話 TV朝日系
脚本:森ハヤシ 吉本昌弘 吉高寿男 小峯裕之 他  
監督:兼﨑涼介 塚本連平 安養寺工 大山晃一郎 他
音楽:奈良悠樹
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子テレビ朝日
プロデューサー:山川秀樹(テレビ朝日) 秋山貴人(テレビ朝日
和佐野健一(東映) 井元隆佑(東映
制作:テレビ朝日 東映
出演:東山紀之 田辺誠一 倉科カナ 白洲迅 塚本高史
吉田鋼太郎 北大路欣也 他
公式サイト